きっと、彼は。4
一夜明けて、僕はアルバムを手に取った。高校時代の、卒業アルバムである。
もちろんそこに瑞乃の姿はない。7月に入院し、目覚める前に診断された記憶の全消去。その時点で、彼女は学園を去ったことになっているからだ。ちなみに瑞乃の記憶がないことを知るのは、僕を含む一部の人間だけである。
あの頃の自分を見ると、今と変わらずなかなかのイケメンで、うっすらと笑っている。しかしその目には、写真越しにもわかる深い悲しみがあった。
三年になっても同じクラスだった月夜の髪は短くなっていた。今は昔と同じストレートのロングだが。
「進みたい道がある」と言って理系の進学コースへと進級した七峰はもちろん違うクラスで、なかなか見る気にはなれなかった。
僕と唯一高校生活で一度もクラスの離れなかった羽衣は、元文芸部で唯一自然な笑みを浮かべていた。
こうしてみると、僕たちはかなり変わった。むしろ、あれからもう7年も経つのだから変わっていなければおかしいのだが。
しかし時間というのは恐ろしく、僕もあと数年の三十歳になる。背も少し伸びて、どんどん大人になっていく。
なのに、瑞乃は変わらない。変わらないのだ。自分を知らないから。変わらず、停滞することしかできない。そんな瑞乃が、不憫に思えた。
不意にスマホが震えた。瑞乃からのLINEだった。
『話があります。今から伺ってもいいでしょうか』




