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第5話 『魂を持ったクルマ 下』

いろは坂の頂上に、戻ってきたAW11。


「戻ってきたみたいね」


「……うん。運転席に誰か乗ってる」


AWは、駐車場に滑り込むと静かにその心臓を止めた。


「坂本さん、今日はありがとうございました!」

雪は、灰色の髪を振り回すほどお辞儀をしている。


坂本は、照れながら後ろ髪をかいていた。


「いえいえ、私こそありがとう。このコ大事にしてあげてね」


そう言うと、坂本は駐車場の片隅に向かって歩いていた。


駐車場の片隅にひっそりと止まっているクルマ。

「あれは、スカイライン?」


全身シルバーのKPGC10。

箱型スカイライン。通称ハコスカ。


エッジの効いた、直線的なボディーライン。丸目4灯のフロントライト。


リアには黒塗りのオーバーフェンダーが決まっている。


低すぎず高すぎない車高はハコスカの色気を最大限に引き出している。



エンジンが咆哮をあげると、官能的なエンジンが辺りを包む。



ついつい、見入ってしまいそうな魅力がこの車から漂っていた。


「コラコラ、あんまり見てると、あのコがいじけちゃうわよ!」


坂本がそう言ったときだった。誰も乗っていないはずのAWのリトラクが開きヘッドライトが点灯した。


「えっ!?」


なんで、AWのライトがつくの?


どういうことか意味が分からない!


「私、碓氷で走ってるから暇なときにくるといいわよ〜」




そう言い残して、ハコスカに乗った坂本は、爆音を響かせて遠ざかっていた。「雪〜!」



向こう側から走り寄ってくる人影。


「ん、ミウにミヤちゃんどうしたの?」


至ってふつうにいる雪に聖と美羽はずっこけそうになった。


「どうしたの?じゃないわよ!今のハコスカの人誰よ!」


「んー、坂本さんだよ」

のほほんと質問に答える雪を見て聖は


「……、雪ちゃんらしい」


と一言つぶやいた。





「ハコスカ?……うーん」


頂上に戻ってきた忠秀に先ほどのことを話す。


「……あっ!碓氷最速の銀狼!」


合点が行ったのか、忠秀は声を張り上げた。


「碓氷最速?」


「……、銀狼?」


「イヌ?」


雪の思いがけない落ちに、みなずっこける。


「雪ちゃん、犬はないでしょ犬は……」



「その、碓氷の銀狼って?」


首を傾げる美羽はイマイチ分からないようだ。


「なんでも、碓氷じゃぁどんな車がきても負けないっていうウワサだ」


「……、あのハコスカで?」


続いて首を傾げたのは、聖だった。


「ああ、ハコスカで負けなしだ」


「……、みた感じMAX170馬力前後ってかんじだったけど」


「テクの差じゃないのか?ほら、榛名にはハイスペックキラーのパンダトレノだっているじゃねぇか、そんな感じだと思うぞ」


「うーん、ハイスペックキラーかぁ。走ってるところを一度拝んでみたいわね〜」


「そうだなぁ、土日辺りなら榛名で走ってるんじゃねぇか?と言っても、俺らじゃはも多々ねぇだろうけど……」


忠秀は、少し悲しそうにはなす。


「参考になるかなぁ?」

雪は、楽しそうに話す。

相当機嫌が良いようだ。

「うむ、実力が違いすぎて参考にならないかもね」


美羽は、苦笑混じりにはなす。


「……、明日見に行ってみる?榛名なら昼でも走ってるかも」


「そうだなぁ、見に行ってみるだけ見に行くか?バトルはイヤだけど」


「行こう行こう!」


話もまとまってきたところで、そろそろお開きということになった。


「それじゃあ、明日10時にな!」


忠秀は、S14に乗り込むとスピンターンしながら駐車場を出て行く。


「忠秀、調子に乗らないことね!」


美羽も素早くFCに乗り忠秀を追いかけていく。

忠秀と美羽の仲はいつもこういった感じだ。


うーん、2人ともいつまでたっても変わらないなぁ。


そう思い苦笑する。


「……帰ろっか」


聖はにっこり笑いながら雪をみた。


「そうだね」



ドアを開け、運転席に滑り込む。


ポケットからキーを取り出すとキーを差し込んでひねる。


……………………


「んっ?」


もう一度イグニッションを回す。


…………………


エンジンはうんともすんとも言わない。


「ちょ!AWへそ曲げないでよ。私はあなたしか乗れないんだから!!」

祈るようにもう一度キーを回す。


ヒュルヒュルヒュルヒュル


ゆっくりとセルモーターが回り


コアァァァァン!


エンジンに灯がともる。


「ホッ、人間みたいだなぁ……」


ステアをきると聖について行くように駐車場をでる。



「……、気のせい?」


後ろからついてくるAWに何か寒気のようなものを覚えた聖はバックミラーを見ながら首を傾げた。


低速からパワーがでるスーパーチャージャーは、町乗りでもその力を遺憾なく発揮する。


エンジンが低回転でもターボのようなかったるさは感じないし、NAのようなトルクの細さも感じられない。


加えてミッドシップなので小回りがよく利く。


唯一の弱点は、収納スペースが狭いことと、エアコンが聞きにくいという弱点を持っている。


ちなみに、雪のAWには水温計、油温計、油圧計がしっかりと取り付けられている。


ノーマルではそれほど気にすることではないが、ある程度チューニングが進むとこれらのメーターは必需品だ。


特にAWは、エンジンが冷えにくい為に水温油温が高温になりやすいのチューンドAWの欠点だ。


「走ってるときには、メーターも気にかけないと……」


今AWは、街中をゆっくりと走っている。


真昼の街中は嫌気がさすほど暑い。


あまりの暑さに、雪はエアコンのスイッチを入れた。


「う、生ぬるい……」


ムーンとした風が頬をなでる。


「ミヤちゃんのクルマはこんな時には羨ましいかも」


前を走るインプレッサを眺める。


インプレッサは、快適装備はもちろん、ハイパワー+4WDの国産スポーツカーだ。


そしてその力は、WRCを始めとしたラリーではその力を見せつける。


スポーツカーとしても使え、ファミリーカーとしても使える優れものだ。


雪がそう羨ましそうインプレッサを見たときだった、パチンっという音がセンターコンソールの方からした。


「んっ?」


ムムムムムーーーン


「熱っ!何でヒーターのスイッチがーー!」


エンジンルームの熱気が流れ込んできて、車内は真夏並の暑さになった。


「……?雪ちゃん何してるのかな?」


聖はバックミラーごしにみえるAWの中で騒いでいる雪をみて首を傾げた。


「……、まっいっか」


聖は前を向き直る。


前には美羽のFCその前に忠秀のS14が走っている。


只今一行は、榛名さんを目指して群馬を走っていた。


「ゴメンナサイ!だから許してAW〜〜!!」


雪が全開で謝るとヒーターのスイッチは切れた。


「ううっ……、このコ私が考えてることまで分かるの?」


このクルマをはじめにみたときから思っていた違和感。


このクルマは……。


「あれ?」


いつの間にかに後ろに見覚えのある車が走っている。


「浜崎先輩?」


雪のAWの後ろを走る白黒のハチロクレビン。


知っている人が見たらうっとりとしてしまいそうなほどキレイなハチロクに乗っていたのは雪の先輩、浜崎だった。


「おっ、S14、FC、GC8にAW11か……、どっからどうみても走りや軍団だな」


浜崎は少しに焼けながら、後ろを走っていた。


この方向ということは、榛名に行くのか?


榛名には、地元じゃ知らない奴はいないと言われるハチロク娘がいるんだよな。


あの娘のドリフトは、一度みたら夢にでる。


それほど強烈なんだよな〜。



「さて、俺は一足先に榛名に上るとするか」


浜崎は、前方を確認した後、アクセルペダルをぐっと踏みつけた。


4AGは、加速していく。


それほどパワーのあるエンジンではないが、ふつうに走っている車を追い抜くには十分だ。



「おっ!イキの良さそうなハチロクが一台」


対向車線から追い抜きにきているハチロクをみて忠秀はテンションがあがった。


ヒュンッとハチロクは14を抜くと走り去っていった。


「見たとこ、180馬力ってとこかな。今時珍しいキャブ仕様か……」


あれは、榛名に向かったのか?


もしかしたらまた会うかもな。


フッと忠秀は笑った。


榛名山まで後少しだ……。




第6話 に続く

次回は、頭文字Sで有名なあの御方が登場します。


次回をお楽しみに!!

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