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魔法世界(6)

 大魔法暦・壱八弐六八参零六伍九七弐四伍八零壱四七零九零参九四の年――。(こんなもん、読めるかっ!)


 そして、この世界のすべての人々が平和に暮らしている頃――。


 で、お昼休みに、つなぐとセーラさん、ミッチィさんたちと仲良く校庭の芝生の上でお弁当を広げていた、この世の至福の時――。


 ――それは、起こった!


「あははははっ――!!」


 高らかな、女性の笑い声が辺りに響き渡った。


 ボクたちは、立ち上がって慌てて辺りを見回す。


「あ。あそこだ!」


 セーラさんが、指を差した。


 その指差す方向は、学校の時計台もどきの塔だった。その時計台もどきの塔の先端部分に、怪しい謎の黒い影があった。


「――!!!」


 その謎の女性は、黒いマントをパッと翻した。


「おほほほ。わたくしたちが、何者かだって? 敢えて尋ねるのでしたら、教えてあげましょう――」


「――別に尋ねてないけど……」


 と言う周りの声を無視して、「とぉ」という掛け声とともに、その人物は宙に身を投げ出した。


 ミッチィさんは、キャッと小さな悲鳴を上げた。


 彼女が目を覆う間もなく、その謎の人物は華麗に地表に降り立った。見事だ。うむ。


「お~、ぱちぱちぱちぱち」


 彼女たちは、賞賛した。すごい、この人、曲芸師か何かの人なのかしら。物凄く身のこなしがいいぞ。と、人々は称賛している。


 ボクたちに拍手を浴びせられたからなのか、その謎の人物は少し照れたように見えた。つなぐが、両手を拡声器のようにして、『わ一、かっわいい~』と、叫んでいる。何だこの状況は。


 ……と。しかし、よく見てみると、その人物の服装は、どこかで見たような気がした。あれ、もしかしたら……?


「わたくしは――」


 と、その黒ずくめの女の人が、すっと前に出てきた。


 サングラスをしているので、完全には分からないのだけれど、すごく綺麗なヒトのようだ。腰まで伸びた長い黒髪が、印象的だ。年齢は……二十前後というところかな? おまけに、かなりグラマラスだ。


 彼女は、名乗りを上げる。ミチコ・ナカヤマさんというらしい。初めに自己紹介をするなんて、なかなか見上げた怪しいヒトだ……って、そんな場合じゃないか。


 一呼吸おいてから、彼女は続けた。


「そう、知る人ぞ知る、我々は『悪の秘密結社』なのです――!」


 ボクの脳髄に嫌な記憶が蘇ってくる。


「あ、あのときの――!」


 思わず叫んでしまった。そうだ、彼らだ。


 すると、前触れもなく、あの聞き覚えのあるBGMが流れてきた。おおう。これは、あの人たちのテーマ曲だったのか。


 ナカヤマ氏は、ふふふと不敵に笑って、ボクたちを見つめている。う~気味が悪いです、その熱い瞳は。


 でも、どうして彼らがこの世界にいるんだろう? あの人たちもパラレルワールドへ自由に来れるのだろうか……?


 ボクは、頭の中がパニックになっていた。つなぐ以外にも、「能力」があるのだろうか? それとも、彼らも同じような特殊能力を持ち合わせているというのだろうか……?


「――わたくしたちは、『力』が必要なのです。どうか一緒に世界を手にしませんか……?」


 どうか、って言われても、どうにもねぇ……?


「ああの~、あたしは、全然そんな気、ありませんけど。世界、でしたっけ? そういう趣味、まったくないので。ごめんなさい――」


 と、ぺこっとつなぐは頭を下げて(いちお、礼儀正しいのは評価に値するが)、そそくさと逃げだそうとしている。


「あ。ツナグ! 自分だけ逃げるなんて、ずるい――!!」


 ミッチィさんが後を追いながら、半分泣きそうになりながら、声をかけている。ごめん! ミッチィさん、あいつはそういうヤツなんだよ。(これって、状況が状況だけれど、かなり極悪非道だよねぇ)


「ここまでお願いしても理解いただけないとは、まったく残念です。仕方ありません。それでは、お見せするしかないでしょう、わたくしの究極奥義を――!」


 彼女は、拳を高く掲げて、叫んだ。


「――最終奥義!! 秘技・龍虎演舞邪気破掌~~っっ!!!」


 何やら意味不明な必殺技の名前を叫びながら、ナカヤマさんは猛然とアタックしてきた。


 ボクたちは身構えた。彼女のアタックを防がねば、暁に勝利を刻めないのである――!(笑)


この闘いを契機として、ついに魔法世界と『悪の秘密結社』との全面戦争となってしまったのだ。


 ――これが、後の世に言う「第一次魔法大戦」の幕明けであった……。(ああ〜、何だか大事になってしまった気が)

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