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アイテムが欲しい、ただそれだけ  作者: 秋海棠


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8.魔石が必要だった


 上級ダンジョン攻略で獲得したアイテムを使ってみようと思ったけど、あまりに色々ありすぎた1日だったからこの日はサクッとご飯を食べ大人しくベッドに入って眠った。


 そして翌日、なんと起きたのはもうお昼になりそうな11時過ぎだった。

 今回はちゃんと自宅のベットで起きたし、日にちもズレていないことを確認して安心したが、それにしても寝過ぎだ。

 まあ、でも疲れてたしなと気にすることなくスマホをチェックすると、2件の着信と、鬼のような数のトークアプリの通知が来ていた。

 トークアプリの通知は、どうやら昨日返信した幼馴染のグループトークが主だった。

 通知内容をサラッと見ると、最初は私の話が飛び交っていたが、いつの間にかみんなで集まる日取りが決定していた。

 そして返信していないのに私は強制参加だと書かれている。

 うん、行くけどね。

 集まる日は来月のようだから後でまた返信しよう。


 その他の通知も、昨日返信した友人からの「安心した」や「心配してた」などの返信なのでこれもまた後で返そう。


 後はニ件の着信か。

 一件は知らない番号。留守電も特に入っていないからもちろん掛け直さない。

 残り一件も知らない固定電話番号だったけど、留守電に「IDC 茨城上級ダンジョン課の鮫島です」って入っていたので、こっちは掛け直した。


 IDC鮫島さんからの内容は、昨日スマホが使えるかわからないけどって教えた私の番号に確認のためかけた事と、宝箱がIDC日本支部で本物と承認されたので来週口座に報奨金が振り込まれるって事だった。

 昨日の今日なので、まだオークションの日程などは決まっていないけど、決まり次第お知らせするって。

 あと、「アイテムのテントは使ってみたんですか!?」って鼻息荒く聞かれたので、これからですって答えて終話した。

 鑑定していた時もかなり興奮していたもんね、鮫島さん。


 鮫島さんではないが、私もこの「テント」には興味津々なので早速いじってみよう。

 未知の道具って何でこんなにもワクワクするんだろうね。


 浮かれ気分でアイテムボックスから「テント」を取り出し、昨日説明を聞いた通り、テントについた赤いボタンを押す。


【使用者を登録しました。間取りを設定して下さい】

 

「うわっ!」


 ボタンを押すと、頭に直接アナウンスが流れたと同時に、目の前に半透明なモニターが表示されびっくりした。


 そのモニター上部には間取りを選択と書かれており、下に数字の書かれた十個の枠が並んでいる。そして、その枠の下に「配置」「リセット」「確定」とボタンが並ぶ。


 どうやら本当に部屋の間取りを自由に決められるらしい。

 これは嬉しすぎる!

 10部屋は慎重に選ぼう。

 

 まずは一番の枠をタップするとアルファベットの選択肢がズラッと出てきた。一番上の「B」をタップすると、「balcony」「bathroom」「bedroom」などが並んでいる。

 「balcony」をタップすると今度は色々なイメージ画像付きの一覧が出てきて、好きな形のバルコニーを選べるみたいだ。

 その中の一つをタップするとイメージ画のアップと広さの表記も加わり、下に「選択」「戻る」のボタンが出てきた。

 とりあえずバルコニーは後回しで、「戻る」を押し、他のものも見ていく。


 どうやら間取りはアルファベット順、その中のイメージ画の並びはグレード順になっているようだ。

 「bathroom」を見ていて気づいた。

 一番上の画像はワンルームアパートで見るようなトイレ・洗面所・お風呂がセットになった3点ユニットバスタイプ、中間は一般家庭でよく見る洗い場がついたユニットバス、下の方は全体的に広々としていたり自動洗浄やジェットバス、上部シャワーなんて高機能バスルームになっていた。

 

 これは……一つの枠を決めるにも時間がかかりそうだ。


♢ ♢ ♢


 ゆっくりコーヒーをのみブランチを食べながら時間をかけて見ていき、玄関・マスターベッドルーム・ランドリールーム・お風呂・洗面所・キッチン・リビングダイニング・トイレ・ベッドルーム2つを選んだ。

 そして、「決定」を押すと、【「配置」設定がされておりません】とアナウンスが流れる。

 確かに部屋を選んだだけだなと思い、「配置」ボタンを押すとモニター画面が切り替わった。


 入り口と書かれた文字がモニターの一番上にあり、その下は四角く囲われた空間で、右側に「廊下」「扉」とあり、四角枠の下に番号の書かれた選択したイメージ枠が横に並び、一番下に「戻る」「リセット」「決定」ボタンが並んでいる。


 一番の枠を触ると枠が浮かびそのままスライドで自由に動かせる。

 凹のような形に各部屋を、上の空いている部分は入り口と玄関を配置した。

 それから各部屋の扉と繋がる廊下も配置。

 まあ、初めての設定だし、何かおかしかったとしてもまた一からやり直せばいいだけだ。


 私はあっさりと決定のボタンを押した。


【間取りの登録を完了します。決定しますか?】

【はい・いいえ】


 と出てきた。

 ちょっと変更するか悩んだが、既に沢山考えたしいいやと、「はい」を押す。

 

 すると、モニターに【各部屋に必要な魔石は予め付いておりませんので、各種ご用意ください】とポップアップされ、「OK」の文字しか選択できない。

 ちょっとよくわからないけど、「OK」しか押せないので押すと、


 シュシュシュッ、カチャン


 と、布だけのはずなのに一部金属がはまるような音がして出来上がったのは、一人用テント。


 そう、どう見ても大人一人しか入れなさそうな円錐状の簡易テント(地味目)が出来上がったのだ。

 自動で組み立てられたのは圧巻だったけど、これ本当にあの間取りが適応されているのか?


 真ん中にはファスナーがあり、その上部にスライダーがついている。

 ファスナーの右横、目線の少し下あたりに音符のマークがついたチャイムが設置されていて、よくよく見るとボタンの上に小さいレンズがあった。

 これがインターホンか。古い感じで可愛い。

 

 興味を惹かれ押してみたが、なんの音もしない。

 押した手応えもすかした感じで、おかしい。

 もしかしたら中では音がしているのかもしれないから、まずは入ってみよう。


 ファスナー上部のスライダーを下に引き、入り口を開け中を覗くと、

 

「!? 暗っ!」


 中の空間が広い気はするが、いかんせん真っ暗である。

 広めにファスナーを開け、自室から光を入れてスイッチを探し当てるが、それを押しても一向に明るくならない。


 なぜ!?


 大丈夫、まだ焦る時間ではないと誰かに言われそうなぐらいの動揺。

 深呼吸をしてスマホの懐中電灯を付け、再度探索開始。


 ざっと懐中電灯をかざしながら回ったが、概ね私が選択した部屋の通り。

 だけど、どの部屋も明かりがつかなくて懐中電灯で照らして見ただけだから、いまいちテンションが上がらない。

 しかも、キッチンやお風呂、洗面所、トイレでは水も出ない。

 終いには各部屋にあると思っていたコンセントが無い。


「あ、そうか、これアイテムなんだから魔石が必要なのか。だから、あの最後のポップアップか……」


 間取りを選択・配置完了まで数時間は掛かっている。

 すぐに住めるんだと勘違いして、膝からガックリと崩れ落ちた。


 「魔石がどこで手に入るのかとか知らないよ……」


 仕方ないと気を取り直し、ダメもとでIDCの鮫島さんに電話してみた。


 すると、ダンジョンのクリア報酬で魔石は出てこないが、ダンジョン内にランダムに現れるSHOPで販売していると言うのだ。

 しかも、他のダンジョンから出たアイテムでも魔石が必要らしく、IDCでは常時買取している上、必要な人は個人で依頼もできるとか。

 近くのIDC出張所で聞いてみてはいかがかとアドバイスを貰った。

 最後に、テントを買取に出すなら「是非、茨城上級ダンジョンで!」と念を押されたが、アドバイスのお礼を言って、最後の部分だけスルーしておいた。

 鮫島さんとの電話を切り、もう一度懐中電灯を付けてテント室内へ。

 

 必要な魔石を買うにしろ依頼するにしろ、何が何個必要なのかを調べなければならない。

 なんとか暗い中、各部屋を回り必要な魔石の種類と個数を調べていく。

 親切なことに各部屋の照明用と換気用の魔石は、玄関に設置したシューズクローゼットの上の方に配電盤みたいなものが設置されていて、その中にセットする形になっていた。

 各部屋照明で必要なのは光の魔石小1つずつ、換気で必要なのは全体管理みたいで風の魔石中1つ、残量は魔石の色で確認するらしく、薄くなって透明に近くなったら魔力がなくなるサインなんだとか。透明になる前に交換が必要。

 魔石の残量確認方法に関しては鮫島さんから聞いた話だ。

 でも玄関のボックスでセットできるのは照明と全体換気だけだから、その他各部屋を回っていく。


 あらかた確認し必要な魔石は、風の魔石中が1、光の魔石小が10、火の魔石小が3、水の魔石小が5、風の魔石小が4、闇の魔石小が5。

 まあまあな数必要だった。


 そもそも魔石が一ついくらで買えるのかすら知らない。

 ここはネットで検索してみる。

 IDCの公式HPを見つけ、そこに記載されていた現在の販売価格一覧を見ると……

 

「!? たっか!!」


 魔石の価格に思わず声が出てしまった。

 魔石中の一つの値段がなんと170万円!

 魔石小はなんとか手が出る一つ1万7千円なんだけど、中が高すぎる!

 魔石大に至っては買うことはないんだけど、なんと……1,700万でした……ああ、恐ろしい。


 今の貯金額で買えない額ではないけど、170万円の魔石一つに1万7千円の魔石27って、200万以上の出費じゃん。

 私今無職ぞ!?

 そりゃ買うのに怖気付くでしょ、車種にもよるけど新車だって買える金額よ!

 

 でもなぁ……買わないとこのテント使えないしなぁ……

 使いたいなぁ、間取りにこだわったマイホーム。

 それに今はまだ大丈夫でも、この家に知らない人が押し寄せてくる可能性もあるしなぁ……考えすぎかもしれないけど。

 帰ってきてからは情報を仕入れるよりも、部屋の片付けや家族・友人への連絡を優先してたし、今日に至ってはテントしかいじってなかったから今どんな風に騒がれてるかわからない。

 むしろ情報を仕入れすぎたら不安で押し潰されそうな気さえするから、今は良い。

 今週実家に帰った時に弟から仕入れよう。


 よし、そうとなったら買おう魔石!

 そもそもマイホームという名のテントも棚ぼたで手に入れたもので費用は掛かっていないんだ。

 早く住めるようにして、この家を出よう!

 

 ♢♢♢

 

 早速やってきました、千葉上級ダンジョンのIDC。

 

 家から一番近い松戸中級ダンジョンに行ってみたんだけど、魔石中以上は県ダンジョンでしか販売できない決まりだと言われてしまったのだ。

 しかも、魔石小も私が必要とするほどの数は揃っていなかった。


 なのでまた車を借り、一時間ほどかけてやってきた。

 今は夜7時過ぎ。

 24時間運営だけど夜だからか人は全くいない。

 そもそも上級ダンジョンに挑む人自体まだまだ少ないらしいからいなくても不思議ではない。

 中級は結構賑わっていたけどね。


 ⦅挑戦者⦆はいないけど、窓口にはネームホルダーをつけたIDCスタッフがいる。

 窓口で魔石の購入を希望すると、窓口とは別に設置された個室ブースに案内された。

 対応してくれたのは30代半ば頃の男性、ネームホルダーには山田と書かれている。


「どうぞお座りください。魔石をご希望という事ですが、どの魔石をご希望でしょうか?」


 山田さんが着席を促し、早速希望数を伝える。


「必要数をまとめてきました。これだけの数ありますか?」


 何が何個必要かすぐ伝えられるようにちゃんと書いてきましたよ!


 「お預かりします」と言って受け取った紙を見て驚いてはいるが、「お調べします」とノートPCを操作しながら調べてくれた。


「在庫はご希望数全てございました。現在の価格ですが、属性に関わらず魔石中が1点170万円、魔石小が1点17,000円ですので27点で459,000円となります。いかがされますか?」

「良かった、全て購入します」

「かしこまりました。お支払いはいかがされますか?」

「支払い方法って何があります?」

「現金、クレジットカード、コード決済、銀行振り込みとございます」


 うーん、まず現金は今ない。引き出すにも高額だから銀行でとなると今はやってないし、カードもコード決済も限度額そんなに高くないし……振り込み一択だ。


「振り込みでお願いします」


 振り込みでお願いすると、銀行の確認をされた。

 大手メガバンクだと即日入金が確認できるから今日このまま品物を渡せるけど、地方銀行となると入金確認が明日以降になり、受け渡しも明日以降になると言うのだ。

 私のメインバンクは大手メガバンクだから良かった。

 

 それを伝えると、品物を用意するから少し待つように言われ、山田さんはPCを持ってブースを離れていった。

 その間に銀行アプリを開いておき、限度額を念の為確認。

 うん、振込金額あげておいてよかった、大丈夫そうだ。


 しばらく待っていると、山田さんともう1人20代半ばくらいの女性が黒いケースを持ってブースに入ってきた。


「お待たせいたしました、こちらがご希望の魔石です。念の為鑑定鏡でご確認ください」


 と言って、女性が持っていた黒いケースと虫眼鏡を私の机の前に置き、私の目の前に座った山田さんの斜め後ろに女性は控える。

 

 黒いケースの中には色とりどりの小さな石が沢山と、それよりもちょっと大きい緑の石がそれぞれ傷つかないように嵌め込まれて並んでいた。

 それを鑑定鏡と言われたアイテムでのぞいてみると、その石の情報がポップアップされる不思議。

 並んだ全ての石が魔石で、私が希望した属性のものだった。


「はい、全部確認できました。振り込みはここに?」

「ええ、明細内容を確認頂き、その金額を下の口座へお願い致します」


 促されるままタブレットに表示された明細内容を確認し、アプリで振り込み手続きをした。

 そして、販売登録も必要だからと「PNカード」をここでも提示し、山田さんがノートPCで操作をしていたんだが……


「えっ!? 上級攻略者!?」


 山田さんの斜め後ろに立っていた女性職員が声を上げた。


「え?」

「下平くん! これは秘匿案件だ!」

「あ、も、申し訳ありません」

「君はもう下がって」

「し、失礼いたしました……」


 そう言って女性はブースから出て行った。


「佐藤様、申し訳ありませんでした。口外しないようにきつく言い含めます」

「ええ、そこはよろしくお願いしますね。あと、「PNカード」の攻略記録って誰でも見れるんですか?」

「いえ、基本的に権限の付与された者しか閲覧はできません。ダンジョン受付では入退場の記録のみですし。ただ、私は権限を付与されておりましたので、後ろから覗いて……誠に申し訳ございませんでした」

「いえ、今のは仕方なかったので、大丈夫ですよ。ただ、公表はしたくないので、絶対お願いします」

「はい、徹底いたします」


 流石に情報漏洩はしないと思うけど、念押し。

 その後、カードを返してもらい振り込みを確認した山田さんにタブレットへのサインを求められ、サインをして終了。

 黒いケースごと魔石を受け取り、千葉上級ダンジョンのIDCを後にした。


 ちょっと攻略バレでヒヤッとしたけど、これで「テント」のアイテムが使えるぞ! 


 私はルンルンで帰宅の途に着いた。



お読みくださりありがとうございます。

そして、ブックマークしてくださった方大変嬉しいです!ありがとうございます!!

また夜更新予定ですので、宜しくおねがいします!

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