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きっと、彼は。2

 水上瑞乃は変わってしまった。今の彼女からすれば始めから存在したものかもしれないが、しかし記憶を失う前を知っている僕からすれば明確に変わってしまっている。

 それを分かっていてもなお、僕は彼女を以前の彼女と同じように見てしまっているところがある。だから、僕には彼女の心が読めない。

 それについての問題点は、今まで瑞乃の思考を読み解いた上でしていた行動が、全く出来ないというところだ。

 今日も今から打ち合わせだが、彼女の意見を汲み取れないというのはなかなかに不便なものだ。

「ドリンクバー三つと、フォンダンショコラ一つ」

 なので、今日は月夜についてきてもらった。

「じゃあ私はチーズケーキでも食べようかしら?」

 ファミレスでの打ち合わせは会社の金で落とすのでもっと遠慮なく食べていいんだぜ。まあ、やりすぎたら僕が怒られるけど。

「えっと私は……」

 以前の瑞乃なら、おそらく僕と同じものを頼んでいただろう。しかし今の瑞乃ならきっと……

「チーズケーキをお願いします」

 僕よりも明確に合わせられる、月夜に合わせるのが今この場での一番の選択肢だろう。異性というだけである壁が、当たり前だが同性には存在しないのだ。

 やはりまだ信頼関係が気付けていないということなのか……

「アールグレイでよかったかしら?」

「別にいいけど、それ完全にお前の好みだからな?」

「万が一を考慮してコーヒーも入れてきたのだけれど」

「両方よこせ」

「仲いいですね、おふたり」

 瑞乃にいわれ、僕と月夜は目を見合わせる。

 驚いた訳じゃない。いや、驚きはしたが。

 なにせ、文芸部に入った頃の瑞乃に、そっくりだったから。

 似ているだけで同じではないとわかりつつも、しかし求めてしまうのは何故なのだろう。

 僕は咳払いをし、打ち合わせを始めた。

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