はじまり
世界は本当に理不尽で、優しさもないんだと、俺は今更ながら気づいた。
俺の選択肢にはもう、生存を掴み取る選択肢がない。今までの選択が悪かったのだろうか。それとも、最初から俺はここで死ぬ運命にあったのだろうか。真相は分からない。
分からないからこそ、知ってみたい。いままでの全ての選択肢の先にある結末を知ってみたい。どうして俺はこんな運命を辿ったのか。どうして世界はこのようになってしまったのか。
どうして彼女はあまりにも早く――――消えてしまったのか。
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目を覚ました時にはたぶん、全てが終わっていた。
明日の食事を考える母親もいないし、仕事で忙しそうな父親もいない。
公園でいつもうるさくだべっている高校生もいないし、駅の横にずっといるホームレスも、今日はいなかった。
今日、この世界に存在する全ての人が、全ての生命が、全ての物が、この世界からなくなった。
残されたのは何もない『宇宙』というだだっ広い空間だけだった。
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俺がいるのは全ての壁が白の空間だ。あとなぜか感覚がおかしい。
壁までの距離の感覚が掴めないし、いつまで行っても壁にさわれない。
これは死んで幽霊になっているのだろうか。それとも魂だけの状態になっているのだろうか。
こんな状態だったら当然、―――実験をしてみたくなる。
壁にさわれずとも、地面の感覚がある。地面を使って今の状態がどんな状態か考えてみよう。
まず、足以外でも地面に触ることはできるのか。
結果、普通にさわれた。
じゃあ、倒立をしてみよう。
結果、自分の運動神経がないので無理。
じゃあ、壁倒立を……壁にさわれない。
そこから何回も実験をしてわかったのが次のこと。
・多分地面は全身でさわれる
・あと多分自分の体も自分でさわれそう
・多分地面を使ったひと通りの運動はできる
・多分運動神経は変わっていない
・あと今更だけど呼吸している感覚がない
呼吸していないのになぜ生きられているのかは分からない。まあでも呼吸しなくても生きていけるんだし、この実験は後回し。
壁にさわれないのと壁への感覚がおかしいの以外、目立った異常はなさそう。……呼吸はしてないが。
じゃあ次は……自分の体について実験してみよう。




