僕の僕による僕のための編集生活
GW。割と狙いどきな季節だが、しかし本命の作家たちの本が完成していない今、やる気を無くすのも当然かと。
去年デビューした僕が担当している作家の3作目を出版したはいいが、おそらくあまり数字は良くないだろう。
経験上、売れる作品と売れない作品の違いは分かっている。
あの作家の本が面白くないわけではない。むしろ、才能はある。けれど、決定的に足りない部分がある以上、重版がかかるかどうかも怪しい。かなり多目に刷ってもらったし、彼の懐はしばらく安泰だろうが。
さて、昨日の夜PCに届いた佐原のプロットは、やはり売れっ子、大胆なことをしてきたというイメージだ。僕目線では水上のプロットの方が数段面白かったが、佐原の語彙力の加減では、水上の惨敗といったところだろうか。
両作家、再来月ごろには出版出来るだろうが、どちらが売れるか勝手に比べてみるとしよう。
「考え込んでいるところ悪いけど、通知音を切ってもらってもいいかしら」
月夜は、コーヒーの入った紙コップを二つ、机に置いた。
「ああ、悪い」
ジーンズの右ポケットにあるスマホを取り出し、その左側面の出っ張りを奥へと追いやった。
ホーム画面を開くとメールが来ていて、宛先は水上瑞乃となっている。
コーヒーをすすり、目で文を追っていく。
立ち上がり、飲み干した紙コップを捨てる。
「ちょっと出てくる」
月夜は見透かしたように、クスリと笑った。
「変わらないわね、貴方は」
僕も釣られて、笑う。
「変わんねぇよ。僕は」
そういえば11月から「リバース・ブルー」というタイトルでこの作品の文化祭編のリメイクやりますよ。実は公募用なんですけどね。




