僕達の文化祭。Ⅰ
水上瑞乃が入部してから、色々あった。色々な事がありすぎて、読書時間の確保が難しかった。授業中に読んでるから関係ないけどね。
というわけで今日から三日間は文化祭である。
「いらっしゃい」
立地がアホほど悪いこの部屋で、僕は店番をしていた。
そして店番を始めて1分50秒後、一人の少女が現れた。佐原 彩理である。
「三部程貰えるかな?」
開始2分で三部売れた。
「300円」
一部100円ととても安価なこの小冊子。
佐原は少し思案顔になり、数秒。5枚の百円玉を手渡された。
「やっぱ五部!」
開始3分で、五部売れた。このまま行くと1時間で百部。つまり5時間で完売だな!やったぜ。んな訳あるか。
「ちなみに読書用と鑑賞用と保存用3つだよ!」
興奮気味に佐原は言う。こんな良いやつを疑っていたのか僕達は。
「ありがとね!」
その後、30分ラノベについて喋り倒して、あるいは語りつくして、ようやく佐原は去って言った。
数十分後、少し開いた扉のむこうにそろーとツインテールを垂らしながら覗く目がある。
「何やってんだ瑠美
何処かのヒキガエル風に言うならマイラブリーシスター瑠美だった。
「お兄ちゃんが女の人と話してる…」
声が小さすぎて僕には聞き取れなかったが、表情をみて僕は呆れ顔になった。
「一部だけ買ってあげるね」
「さんきゅ」
そんな会話をし、瑠美は帰った。今更だけどあいつ学校はどうしたんだよ。今日バリバリ平日だっての。
ぱったりと客足の途絶えた扉を余所目に、暇だったからネットサーフィンをしていると、めちゃくちゃ伸びてるサイトがあった。ちなみに内容は僕達の小説の紹介文。主に水上の。いやこれ絶対佐原のやつだろ。瑠美にこんな芸当無理だし。
「おい、あったぞ文芸部!」
興奮気味な声が廊下から聞こえてきた。佐原といいこいつらといい、文化祭には人を興奮させる魔法でもあるのだろうか。僕はまた呆れながら、冊子を渡していった。
と、いうわけで、重版千部。五百部5時間どころか2時間で完売したよ。ちなみにその千部ももう半分くらい売れている。
ちなみにこの学校の文化祭は毎年何万人もの人が訪れる地域の人気イベント。つまり、まだこれを手にしていない人の方が多い。廊下には人がごった返していた。
僕は二度と文化祭で張り切らないと決めた。
さっきのサイトを見ると購入者のコメントが大量に書かれていた。主に水上宛の。
もうやだ文化祭…。
「おっつー!」
一日目を乗り切り僕は疲れ切っていた。そこには羽衣。帰れ。テンションアゲアゲすぎてついていけない。
「ほい!」
羽衣が缶コーヒーを投げた。それを華麗にキャッチし、一気に飲み干し、ゴミ箱へ投げ捨てて後ろからカンッと音が響いたのを確認してから、僕は家に帰った。
「ただいまー」
「お帰りー」
瑠美の声がした気がしたが、華麗にスルーし、部屋に直行してベッドにダイビング。そのまま深い眠りについた。
目が覚め、時計を見る。9時を指していた。ちなみにAM。遅刻。やったぜ。月夜、怒ってるだろうなぁ。ああ、気が重い。




