雨の日に屋根の下では偽れない
結局のところ、雨って何なんだろうな。
人って何なんだろうな。
誰も彼もが報われない終末が訪れようとしている。
雨中毒は幼なじみからもらった傘を快音を立てて折り、目の前で折られた幼なじみとやらは畳み掛けられた罵詈雑言に何も言えずにいる。
そこに止めの一言を叩きつけたのが、オレっ娘。そのオレっ娘も、首につけられた爪痕が痛々しい。
フードの奴は相変わらず、人形だという少女を抱きしめている。けれど、人形が動き出すなどという奇っ怪な現象は起こる様子を見せない。
奇っ怪だろうと、非現実的だろうと、それがこの場の最上だろうに。
まあ、神様なんて存在しないだろうから、世の中というのは得てして理不尽にできているものだ。
妹も、何かフードに言いたいことがあるようだが、突っ走り傾向があるこいつにしては沈黙を守っている。さすがにこの空気くらいは読めるのだろう。
オレっ娘は雨中毒の幼なじみを教室の光景の一部でしかないと言った。
出会って数時間の仲だが、
こいつは俺に似てるんだな、と解釈した。
俺は、好き好んで外に出ない。所謂ひきこもりというやつだった。
人が嫌いだから。
世の中というのは面倒なもんで、馴染めない奴は簡単に爪弾きにされる。爪弾きにされた奴に居場所なんてあろうはずもなく、まあ、そいつが行き着く先は言わずものがな。
ぼっちという世界だ。
そんな世界を歓迎する奴なんてなかなかいないだろうけど。
雨中毒はたぶん、なかなかいないそいつなんだろうな。
俺はもちろん、無理だ。
ただ、爪弾きにされたから、一時的に避難しただけ。避難した先にいたのは、[ぼっち世界]に[住み着いた]雨中毒、[彷徨う]フード、そして──オレっ娘。
オレっ娘も、こんな世界、望んではいないのだろう。けれど、男の俺ですら面倒だった[教室]という世界、女同士なら殊更面倒だったことだろう。
けれど、ぼっちでいたいわけじゃない。無理すれば、居場所はあるだろう。
その[無理]をしたくないだけだ。
一人が楽。
だからぼっちでいる。
似ていた。
なんだか、悲観的なようで冷めている。そんな奇妙な感覚を、俺とオレっ娘は持っている。
いつの間にいたんだろうか。見覚えのある少女。ジャージを貸したやつ。
そいつは俺がオレっ娘を助けた瞬間に、何かチリチリと肌を焼くような殺気を放った。
ああ、
こいつも、面倒なやつだな。
けれど、まあ一度会った縁だ。
拗れないうちに収拾をつけるのも、一種の責任だろう。
よぉ。
軽く挨拶した。
すると、びっくりするくらい天真爛漫な笑顔に切り替わって。
ああ、と俺はまた思った。
こういうのが面倒臭いんだよな。
よくよくこの場面で笑えたもんだ。その点で言ったら、妹の方がよっぽど空気読んでるよ。
この雨の中、屋根の下だから、
誰も彼もが涙を誤魔化せないでいるというのに。




