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公園(1)

しかし、あのヒトたち、一体何者だったんだろう……?


 ボクは、もう一度、彼らのことを考えた。悪の秘密結社……世界征服……つなぐの能力……? 全然、意味が分からなかった。


 ボクたちは、家から遠く離れた、街外れの小さな公園にいることに気がついた。そうか、無我夢中で走っていたら、こんなところまで来ちゃったのか。


 いろいろなことを考えながら、ボクたち二人は、ぼんやりとブランコに並んで座っていた。


 そのとき、つなぐの足元に小さなサッカーボールが転がってきた。


「おねぇちゃぁ~ん、取って~~」


 小さな男のコ(女のコかな?)が、一目散に走り寄ってくる。サッカーボールと一緒になって跳ねてくるみたい。可愛いなあ。


 彼女は、足元に転がってきたボールを拾い上げた。


「はい、どうぞ――」


微笑みながら、その女のコ(いや、やっぱり男のコ?)に手渡してあげている。


「ありがと!」


 彼女が差し出したボールを受け取りながら、男のコ(いやいや、本当は女のコかもしれない)は、にっこりと笑った。


 そして、くるりときびすを返しながら、言った。


「じゃあね。ばいばい~、おねえちゃん」


 その女のコ(いやいや、男のコだったのかも、ホントは)は、元気よく駆け出して行った。


「うん。バイバイねぇ〜」


 つなぐが、小さく手を振りながら、そのコを見送っている。『かっわいい~。あんなコ、欲しいなぁ、なんか、ぬいぐるみみたいでプニプ二してて、抱きしめてみたいよぉ……』とでも考えているような、顔をしていた。しかし、結局どっちだったんだろう? 性別(笑)


 ボクは、ふぅとため息をついた。なんか、一気に力が抜けちゃったな。くよくよ考えていても仕方ないか。


 つなぐの方も、何だか吹っ切れたようで、プランコを一回大きく漕いで、空に向かってジャンプした。


 見事に着地成功! 悩みなんか、吹っ飛んでしまったようだ。


 彼女は、大きな歩幅で歩き出そうとした。そのとき、地面にあった小石につまずいた。


 ――と、つなぐの身体がふわっと揺れた。


 一瞬、何が起こったのか分からなかった。空中に舞う、つなぐの肢体。彼女の髪、彼女の制服、彼女の鞄……。すべてが、ゆっくりと空中に漂っている、


 その時、ふわりとつなぐのスカートが大きく翻った。


 あ。白……。


 ボクは、不謹慎ながら、その「白い」モノに目が釘付けになってしまった。いくら幼馴染でも、やっぱり「女性」として成長しているんだなぁ……。感無量だよ、つなぐ。


 ボクは、顔が赤らむのに気づいた。いやいやいや。それは、違うだろう。こんなモノに(非常に失礼!)欲情するなんて、どう考えてもおかしいだろう。落ち着け、ボクのリビドー!


 ボクは、つなぐのパンチラ(もう直球でいいや)を眺めながら、そんなことを考えていた。


 その時、世界が揺らめいた。


 道路脇のコンクリートの壁が、ぐにやりと曲がり、地面が波打ち出した。


 ボクは激しい眩しさを感じ、目を細めながら、空を仰いだ。空気がどろりと淀んででいる。時折、空中に閃光が走る。




「いやぁ〜、つまづいちゃった。あぶない、あぶない……」


 つなぐが、てへぺろしながら、笑っている。


 ニコニコしながら頭を掻いている彼女の背景が、何やらいつもと違っているような。なんだろう、この感じ……。


 あ、鳥が飛んでいる。


 ただ、何かが違う。あれ? 『鳥』って、あんなに羽根が短い動物だった? あれでは、まるでヌイグルミのようだ。


 背中についた小さい羽根をパタパタ動かして、ボクたちの頭上を飛んでいこうとしている。


 と、その時、その生物が振り向いた(!)。


「あれ? キミたち、その格好は何だね――?」


 え――?


 一瞬、何が起こったのか分からなかった。あれって、『鳥』だよね? 『人』じゃないよね?


「聞こえなかったかい? そんな恥ずかしい格好で出歩くものじゃないよ。すぐに着替えなさい! 早く早く――!!」


 『鳥』が、パタパタ空中を浮遊しながら、ボクたちにお説教をしている……?


「あ、はいっ――!」


 ボクたち二人は、何となく、その『鳥』に会釈をして、慌ててその場を立ち去った。(なんで、会釈をしたんだ、ボクたち?)


 訳もなく小走りになっていると、ふいにつなぐがボクに向かって言った。


「ねえ、あれって、トリさんだよね?」


 まるでボクのことを呼ぶように、あの物体について言及した。よくぞ言ってくれた、つなぐ!


 立ち止まりながら、改めて辺りを見回してみた。


 すると――。


 ここは、完全に『いつもの街』ではなくなっていた……。

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