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アイテムが欲しい、ただそれだけ  作者: 秋海棠


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6/6

6.服を買った


「本当に宜しいんですか?」


「はい、買取お願いします」


 ミスリルを買取に出すと言った私の決意は固い。

 襲われるなんてたまったもんじゃない。

 レベル43がどの程度強いのかも分からないし、知らぬ間に上がってただけで実際自己防衛出来るかも分からないのだ。

 なんとか赤竜は体が動いて倒せたけど、ダンジョン外だとどうかわからない。

 スキルなるものもステータスに表示されていたけど、使い方なんてわからないんだからそんなの怖くてしょうがないでしょ。


「かしこまりました。ただ、オークションへ出品の場合、買取価格は落札価格が決まり次第お知らせとなりますが宜しいでしょうか?」


「問題ないです。後、これもお渡しします」


 そう言って私はミスリルが入った宝箱ごと藤井さんに差し出した。


「宝箱もですね。では、買取と褒賞金の手続きを致しましょう」


 藤井さんと鮫島さんがそれぞれノートPCに向かって入力をし始めたので、私は待機。


 しかし、ミスリルを手放すとしてもきっと大金を得る事には変わりないのよね?

 オークションだから前よりも落札額が下がる可能性だってある。

 だとしても、簡単に億は超えるはず。

 そんな大金持ってるって知られたらどうなる?

 家族や友達との関係は?

 知らない人に集られる?

 良く宝くじ当選で知らない親戚が増えるって聞くぐらいだし、私の周りもそうなるのだろうか?


 いやでも、何億か持っていたとしても、それよりもっと稼いでいる人は沢山いるわけで、その人たちの資産の足元にも及ばないだろう。

 それにこれからもっと沢山の人がダンジョンを攻略していけば私なんて霞むはず。

 そうだ、そうだ、きっとそうだ。

 もはや暗示するしかない。


「では佐藤さん、こちらの内容をご確認頂き、下にサインをお願いします」


 これまた現実逃避してたら藤井さんに声をかけられ、ミスリルの買取申込書(預り証)の内容を確認して電子サインをした。

 鮫島さんは褒賞金の申込をしてくれたので、そちらも確認し電子サインをする。


「申請はこれで完了です。おそらく一週間ほどで、PNカードに紐づけられた口座へ褒賞金が振り込まれるはずですのでご確認下さい。契約の内容もPNゲートのマイページにて確認できます」


「……わかりました」


「ポーションやテントも後日買取を希望されるようでしたら、ダンジョン課の者に伝えてもらえれば個室にて承りますので」


 今回私が手放したのはミスリルと宝箱。

 ポーションとテントは何があるか分からないから持っておきたい。

 もし襲われて怪我でもしたらポーションは大変役に立ってくれるだろうし。

 侵入者を許さないテントは防御面での安心材料だ。


「わかりました」


 そう言ってバックパックに出していたポーションを入れていると。


「そう言えば、茨城上級ダンジョン初攻略者ですからアイテムボックスも付与されているはずですがお使いにならないのですか? 液体はそちらに入れたほうが割れませんよ」


「アイテム、ボックス?」


「申し訳ない、その説明を失念していました」


 藤井さんに謝られるが、知らないことがなんなのかも分からない状態の私だ。

 いちいち聞いてしまって逆に申し訳ない。


 そのアイテムボックスとは、亜空間に物を収納できるスキルで、各ダンジョンの初攻略者にのみ与えられるんだとか。

 また、攻略するダンジョンの階級により取得できる内容が違う。

 だが一律で生物は収納出来ない。


・初級初攻略 収納可能枠500 (1枠1kgまで) 空間内時間経過通常

・中級初攻略 収納可能枠5,000 (1枠10キロまで) 空間内時間経過二分の一

・上級初攻略 収納可能枠50,000 (1枠1,000キロまで) 空間内時間経過二十分の一

・特級初攻略 不明


「……ハ、ハハハ、ハハハハハ、上級……」


 もはや、ファンタジーにも程があり過ぎてパンクである。

 キャパオーバー過ぎて笑える。


「アイテムボックスに関してIDCが検証しましたので間違いはないかと」


「いやなんかもう、どうしていいのやらです……ちなみにどうやって使えばいいんです?」


「収納したい物に触れてアイテムボックスへ収納と唱えるか思えば空間に収納されます。出したい時はアイテムボックスから出したいものを思い浮かべて取り出すと唱えるか思ってください。ステータスで収納リストを確認することも出来ます。この枠1つにつき1つ限界重量までしか収納出来ませんが、袋にまとめたりした場合はそれを1つとカウントするようです」


「はあ……収納、うわっ……ハハ」


 あまりな機能内容を聞きちょっと疑いながらも試してみたら、目の前のポーションが消えるもんだから驚く。

 もう本当笑うしかない。

 私に与えられたアイテムボックスの容量は5万枠あるみたいだから、取り敢えずポーション一個ずつとテント、槍、バックパック、汚物袋を全て収納した。

 とても身軽になった。


「では、オークションの日取りなど決まりましたら改めてご連絡差し上げます」


「はい、長時間ありがとうございました」


 二人と話し始めて二時間近く経つ。

 ちなみに部屋の時計だと今は午前3時50分、もうすぐ朝だ。

 人類の存続がかかっているので、基本ダンジョンは24時間開放すると決まっているそうだ。

 IDCもそれに習い24時間体制なんだと。

 いやはや大変だ。


 藤井さんはここで退室、私と鮫島さんが残った。


「鮫島さんもありがとうございました。ダンジョン出た時は……すいませんでした」


「いえ、スッキリされて良かったです。でも佐藤様、これからが大変だと思います」


「そう、ですよね……あの動画とか」


「ええ、IDCとしてもお名前は伏せますが、上級ダンジョン攻略は発表しなければなりません。ですので、あの場に居合わせた挑戦者がSNSに投稿した場合、特定されてしまうかもしれません。良いですか、佐藤様。上級ダンジョンを攻略された方はあなたで5人目です。それも全世界で」


「……全世界」


「まだ『神の声』から一年足らずですから。現在での上級ダンジョン攻略は異常なスピードなんですよ。魔王攻略に関しては長期化が想定され、今の私達の代ではとにかく土台を作っていくことが先決とされています。まだまだ様々な情報が不足している中での上級攻略は注目されないわけがありません!」


「ヒェ……でも、注目と言っても本当にただ運が良かっただけで」


「運も一つの要素です!」


 また鼻息が荒くなってきてるよ、鮫島さん。


「最悪だ……勝手に動画投稿も嫌ですけど、それ以上に注目されるのも嫌です。どうしよう……」


「ご自宅は知られている可能性がありますから、少し離れるも良いかもしれませんね」


「はぁ……とにかく一度自宅に帰ります。スマホも無いですし。ってまだ4時ですね、仮眠出来る場所ってこの近くにありますか? 出来れば着替えも購入できる所があれば教えてもらえると」


 鮫島さんにそう尋ねると、さっきのスーパー銭湯に仮眠出来る場所が併設されていて、朝10時になればここから徒歩5分ほどの所にある有名アパレルショップウミクロがオープンすると教えてもらった。


 お礼と取り敢えずスーパー銭湯に戻ると疲れ切った顔で言うと、「お気をつけて」と労いの言葉をもらい部屋を後にした。


 なんかこれまでの会話もそうだけど、神経がすり減るものしかなかった。

 足取りは重いが、なんとかスーパー銭湯に行くとカプセルホテルの一室を借りれた。

 ちなみに時間貸しだから、チェックアウト時間を気にしなくて良かったのはありがたい。

 眠るための布団セットしかないが、枕元にデジタル時計があり目覚ましもかけられる仕様だ。

 スマホが無いから困っていたけど、これもまたありがたい。


 ダンジョンで起きてから大した時間は経っていないけど、色々ありすぎて頭も体も疲れてとても眠たい。

 取り敢えず10時にセットして眠りについた。


♢ ♢ ♢


 ピピピピっという音で目が覚める。


「ふわぁぁ、もう10時か」


 あくびをしながら目覚ましを止める。

 寝るのに作務衣はちょうど良いけど、これで真冬の2月に茨城から千葉の自宅まで帰るのは現実的ではない。

 併設のサウナで温まってからダッシュで教えてもらったウミクロまで走ろうと心に決めサウナへ向かった。


 サウナで体も整ったので、受付の人にウミクロの場所を詳しく聞きスーパー銭湯を後にする。


 ウミクロへ小走りで向かっている間にコンビニを見つけ、急いでマスクだけ購入した。

 服も違うし、これである程度は誤魔化せるだろうと言う寸法だ。


 作務衣にマスクととても怪しい出立ちだが、午前中のウミクロはお客さんも少なく閑散としている。

 絶好の時間帯だ。

 スタッフの視線は気にせず上から下まで一式揃え、着て帰りますからとタグも外してもらった。

 ダウンジャケットまで購入したから、まあまあな金額がいってしまったが背に腹は変えられない。

 心も体も温まり、この格好であれば動画と紐付けてばれることは少ないのでは無いのかと安心する。

 着ていた作務衣とブーツはウミクロの袋にしまい手にしている。

 流石にここでアイテムボックスへ入れてしまったら不自然すぎるから。


 晴れやかな気分でウミクロを後にし、最寄りの駅まで向かおうとふと立ち止まる。

 スマホが無いから道が調べられない事を思い出す。

 今更だが、バックパックの中に無かったスマホは今どこにあるんだろうか。

 悪用されていないと良いななどと思考が外れてしまったが、自宅に帰るにもここから駅までの道も電車の乗り換えも調べられない。


 それならいっそレンタカーを借りるかと思いつく。

 レンタカーならナビもついてるし、家の近くのお店に返却できるレンタカー店もあった記憶がある。

 それに、何より周りの目を気にしなくていい。

 だが、近くにレンタカー店がすぐ見つかるわけもなく。

 さっき見つけたコンビニに舞い戻りレンタカー店を聞くと、まっすぐ行った先の大通りに出ればいくつかあると教えてもらう。

 ついでにお腹も空いたので肉まんと温かいお茶を買って外で食べた。


 程なく大通りにたどり着くと、見知ったレンタカー店がいくつか目についた。

 大手の店に入り、「PNカード」を提示し諸々説明を受け車を借りる。

 私の家の近くにも返却できる場所がある事に安心しつつ、カーナビをセット。

 高速専用カードが無いけど現金で払えば良いかと、有料道路ありきでナビ開始。

 運転はちょいちょいシェアカーを借りていたから問題ない、はずだ。

 どうやら1年ぶりらしいから少し不安だが。

 

 不安をよそに運転は順調、途中で携帯ショップを見つけたので、念の為自分のスマホが悪用されていないか確認に寄った。

 毎月の請求は今までと変わりない金額だったが、今スマホの電源が切れているためか位置情報を取得することはできないと言われた。

 しかし、最後に受信している位置情報は自宅近くって事だったから恐らく自宅にスマホがあるだろうと安心してショップを後にした。


 そしてまた車を走らせていると、先ほどまで音楽が流れていたラジオの番組がニュース番組に変わり、本日未明茨城上級ダンジョンが攻略されたと流れてきた。


お読みくださりありがとうございます。

次話は夜更新予定です。

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