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三等星の願い。6

 例えば僕が脳に深刻なダメージを受け、その結果、病院で半生を過ごすことになったとしよう。

 そんな時、僕は何をするのだろうか。僕のことだ、きっと延々と如月グループに頼んで本ばかり読んでいるのだろう。例え、短期的に記憶を失うとしても。

 そしてそれは、彼女も同じだった。

 ただページを繰るだけの手が、ひたすらに美しかった。儚げな目で文字を追い、ついには最後の一ページをも、読み終えてしまった。

 水上瑞乃。僕の元カノの名前だった。「だった」と名前に付けるのは変かもしれないが、しかし彼女は僕の知る彼女ではないのだから、それも仕方のないことなのではないだろうか。

 で問題は。

「……なんで僕は病院に閉じ込められているんだ?」

 瑞乃の病室が映るモニターがあると、その他子供のおもちゃから今にも切れそうな紐など、いわゆるなんの役にも経たないゴミたちがあるだけの部屋に閉じ込められていることだ。

 この病院が如月グループの傘下である以上、警戒を怠るべきではなかったと後悔している。いや、警戒していても、勿論グルであった運転手が睡眠ガス撒いた瞬間月夜にガスマスク渡してさらに念には念をということなのかガスにより意識の朦朧とし始めた時に睡眠薬嗅がされるとか思わないじゃん?今思うと、月夜がスマホを弄っていたのはこのタイミングの指示のためだったのかもしれない。

「あなたが変わるまではそこに閉じ込めておくつもりだから安心しなさい」

 どこからか、月夜の声が聞こえてきた。天井かどこかに、スピーカーでも仕掛けてあるのだろう。

「これで大学に行けなくなったらどうしてくれるんだ?」

「その辺もぬかりなく手配してあるから安心しなさい。カルテを偽造してあるから」

 ばれたら尚やばい気がするんだが。

「ともかく、まずはそこにいる意味を考えることね」


 あれから、しばらくの時が過ぎた。時計も窓もないこの部屋では、時間は分からないし、ここで目覚めた時間もわからないから、つまり今が何時か微塵も分からん。

 生活に必要な情報を手に入れるために、僕は仕方なく瑞乃の映るモニターを見た。先ほど読み切ったものとはまた別の本を開いていて、その顔に一滴の疲れも見えないところを見ると、今は昼頃なのだろう。

 あれ?そういえば僕のご飯は?体感的にも、起きてから4、5時間経っているし、そもそも月夜に連れ出された時点で夕飯前だった。少なくとも12時間以上何も食べていないことは間違いないだろう。

 もしや、死ぬ前にクリアして見せろっていう月夜さんからのメッセージ?面白れぇ、やってやろうじゃねぇの。天才の本気、見せてやろうじゃねぇの。

 その日、僕は思い出した。僕の学校は土曜日も授業があることを。

 来週から日曜日の午前0時に登校時間を変更します。ご了承ください。

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