表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リジェネ!  作者: ユキ
3/10

ミルクティー

 気分が悪い。今にも吐きそうだ。胸も締め付けられているような感じがする。祐介は、今までに味わったことなのない恐怖に、どう対応すればいいのか全くわからない。体は震え、顔も真っ青になっている。


「ごめんなさい」


 梶谷がぽつりと謝る。梶谷は、ただそれだけを言って、祐介の震えが止まるのを待っていた。


「俺は、刺されたのか?」


 体の震えは収まった。気分もだいぶ良くなった。しかし、頭の中はまだとっ散らかっている。梶谷の口から直接そうとは聞きたくなかった。しかし、そのことを考えれば考える程に頭の中はそれに支配され、気が付けば口にしていた。


「そう、よ。岡田君は、刺されたの」


 ためらいがちに、しかしはっきりと梶谷は頷く。


「そうか」


 祐介の心は不思議と落ち着いていた。実際にそうだと言われたおかげですっきりしたのか、むしろあっさりと頷かれたせいで余計に現実感が無くなったのか、どちらなのかはわからない。ただ、祐介が身構えていたような絶望感は無かった。


「……目覚めてから何も口にしてないよね? 何かとってくるからちょっと待ってて」


 梶谷はそう言って、おもむろに部屋を後にした。




「お待たせ」


 十分ほどして梶谷が戻ってくる。その十分間、祐介は何もすることがなかった。色々と頭の中を整理してみようとしたが、上手く頭が回らなかったので、結局部屋の中を見渡しながらぼおっとしていた。


「どうぞ」


 梶谷の手からティーカップが渡される。中身はミルクティーだった。甘さは控えめで、ほどよく温かく、心が落ち着いた。ほんの少しの渋味が、鈍った頭を覚ましてくれた。


「ありがとう」


 自然と口から出ていた。何を意図したわけでもなく、気が付いたら言っていた。しかし、そう言われた梶谷は何も言わずに俯いていた。


「……どうした?」


 祐介は、何も言わずにただ俯く梶谷のことが心配になる。


「岡田君に、言わないといけないことがあるの……」


 梶谷は俯いたままそう言う。


「……なんだ?」


 祐介は梶谷の様子から、穏やかな話ではないことを察する。しかし、自分が刺されたこと以上に穏やかじゃない話など、祐介には思いつかない。

 梶谷は一度大きく息をして、今まで俯けていた顔を祐介の方にあげる。


「岡田君自身についてと、岡田君にこれから何が起こるのか」


 そう言って、梶谷はまた顔を俯けた。しかし、もう一つ、何を話すのか付け加える。


「……そして、岡田君が何に襲われたのか」

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ