魔法世界(1)
ここは、まるで某アミューズメントパークのようだった。
空は、何やら虹色に輝いているし、昼間だというのに、月と太陽がそれぞれ二つずつある(!)
足許を見ると、アスファルトの舗装道路なんかではなく、どこかのイナカ(失礼!)のような、砂利道だ。それも所々地肌が露わになっていて、轍ができている。
周りをちょっと観察してみると、なんだかすごい極彩色の家とかあったり、道路脇にはオシャレな小さい建物があったりする。
確かあれって、昔あった『電話ボックス』ってヤツかなぁ……?
ステンドグラスのように組み合わさっている窓の中を覗くと……あれ? 電話じゃない。ボックスの真ん中に水晶玉みたいのがおいてあるだけだ。何だろ、これ……?
ゴトゴト音がした。その方向に視線を移すと、やって来たのはピンク色した妙な曲線のあるクルマ(?)だ。
何だ、この超可愛い物体は! 天井にプロペラみたいなものもついている。隣にいるつなぐは、『あんなのにぜひぜひ乗ってみたいなぁ』というような顔をしている。分かりやすいなぁ。
もしかしたら、つなぐの例の『チカラ』で、どこかの遊園地に来ちゃったのではないだろか?
こんな不思議なアトラクションがある遊園地って聞いたことがないけれど、たぶん最近できたのだろう。(ああ、ボクってかなりトレンドに遅れてるなぁ)
さっきの変な生き物(鳥?)とかも、おそらくコンピュータか何かで制御されたロボットとか、そんな類のものじゃないかな。もしかしたら、最先鋭の遺伝子工学によって生み出された究極の生物なのかもしれないけれど。
そうだ! ボクたちは、きっと転んだ拍子で意識を失って、無意識のうちに夢遊病者み
たいに彷徨っているうちに、いつの間にかこの新しくできた「遊園地」に来てしまったのだ!
きっと、そうだ! そうに違いないっ!! ――と、ボクは拳を胸の前で握り締めて無理矢理納得しようとした。
と、その時――。
「あんたたち、転人生――?」
とっても可愛い女のコ=美少女が、にっこり笑ってる。何歳くらいかな? ええと、ボクたちと同じくらい?
でも、外国のヒトみたいだ。髪の色はグリーンだし、瞳もブルーだ。もしかしたらハーフの人かな? さっきの一言も、とっても流暢な言葉だったっけ。
服装は……。何だ、この格好は。パッと見はセーラー服のようだけれど、原色ハデハデのフレアスカートに、上着もちょっと街中じゃ着れないようなデザインだ。確かに可愛いことは可愛いのだげど、何だかな……って感じだ。
それに、胸にやたらと大きい星型のぺンダントをつけているし、手には不思議な形のステッキ(?)を持っている。髪の大きなリボンもいかにもマンガに出て来そうな、そんなセンスだ(恥)。
あ。
ボクは気がついた。この感じ、どこかで見たことある……。これって、まるで『コスプレ』じゃないか!
このボクでさえ知っている。というのも、この隣にいる幼馴染が、その類の人種なのだから。
彼女の様子をうかがってみると、やっばり自分もやりたそうな表情をしていた。これは、あれだ。完全にライバルを見る(獲物を狩る?)目だ。
それにしても、つなぐではあるまいし、まさかこんな街なかで堂々とやっているヒトがいるとは。
とかなんとか、考えてる暇もなく――。
「――何、ボケっとしてるのよっ! 学校に遅れちゃうじゃないのさ。……しょーがないなあ。あれ使っちゃおっか――」
そういうと、その美少女は、ボクたち二人の背中をどんと押した。
その娘 (コ)は、ボクたちを押した後、片方の手に握っていたステッキをクルクルっと回したかと思うと、何か口の中で詠唱した。
すると、ステッキから閃光がぼとばしり、まばゆい光の中から得体の知れないメカ(み
たいなモノ)が現われた! (だって、表現できないよ、こんなの見たことから)
クルマでもないし、バイクでもない。何かの乗り物のように見えるけど、かと言ってタイヤも見当たらないし。
「何、これ……?」
つなぐが、呆気に捕われながら、尋ねた。
「いいから早くぅ――!」
ボクは、強引にそのクルマ(?)中に引き込まれてしまった。痛い痛い。ホント、強引すぎるよ、このコは。