【天然危険物】自己表現に生成AIを使って楽しいの?
黒崎 「ども。今日も今日とて創作界隈の深淵にうごめく本格ワナビ、黒崎かずやです」
チロン 「そんな哀しき日陰者の妄想成分100%の本格イマジナリー相棒、チロンちゃんなのです」
黒 「したっけ今回は挑戦的なタイトルで炎上マーケティングしつつ、またしても創作と生成AIについて徒然なるままにネチョッと語ろうと思う」
チ 「ふむ、苦しゅうない。好きに計らうのです」
黒 「なお、今回のエッセイはカリフォルニア大学の研究チームが発表した〝例のレポート〟を下敷きにしてるんで、興味がある人は『【天然危険物】AI文士の何が〝悪い〟のか』を併読してくださいませ」
チ 「おー。5行もあればできる説明をあえてしないで他の自作品に誘導する小狡さに、まこと感服つかまつるのです」
【〝なりたい自分〟への憧憬と執着】
黒 「まず、これから語るのは私見であることを前置きしておこう」
チ 「独断と偏見はいつものことなのでバッチコイなのです」
黒 「生成AIに手を出す人って2種類いると思うのよ。ひとつは純粋に好奇心が強い人」
チ 「もうひとつは?」
黒 「〝なりたい自分〟になれなかった人」
チ 「──? どゆこと?」
黒 「そのまんまの意味だよ。わかりやすい典型がAI絵師。絵描きになりたいんだけど、残念ながら画才が自分の理想に満たず、さりとて努力を続ける根気も情熱も無い──そんな人にとって生成AIは実に魅力的だわな」
チ 「なるほど。納得なのです」
黒 「でも、はたから見ると彼らの行動はちょっとズレてるんだよね。これはサブカル系AIブロス全般に共通する傾向だけど、実のところ彼らは創作がしたいわけではないようにみえる」
チ 「あやや? だったら、どうして生成AIを使ってるのです?」
黒 「クリエーターになりたいから」
チ 「──はい?」
黒 「クリエーターだと思われたいから、といったほうが正確かな」
チ 「絵を描きたいわけではなく、絵師を名乗りたいだけってことですか」
黒 「うん。AI生成画像をトレスして自分の画風に置き換えてる人や、手のこんだ加筆をしてる人には、まだ創作意欲が感じられるけど──ポン出しAI画像を自作品として披露してるような人は絵師ぶりたいだけとみていい。絵だけでなく、小説や音楽等もまたしかり。
でなきゃ、彼らの行為は意味不明すぎる」
【それって本当に〝創作〟と言えるの?】
チ 「んー……でも御主人? 生成AIに何かを作らせるのも一種の〝創作〟なんじゃ」
黒 「はたして、そうだろうか」
チ 「御主人は否定的みたいですね」
黒 「是か否かで言うなら否だね。実際、AI生成物には原則的に著作物性が無いのだし」
チ 「そうなのです? AIブロスさんは著作権があるって言ってますけど」
黒 「それは文科省の指針を都合よく意訳しすぎ。個人の創意が認められる部分にのみ限定的に著作物性が生じうる、と解釈するのが正しいし、それが世界的な流れでもある。
たとえばイラストだと、人間が加筆した部分にのみ著作物性が認められる。
小説の場合は人間が構想・構築した部分にのみ著作物性が認められ、文章・考証・ストーリー・名詞等のそれぞれにおいてAI生成物を主体とした部分には認められない」
チ 「ふーん。なんか、ややこしいのです。解りやすい実例は無いのです?」
黒 「日本ではまだ判例がないからアメリカの話になるけど──AI生成画像を切り貼りして漫画を作ったら、コマ割りにだけ著作物性が認められ、画像には認められなかったって事例があるよ」
チ 「ほー。コマ割りだけじゃ漫画にならないから、実質的に作品の著作物性が全否定されたようなものなのです」
黒 「もっと決定的な事例もあるよ。アメリカ著作権局は、624回のプロンプト入力と加筆修整を経て完成したAI生成〝絵画〟の著作権保護を拒否しているんだ」
チ 「あやや、そんなにプロンプトを試行錯誤しても著作物とは認められなかったのですか」
黒 「作画の主体がAIの場合、いくらか加筆したぐらいじゃ〝その人の作品〟とは認められないってことだよ。
本件は3年ほど前の事例だが、今のところこれを覆す裁定・判例は出ていない。
ちなみに同局には〝製作過程で補助的に生成AIを利用した作品〟が数百件登録されてるけど、著作物として保護されるのは人間が直接寄与した部分に限られてるそうな」
チ 「ふーん。AIブロスさんには厳しい状況ですね」
黒 「ただ、国内でひとつ興味深い事案があってね。他人が作ったAI生成画像を勝手に複製・販売した男が、著作権法違反の容疑で書類送検されたんだよ」
チ 「へー。じゃあ、そのAI生成物は例外的に著作物だと認められたのですね」
黒 「いや、今はまだ〝その可能性があるかも〟ってだけ。思うに警察も試金石として立件したんじゃないかな。AI生成物に著作物性が認められるか否かの境界線を知るために」
チ 「そーゆー意味では、すっごく興味深いケースですね。御主人は、どうなると思うのです?」
黒 「結論からいうと、起訴はされないんじゃないかと思ってる」
チ 「不起訴ですか」
黒 「あるいは起訴猶予か。というのも書類送検されたのが去年(2025年)の11月なのに、いまだ(2026年3月)に続報が無いのよ。
手口自体は単純な事件のわりに処理が遅いのは、根本の法解釈で迷ってるんじゃないのかな。だから、このまま起訴猶予ってオチになるんじゃ──ってのが僕様の見立て」
チ 「そっか。検察さんは、確実にクロだと思う事件じゃないと起訴しないですもんね」
黒 「まあ、どうせならしっかり裁判やって判例を作って欲しいところだけどな」
チ 「それにしても、この話題、不思議と盛りあがりませんでしたよね。AIブロスさんにとっては大ニュースだと思うのですが」
黒 「事実、大ニュースだし、当初は鬼の首をとったようにドヤるAIブロスさんがたくさんいたよ。でもね、よく考えると彼らにとって決して万々歳の出来事ではないのよ、これ。むしろ崖っぷちに近い」
チ 「ほー。そりゃまた、なんで?」
黒 「まず本件が起訴猶予や不起訴になった場合、AI生成物をガチパクされても事件化は難しい、という実例ができてしまう。これはAI生成物の商品価値が社会的に否定されたに等しい。
しかし起訴されて有罪になったらなったで、もっと厄介なジレンマにブチ当たる」
チ 「ジレンマ、ですか」
黒 「そう。何故なら、AI生成物の著作物性が認められた場合、その生成に寄与したデータセットが感情の享受に資されたことになるからだ。
結果、無断機械学習型の生成AIは法的にも倫理的にも問題無いとする彼らの論陣にドでかい風穴があく。こと倫理面においては致命的なダメージになるほどの穴がね。
これをXでつぶやいたところ何人かの嘲笑を頂戴したが、インプレ数のわりに攻撃的な反応は少なかったし、論理的な反証はひとつも無かったよ。
たぶん多くのAIブロスは察したんだろう。そこに触れるのは自殺行為だと」
チ 「だから、勝ち鬨をあげかけたAIブロスさんズが急にトーンダウンしたのですね」
黒 「ああ。でも、この事案によって〝AI生成物の著作物性〟という問題の着地点が見えてもきた。
実際には、世界中で判例を積み重ねて常識が形成されるのを待つしかないが──
AI生成物においては、人間が主体的に作出した部分にのみ著作物性が生じうる
ただしAI生成部分と人間の作出部分が不可分の場合、総体としての著作物性は認められない
──という決着が妥当だろう」
チ 「やっぱり、プロンプトをどんなに工夫してもダメなのですか」
黒 「ダメだろうね。たとえば絵師にイラストを依頼した場合、その作品の著作権は依頼者ではなく絵師に発生する。同じくAI生成物の著作権は当該AIに発生するはずなんだけど──残念ながら人間と法人以外は、いかなる権利者にもなれない。
行使する主体が存在しない権利なんてナンセンスだから、もとより無いものとみなされるわけ」
チ 「生成AIの運営企業が生成物の著作権を持つわけにはいかないのです?」
黒 「その理屈だと、デジタル絵師のイラストの著作権は、使用したペイントソフトのメーカーに帰属することになりかねないぞ」
チ 「あう……ですね」
黒 「それに著作権を主張すれば相応の義務を負うことになる。ユーザーが他人の著作権や肖像権を侵害するような生成物を作ったら、その責めをテックが負うハメになるんだ。そんなリスクを企業が背負いこむと思う?」
チ 「それは無いですよね……。んじゃ気を取り直して次の質問。自作のプロンプトは著作物にならないの?」
黒 「なりうるって意見もあるにはあるけど、認められる可能性は低いだろう。料理のレシピが著作物として認められないのと同じで」
チ 「ふむ。ではでは、またしても質問。後半の但し書きの部分は、どーゆー意味なのです?」
黒 「注文したラーメンにゴキブリが入ってたら、そいつを取り去ったところで食べ物としての商品価値は無いわな。スープに溶けこんだであろうゴキのエキスを取り除くことは不可能なんだから。つまりは、そういうこと」
チ 「むー……解りやすいけど、すっごくイヤすぎるたとえなのです」
黒 「まぁ裏を返せば、AI生成部分を第三者が容易に識別でき、そこを取り除いても作品として成立するなら、著作物といえるわけだが──」
チ 「それだと生成AIを使う利点がまったく無いのです」
黒 「だわな。てか、そもそもポン出し生成物に著作物性が無いのだから、そいつを土台とした表現は本質の部分で著作物たりえない。生成AIに何かを出力させる行為は創作ではなく、工作なのさ」
チ 「ふむふむ。だから、それ自体に創作の喜びを見いだすのは間違ってまっせブラザー、と」
黒 「あるいは事実誤認かな。たぶんに恣意的な」
チ 「なりたい自分になったつもりでいるために、あえて気付かないふりをしてるのですか」
黒 「そのあたり、ちょっと視点を変えて考えてみようか」
【自己表現に生成AIを使って楽しいの?】
黒 「どんなジャンルでも、およそ創作と呼ばれる行為は自己表現そのもの。だから生成AIに否定的なクリエーターからは、しばしば『AIに作らせて楽しいの?』との声がきかれる。
僕様も当初は同感で、機械に作ってもらって何が楽しいんだろ、と思ってた」
チ 「その言い方だと、今は違うみたいですね」
黒 「ああ。きっと生成AIをイジるのは楽しいんだよ。ただ、それは創作の楽しさとは別物だけど」
チ 「とゆーと?」
黒 「生成AIのクセを見極めつつプロンプトを試行錯誤する作業は、まさに攻略。その楽しさはゲームやギャンブルの快楽に類するものだ。
ゲームを一種の疑似体験とみるなら、その攻略法をあみだすのは疑似表現。それで得られる快楽は、実際の創作行為の下位互換になりうるのだろう」
チ 「つまり、生成AIを使うことで〝クリエータになった自分〟を疑似体験してるのですね」
黒 「そう。創作には様々な苦労や苦悩がつきまとうが、産みの苦しみがあればこそ完成したときの達成感は一入で、それが創作の醍醐味といってもいい。
AIブロスがプロンプトを工夫して思い通りの生成物が得られたときの満足感は、その疑似体験なわけだが──」
チ 「疑似なのです? それってば創作の快感そのものなのでは?」
黒 「いや、あくまでも下位互換の疑似体験にすぎない」
チ 「むー。きっちり説明しやがっていただきたいのです」
黒 「では質問。プロンプトには確かに作った人の個性や嗜好が込められているが、その出力であるAI生成物に個性はあるのだろうか?」
チ 「そーゆー訊き方をするってことは御主人は〝無い〟と思ってる確率シックスナインだけど、賢明なるチロンちゃんは空気を読んで〝あるんじゃないですか?〟と言ってあげるのです」
黒 「例によって心の声がダダ漏れすぎて台無しだけどな」
チ 「しかして正解はどっちなのです? あるの? 無いの?」
黒 「ほぼ無い」
チ 「ほら、やっぱり」
黒 「何故なら、生成AIの原理上、その生成物には不特定多数の人の作意(≒個性)が入り混じってるからさ」
チ 「よく〝AI生成物は他人の作品の切り貼りだ〟っていわれますけど、そういうことですか」
黒 「んー、ちょっと違う。切り貼りのパッチワークというより、レゴだね」
チ 「レゴ・ブロック?」
黒 「うん」
【AI生成物のなりたち】
黒 「生成AIは様々な学習データを〝それ自体では意味をなさない小さな情報単位〟に分解し、収集してる。これはデータセットの効率化のためだが、〝元データをそのまま複製しているわけではない〟という詭弁にも役立ってるね。
イメージ的には学習対象をレゴブロックで作られたオブジェに見立て、それを解体してパーツごとに名前をつけて保管してるようなものだ」
チ 「そーやって溜めこんだパーツの複製を使って何かを作るのが、AI生成なのですね」
黒 「ああ。そのための仕様書がプロンプトなわけ。で、ここで大事なのは、プロンプトは仕様書であって設計図ではないこと」
チ 「──? それってば、どう違うのです?」
黒 「主要な性能と全体像をあらわすのが仕様書、構造を具体的に記したのが設計図。
あくまでも仕様書であるプロンプトは、生成物の組成のすべてを記述したものではない。
実際、キャラクターを生成するときに一本一本の毛束の構造や座標まで指定するようなAI絵師はまずいないわな。にもかかわらず、それなりにちゃんとしたキャラクターが生成されるのは──」
チ 「AIが足りない情報を補ってくれるから、なのですね」
黒 「その通り。プロンプトによる具体的な指示がない部分は、すべてAIが自動的に忖度して穴埋めしてるんだ。無論、そこに作者(プロンプト入力者)の直接的な作意は存在しない。
AI生成物の著作物性が原則として認められないのは、そのためでもある。
たとえプロンプトに個性があろうとも、そこに不特定多数の他人の作意の断片を混ぜ混ぜして合成されたAI生成物は、いち個人の作意の産物というにはあまりにも〝不純物〟が多すぎるのよ。
そんなものを作って──いや、作ってもらって得られた快楽は、創作の醍醐味とは似て非なる幻覚にすぎないのではないか?」
チ 「いや、ないか? と言われましても……ボク様、まいっちんぐ〜なのです」
黒 「昭和のオッサンか貴様」
【AIブロスと闇堕ちワナビの親和性】
黒 「つまるところ、創作系AIブロスは創作行為を疑似体験することで〝なりたい自分〟になった気分にひたり、そこに快感を見いだしていると思われる。だいたいは無意識のうちにね。
まぁ、それ自体は別に構わないのよ。いわば子供がキッザニアで職業体験してるようなものだし。
問題なのは、なりたい自分になったと思いこんでしまうことなんだ」
チ 「妄想はサイコパスさんの十八番。あのレポートの通りなのです」
黒 「でも、世間様の生成AIに対する評価はかんばしくなく、AIブロスをクリエーターとしてもてはやす人は少数派だろ?」
チ 「てゆーか盛大に叩かれてますもんね。とくにAI絵師さんとか」
黒 「そんなふうに自己評価と社会的評価が食い違うと、普通は〝あれ? 俺は間違ってる?〟と気付くんだけど、サイコパシーなマキャベリストさんは気付かない。たとえ気付いても〝俺をクリエーターと認めない世間が間違ってる〟と他責思考になる」
チ 「あらま。まるで闇堕ちワナビさんなのです」
黒 「実際、闇堕ちワナビと急進的なAIブロスはよく似てるよ。某巨大掲示板の、いわゆる底辺作家スレとかみてると、作品づくりを生成AIに頼ってる人が少なくないようだし。かなり親和性が高いみたいだね」
チ 「なんともイヤ〜ンな親和性なのです」
黒 「付け加えるなら、自分たちを正統派だと思ってる点も似てる。闇堕ちワナビにはテンプレ嫌いが多いだろ? 界隈のメインストリームである流行テンプレ作品を目の敵にし、自分たちこそが本来あるべき作家の姿だと思ってるわけだが──これね、一種の現実逃避なのよ。報われないおのれの現実に何かしらの価値があると思いこむための」
チ 「なるほど。そのあたりの思考回路が似てるのですね」
黒 「考えてみれば、闇堕ちワナビも自己愛でブーストされた承認欲求をこじらせた人だからね。さもありなん、って感じさな。
ついでに言うと、撮り鉄との共通点も多々あったりするんだけど──そこに触れると面倒臭くなるから、やめとこう」
チ 「言及した時点で盛大に触れてるのです。路上ですれ違いざまに女子高生のお乳を鷲掴みにするクソったれ変質者ばりにガッツリと」
黒 「嫌すぎる比喩はやめれ」
【まとめ?】
黒 「つーか、そもそも論として、AI生成物を『すげーや、こいつは使えるぜイヤッホー』と思う時点で、その分野のセンスは無いと思うんだよね。センスが悪いのではなく、無いの」
チ 「どう違うのです?」
黒 「悪いセンスは個性的ともいえ、うまく使えば価値を産む。が、無い袖は振れない」
チ 「あまりにも個性が無い、ってことですか」
黒 「そう。なのに生成AIという借り物のセンスでクリエーターを標榜するから、なおさら嫌われる。
AIブロスが白眼視されがちな最大の理由は、その欺瞞にあるのかもな」
チ 「なにやら胡散臭いのに偉そうな人なんて、たしかにイヤですもんね……」
黒 「ああ。生成AIは道具にすぎないとAIブロスは言うが、道具の使いかたにも善し悪しってものがある。目的のために手段を選ばない権謀術策主義は人として無様だ、ってことは知ったほうがいいんじゃないかな。
もとより自己表現は手段(手法)も大事。そいつを高度に自動化された〝道具〟に依存するような作り手は、替えが利く作業員であって、無二の表現者とは言えないのだから」
チ 「むむむ……すちゃらか御主人の分際でまじめに締めようだなんて、どこぞの世紀末覇王さんも片腹痛すぎて抱腹絶倒。我が生涯にいっぱいの悔いあり、なのです」
黒 「いや、意味わかんねーし……」
──終劇──
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でもって、ついでに他の拙作もサクッと読んでみてほしいのであります。
く(・̀w・́)
◆ ◆ ◆
頂戴した感想には必ず目を通しますが、レスバは本意ではないので基本的に返答はしません。
ごめんね。
では、また。
いつか、どこかで──




