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公園(6)

「……おお。ミチコ・ナカヤマくんに、ウェイ・ブロードくん。遅れてすみません――」


 ああ。いらっしゃると思っていました、東海さん。これで、『悪の秘密結社』の知り合いが、全員集合だ。やったね! ……何が?(苦笑)


 東海氏は、その場にいた仲間にざっと視線をやった。すると、他の面々と目が合った。彼らは、口元をニヤリと歪め、無言で頷いた。


 な、何だ。その目と目で通じ合っているような、気色悪い空気は~。


 だが、これだけではなかったのだ――。


「あら、こんなところにいたの、ツナグとトオリ!」


 振り向くと、そこには聖羅さんがいた。


 艦長のコージ・ヒーローやスージー・アベノ、シャミー・バーシャ副長、ライン砲術長その他大勢も揃っているのだった。何故、あなたたちまで「ここ」にいるのですか。


「わたしたち、いつの間にか、こんなところに来ちゃったのよね。ここは、一体、どこ? 連邦の秘密施設? あ。分かった。とうとう連邦はバーチャル空間を完成させたのね! これで、我々の勝利は間違いなしだわ――」


 聖羅ちゃんはキョロキョロしながら、あたりを見ている。まわりのクルーも同様に首を巡らしている。そりゃまあ珍しいでしょうけど。


 そしで、当然のごとく、こちらの世界と魔法の世界の住人と目が合い、一斉に目を丸くした。……だが、やっぱり、すぐになごんでいるようだ。どうして、あなた方は、そうすぐになごみやすい性格をしてらっしゃるのですか?(苦笑)


 周りを見れば、魔女っコ軍団、宇宙の戦士。そして、『悪の秘密結社』。


 ボクの頭の中は完全混乱していた。


 どうして、こうもあっちこっちの異世界からやって来られるのだ? 誰でもボクたちのような「力」を持っているのだろうか? だったら、ボクたちが彼らに追われることもないじゃないか。


 と、そのときだった


「謎はすべて解けましたわ――」


 凛とした声が響いた。


 馬車道先輩たちだ。つまり、先輩とシャミー・バーシャ副長、超魔女カートロード様とのお三方だ。


 先輩たちは、公園のジャングルジムの頂上(!)に立っていた。あ、あの~、足を滑らしたら結構危ないと思いますけど……って、全然聞いてないし。


「今までの出来事を整理してみると、面白いことが分かりました。ツナグさん、あなた異世界に行ったとおっしゃっていたわよね?」


 ツナグは、ぶんぶんと頷いた。


「おそらく、その能力とは――」


 先輩は一呼吸おいた。


「――空間を歪めて、本来であれば決して交わることのない世界を『融合』させてしまうものなのではないか、そう推測するのですが、いかがかしら?」


 「いかがかしら?」って、そんな唐突に。え、何? 空間とかが歪められて、それで世界を『融合』する? う一む。世界を「革命」するとかとは、ちょっと違うみたいだけど……。


 つなぐといえば、かなり泣きが入っているようだ。「ボクにはさっぱり分かりませんですよ~、馬車道先輩ぃ~」と、泣き言を吐いている。


 そんなさっぱりボクたちを無視して、


「その証拠に見て、ほら――」


 馬車道先輩たちが、指を差す先には――。


 まさに、空間が歪んでいた。


 空中に突然、ぽっかりと穴があいたような感じだ。


 何か雑誌とかで読んだことがある、ブラックホールみたいなものだろうか。穴の先がまったく見えない、まるで漆黒の闇で満たされているように。たぶん、それは光さえ閉じ込めておけるに違いない……なんて、完全にその雑誌の受け売りだけど。


 ボクの灰色の脳細胞のどこがが弾けた。


 分かった。ボクがトリップする時に感じていた、あの妙な感覚は、これだったんだ。周りが歪んでいって、徐々に意識が溶けていくような感覚。あれは、本当に空間が歪められていたからだったんだ……いや、空間を「歪めて」いたというわけなのか?


「なるほど――!」


 広小路先輩とワイドストリート様とコージ・ヒーロー艦長が、同時に声を上げた。こういうところまで、ご一緒なのですね。


 このボクでも、だんだんと分かってきた。


「ということは……」


 ボクは言いかけて、やめた。言うのが恐くなったからだ。


「そう」


 馬車道先輩は、こともなげに肯定した。


「空間――いいえ、次元そのものを変化させる能力があるということよ」


 一瞬、何のことだか分からなかった。


 ――次元を変化させる能力?


 ボクは耳を塞ごうとした。それ以上聞きたくない。そんな能力って、普通の人間が持っているわけがない……。


 だが、先輩はボクが耳を塞ごうとするのを制するように、続けて言った。


「つまり、異次元を引き寄せる力があるのですわ」


 馬車道先輩たちは、ジャングルジムの上から華麗に飛び降りた。


 考えてみると、これって結構凄いことなんだけれど、今のボクにはそんなこと考える余裕はなかった……って、しっかりと考えてるか。


 先輩たちは静かに歩き出し、全員の表情が見える位置で立ち止まった。そして、ゆっくりとそこに集まっている人たちの顔を眺めながら、言った。

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