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路上(2)

「まったく、探したわよー」


 その声、背後から響いてきた。ボクは反射的にその方向へ目をやった。


 あたりがいつの間にかスモークで充満していて、何やらスモークの後方からライトが輝いている。そのバックライトの中に人影があった。


 ますます高鳴るBGM。たぶん、そのタイトルは、『悪の秘密結社』のテーマだろう。


 次第にスモークが薄れていき、徐々にその姿がはっきりとしてきた。


「あ――」


 ボクはその姿に見覚えがあった。昨日の宇宙船のスクリーンで見た、あの小学生だ。確か名前が……。


「初めまして。あたしはこーゆー者ですー。以後よろしく〜」


 彼女は、律義に名刺を渡してくれた。なんか、小学生が名刺を渡すなんて、結構シュールな光景だ。


 その名刺には、『悪の秘密結社責任者・ウェイ・ブロード』と書いてあった。なんだ、その責任者って。


 でも、どうして彼らがここにいるんだ? 昨日、別の世界にいた連中なのに。つなぐと同じ能力を持っているとしか考えられないぞ。ちょっと不気味だなぁ。


 気がつくと、阿倍野筋さんも広小路先輩も馬車道先輩もらいんさんも凍りついている。そりゃ当り前だよね。誰だってこの異様な状況下で正気を保っていられるわけがないよ。


「――ということで、さあ参りましょう」


 と、言った途端、その女の子の脇からわらわらと数人の宇宙服を身にまとった戦士たちが現われ、ボクとつなぐの腕を掴んだ。お、おいっ!


「な、何をするんですか――!?」


 ボクたちは、彼らの手を振り払って、後ろに大きく飛び退いた。ボクは、非常に危険な状態であることを認識する。


 ――エマージェンシー・モード、発動!


 とか大きな声で言い放ってから、ダッシュで逃げ出した。つなぐの腕を引っ張りながら。


「一条くん、あいつらは何者なんだ?」


 広小路先輩だ。正気に返って、ボクたちの後をついてきたようだ。他のみんなも同様のようだ。


「何者だと言われましても……」


 言葉が出なかった。そりゃ当り前だよね。あんな謎の組織、誰が好き好んで知り合いになったりするものですか。


「つなぐちゃん、まだ追いかけてくるよ――」


 阿倍野筋さんも、小さく息を切らしながら言った。


 ボクは走りながら後ろを確認した。本当だ。金髪小学生向けを筆頭に、四〜五名の男たちが、ゼイゼイ息を切らしながら走ってくる。


 彼らは一体、何者なんだ? どうしてボクたちと同じように世界を移動できるんだ? ボクは、いろいろ取りとめのないことを考えていた。


 でも、何か一つ重大なことを忘れているような気がする。何だろう……? 


 とにかく、何も分からない今の状況では、捕まるわけにはいかない。ボクたちは目一杯走って逃げた……。

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