雨の日は好きだが教室は嫌いで
雨の日に、オレは初めて友達ができたんだ。友達の定義なんて知らないが、オレはあの日出会った二人をオレが心を安らげられる数少ない人物だと思っている。
だから、二人を友達だと思っている。
どんなに変人でも、異端でも。
だから、二人と出会わせてくれた雨は嫌いじゃない。
教室はどうかって?
そんなの、決まってるだろ。
オレと、フードのやつと、雨好き。
出会ったのは本当に偶然。ちょうど、今日みたいなどしゃ降りの雨の日だった。
家にいるのが気まずくて、ロクにテレビも見ないオレは、朝の天晴れな空を見て傘も持たずに出た。
フードのやつは、家を追い出されてさまよっていたという。着の身着のままだったから、当然傘なんてなく。
雨好きは説明するまでもなかろう。雨の予報をしっかり確認した上で、傘を差さずに歩いていた。こいつはもうただの変人だな。雨変人と呼ぶことにしよう。
それぞれがそれぞれの事情で雨の中にいて、
出会った。
「天気予報を見ないなんて、馬鹿だなぁ」
「予報を見たのにずぶ濡れになっている馬鹿に言われたくない」
「いいじゃないですか、人それぞれで。……でないと、生きるのも難しいですから」
幼かったオレたちの中で、一番チビで泣き虫だったフードのやつが、一番悟りを開いていたかもしれない。
誰が言い出したんだか。
友達になろうって。
誰も反論しなかった。
それぞれの事情で奇人変人扱いされているオレたちにはみんな、[友情]というものが欠落していた。欠落していたからこそ、欲していたのかもしれない。
知っているクラスメイトより、知らない他人の方が、オレは信じられる気がした。
「じゃあ、雨の日にまた会えるといいね」
そんな言葉を交わして別れてから。
オレは雨の日が好きになった。
だが、オレの趣味嗜好が変わったところで、家族や教室が変わるわけじゃない。
小学校から今の高校まで……オレの通わなければならない教室は、雨よりも冷たくて、
大嫌いだ。
今目の前に広がる、
妹を殺そうとした姉と、それを宥めることもできずにいる雨変人。
動かない女の子だった人形を抱きしめ、無言で祈り続けるフードのやつ。
ぎらついた嫉妬心から八つ当たり気味に殺されそうになったオレを庇った新しい雨仲間。
呆然と立つ少女が二人、いつの間にか増えているようだが、片方は新しい雨仲間の妹のようだ。もう片方は雨仲間の知り合いらしい。
そのもう片方の目にオレの中で警鐘が打ち鳴らされた。
雨仲間に介抱されるオレを見る目が、
さっき首を絞めてきたやつにそっくりだから。
嫌だぞ? 二度も殺されかけるなんて。
察したオレは、雨仲間から離れ、変人の方に行った。
「甲斐性ねぇな」
皮肉を叩きつけてやると、そいつはへらりと笑った。
「いやぁ、ごめんね。……どうすればいいか、わかんなくて」
素直に吐き出したそいつに、オレはぐい、と傘を押し付ける。
口元を少しニヤつかせながら、思いついたことを提案した。
「これ、いらないなら、壊せば?」
沈黙が降り注いだのは一刹那。
「なーるほど!」
雨変人は自分の傘を受け取ると、ニッと笑って、自分の幼なじみの元へ向かった。
「長く待たせたね。これが答えだよ」
バキッ




