2 さくら永住予告なのだ!
私たちの子供が生まれて妻が子育て休暇をもらった。日々「お帰りなさい」と言ってくれることは幸福なことだ。男の一方的な幸福感だが妻はそれを良く理解していた。妻は子育ての合間に佐倉への手紙を書いていた。何度も佐倉に書いているのでそれと同数の返事が送られてきた。
『マネージャーのお子さんかわいいですね。きっと美人になります。写真にチーフが写っていなかったのが残念でした。どんな顔をしているのか見たかったです。きっと目尻が下がっているだろうと期待していました。私が喜んでいるチーフの顔を絵にしたので同封します。楽しんでください。それから今度の帰国で日本永住を決意しました。鎌倉か奈良がいいなあと思っています。旦那は東京がいいと言っていましたけど却下しました。日本に戻ったら部屋探しです。落ち着いたら二世のことも考えます。マネージャーのお子さんに会える日を楽しみにしています。ではその日まで』
妻に届いた手紙を読んで佐倉の変わらない様子に安心した。同時に日本永住の決意に驚いた。佐倉の夫の困惑を想像すると気の毒な気がした。私が手紙を読んで笑いかけた時、妻が私の脇で大笑いをした。何かと思って見ると佐倉が描いた同封された絵だった。子供を見て目尻を垂らした私がコミカルに描かれていた。腹立たしいほど特徴をよく捉えている。不在でも人を喜ばせる佐倉には本当に感心した。