表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイテムが欲しい、ただそれだけ  作者: 秋海棠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/6

5.アイテムが凄かった


 アイテムについて聞きたいと言う藤井さんの一言で、鮫島さんが懐から虫眼鏡のようなものを取り出した。


「それ何ですか?」


「これは常磐市第2初級ダンジョンの攻略で獲得できる鑑定アイテムで、ダンジョンアイテムのみどういった仕組みなのかなど鑑定できるものです」


「へぇ、すごい……」


 そんなものまであるのかと感心してしまう。

 そして膝の上に置いていた宝箱と、リュックの中から布とポーション9個を目の前の机の上に出した。

 ポーションは1つ飲んで体験しているからどんなものか分かるが、宝箱の中はまだ開けてないし、この布が何かもわからない。


「この瓶は上級ポーションって言ってた気がします。1つ飲んでしまったので全部で10本ありました。あとの2つはまだ開けてないのとわからなくて」


「上級ポーション……大変貴重なものですね。こちらの布は鮫島が。そして宝箱の中には恐らく……ぜひ開けてみてください」


 藤井さんがそう言って鮫島さんに布を渡したあと、私に宝箱の開封を促した。


「塊? 何でしょうこれ?」


 宝箱の蓋を開けると、中には水色のような緑色のような少し白みがかったような表現しにくい色の、長方形の塊が入っていた。

 金の延べ棒だったら良かったのになんて思ったけど、見た事もない塊なので、藤井さんへ宝箱の中身を向けて聞いてみた。

 その宝箱の中身を見た藤井さんは、目を見開き喉をごくりと鳴らした。


「やはり。これはミスリルですね。攻略された他の上級ダンジョンでもこれが出たと聞いていましたからもしやと思いましたが、茨城上級ダンジョンでも出ましたか」

 

「え、それゲームで出るような素材じゃ……」


「ええ、本当にゲームのようで「すごい!! このテントすごいですよ!!」ど、どうしたんだ。落ち着かないか」


 藤井さんの言葉を遮って布を鑑定していた鮫島さんが叫んだ。


「申し訳ありませんっ。この布はテント(上)と言われるアイテムでして、あまりに高性能で声が出てしまいました」


 鼻息の荒かった鮫島さんが申し訳なさそうに頭を下げる。

 それからこの布についても教えてもらったが、本当にとんでも無い性能だった。


 この布は「テント(上)」と言うアイテムで、この茨城上級ダンジョンを初回クリアすると手に入るものだそうだ。

 そしてなんとその機能とは、内部空間が拡張された持ち運びの出来る家らしい。

 布につけられた赤いボタンを押すと勝手にテントが組み上がる仕組みで、使用者登録する事で本人以外は使用できない上入室もできない。使用者が入室を許可した人は入れるし、間取りのリセットも譲渡も可能。

 そして、その間取りは使用者登録時に10室まで好きに決められ、カメラ付きインターホンまで完備。

 片付けも簡単で、外に出てファスナーに付いた赤いボタンを押すと自動で折り畳まれる。(室内に人がいる場合は折り畳み不可)


 なんだそれ。

 機能の詳細までわかる虫眼鏡も虫眼鏡だが、テントは意味がわからない。


「これ、ヤバくないですか?」


「はい! ヤバいってもんじゃ無いです!! 他のダンジョンで、「テント(小)」「テント(中)」は発見されていますが、(小)は1部屋、(中)は4部屋、どちらも入室の制限は出来ませんし、インターホンもありませんでした。ましてやリセットして部屋を変える機能など!!!」


 鮫島さん、また鼻息荒いよ。

 どうやら他のダンジョンで出たテントは一度部屋を決めたらそこから変更は出来ないらしい。使用者登録は同じくあるが、そこはリセットできて譲渡も可能だとか。

 やはり上級になるとスペックが何段階も上がるのだなと感心する。


「これは、高機能で済まされる物では無いですね。いかがされますか?」


「? 何がです?」


「ご自身でお使いになりますか? それとも買取に出されますか?」


 藤井さんが買取に出すかと聞いてきたが、どうやらダンジョンアイテムを挑戦者から買取、それを民間向けに販売すると言う事も行なっているそうだ。

 ただ、初めての品なので相場が無く、おそらくオークション形式になり、最低でも5,000万はくだらないだろうと。


「5,000万……ヒェ。 でも……買取が強制でないなら自分で使ってみたい、です」


 自分の家が手に入るのに手放す人はいるのだろうか?しかも持ち運びできる仕様とか、絶対自分で使いたい。


「わかりました。それではポーションとミスリルはいかがされますか? この宝箱だけでもご提出いただければ、上級ダンジョン攻略の証明となりますので、IDCより初回ボーナスとして50万ドルが支払われますよ」


「IDC? ご、50万、ドル?」


「失礼しました、IDCとはインターナショナルダンジョンコミッショナーいわゆる世界ダンジョン協会の略称でして__」


 今更だが、どうやら藤井さんと鮫島さんは県庁職員ではなく、IDC日本支部の職員らしい。

 県庁横に現れた上級ダンジョンの管理をするため、ダンジョン入り口を取り囲むように施設を作り、出張所としているんだと。

 ダンジョンは全世界各国に出現していて、初級・中級・上級・特級・魔王の5種類確認されている。

 魔王以外のダンジョンは主に役所や市民センター近くに現れ、初級は各町や村に1つ、中級は市区に1つ、上級は各都道府県に1つ、特級は国に1つと、それは日本だけでなく他国も同様。

 そこで世界基準を統一しようと他国や日本のゲーム会社、大手IT企業が初期から動き、国やら何やらと揉めに揉めたらしいが何とか早期にIDCを設立。

 日本も連携する形となり、ダンジョンが出現した各役所にIDC出張所が設けられた。

 ダンジョン法もそうだが、人類の存亡がかかっているからか、各国政府の対応も早かったらしい。

 それこそ日本は「PNカード」と紐づけて、⦅挑戦者⦆の入退場や税金関係などを管理している(まだまだ法整備は途中らしいが)。


 そしてIDCの基準は各国統一のためダンジョンを攻略した場合、宝箱と引き換えに褒賞金が与えられる。(各級1度まで)

 なんと、上級ダンジョンを攻落した場合の褒賞金は50万ドルなんだそうだ。

 ちなみに、その他の階級のダンジョン褒賞金は、


・初級攻略 1,000ドル

・中級攻略 10,000ドル

・上級攻略 50万ドル

・特級攻略 未確定


 各ダンジョンの初回クリア時に必ず宝箱が出るので、中身を抜いた空箱をIDCが回収し褒賞金を支払う仕組みなんだそうだ。

 宝箱の中身はそれぞれの階級で違い、


・初級 銀の延べ棒(1キロ)

・中級 金の延べ棒(500グラム)

・上級 ミスリルの延べ棒(1キロ)

・特級 不明


 特級ダンジョンは未だどの国も攻略に至っていないので、内容物は不明。 


 うん、頭が追いつかい。

 神の声を聞いてからまだ一年足らずでここまで組織が出来上がるのも、法律が制定されるのも異例だって事はわかるけど、適応できる人類も凄すぎないか?

 それもこれもこう言ったゲームや小説が沢山出ているから皆順応できるのか?


 話は聞いていたが、どこかふわふわして現実味を感じない。

 それにドルで言われてもよくわからん。

 ん? 今円って1ドル150円くらいだっけ?

 ……150×50万? え、7,500万? 

 やばくない?

 急に手が震えてるんですが?


「……怖っ」


「褒賞金額も高額ですが、佐藤さん。落ち着いて聞いてくださいね。この上級ポーションも高額で取引されている品です。今の相場ですと一本、10万ドル。そして、ミスリルに関してはこれまで上級ダンジョンの攻略自体が全世界数えても片手で収まる程ですし、ほぼ出回っていませんので買取に出した場合オークションとなります。前回開かれたオークションの落札価格は……350万ドルでした」


「……オウェ……、すみません、ありがとうございます」


「いえ、混乱されるのも仕方ありません」


 ミスリルというファンタジー素材のオークション落札価格に嘔吐いた私の背中を、隣に来て優しく摩ってくれた鮫島さん。

 ありがとうございます。


「でも、どうしましょうこれ。持ってるべきですかね? でも、持っていても何に使って良いのか……金みたいに資産として? うーん」


「そうですね、このミスリルという素材は様々なものに加工出来るそうですが、普通の素材ではない為、未だ加工出来る者がおりません」


「武器に加工した場合、頑丈かつ軽量で魔力の伝導率も良いので魔法を放つ際に威力を高めてくれるらしいんですけどね」


「え、加工出来る人がいないって何でわかるんですか?」


 藤井さんに続いて鮫島さんが素材の詳細を話しながら、すちゃっと虫眼鏡を掲げる。

 何でもクラス鍛治士の人がレベル60を越えなければミスリルの加工はできないらしい。


「レベル60って高いんですか?」


「そうですね、上級ダンジョンに挑む⦅挑戦者⦆の殆どはレベル60以上を推奨としています。魔王に挑もうとする⦅挑戦者⦆の殆どはクラスが剣士や闘士、魔術士などの戦闘職です。そんな戦闘職でもレベル60以上の者は世界合わせてもまだまだ少なく上級挑戦者と呼ばれています。鍛治士は一般的に生産職の為、あまり戦闘向きとされてはおりません。ですので、レベル60以上の者がまだ現れていないのです」


「知らない職業が沢山ある……え、上級ダンジョンのレベルって60以上が推奨なんですか……?」


「ええ。本来はお止めするべきなんですが、無理に入場する方もいますので」


 そう言いながら鮫島さんがチラッと私の方を見た。

 

 そう、私はさっき確認したステータスだとレベル43だった。

 記憶にないが、無理に入っただろう事は明白だ。


「記憶にないんですが、ご迷惑おかけしました」


「いえ……」


 ちょっと気まずい空気が流れてしまったが、藤井さんが咳払いをしてミスリルについて教えてくれた。


 一番初めにミスリルが確認されたのは、別大陸の小さな国で世界初の上級ダンジョン攻略時。

 他国にもダンジョンアイテムの詳細を知ることのできるアイテムが出る初級ダンジョンはあるので、それにより鑑定されてミスリルの詳細が分かるとともに鍛治士を選択する人が増えたが、未だレベル60以上の人は現れていない。

 ちなみにクラスは人生に一度好きなタイミングで選択でき、ダンジョンに挑むも挑まないもその人に委ねると神の声は言ったそうだ。


 話はそれたが、その初ミスリルが、先日350万ドルで落札されたんだとか。

 加工出来る人がまだいないとわかっていてもそれ程の価値がある素材。 

 仮に職人が既にいた場合、価格はもっと跳ね上がっていただろうとの事。

 350万ドルでも心臓がヒュってなったのにそれ以上って……ファンタジー素材の価値恐るべし。

 まあ、でもアートやら宝石やらもっと高いものあるしなぁなんて、ちょっと現実逃避気味に呆けてしまう。


「まだ発見されて間もない鉱石です。今後上級を攻略される方が増えたなら値は下がるかもしれませんね。今のうちにオークション出品を検討されるのはアリかと!!」


「……」


「藤井課長、どうされました?」 

 

 ふんすっとまた鼻息荒く言う鮫島さんが、難しい顔をして黙ったままの藤井さんに尋ねる。


「そうですね、先月岡山上級ダンジョンを攻略した⦅挑戦者⦆の方もその時は買取に出していないと言う情報はありましたが……」


「あ、さっき国内2例目って言ってましたね」


「はい。ですが、先日その⦅挑戦者⦆の方が襲撃に遭われたと言う事件もありまして。ああ、ご心配なさらず。犯人はその⦅挑戦者⦆によって捕えられておりますし、その方は無傷ですよ」


「そ、それは良かったですが、襲撃って……」


「その方は、有名なダンジョン配信者でもありまして、上級ダンジョン攻略もリアルタイム配信されていました。オークションの出品情報もIDCから発出されていなかった為、ミスリル所持が明らかとなり襲われたようで」


「……」


 いや、ダンジョン内電波入るんかよってツッコミを忘れるくらい衝撃。

 ミスリル持ってたら襲われるんかの方が勝つ。


「そして、誠に申し上げずらいのですが……佐藤さんは世間的に有名であると思います」


「……はい?」


「先ほど佐藤さんがいらっしゃる前に鮫島より伺いましたが、あなたが戦闘されている姿を他の⦅挑戦者⦆がどうやら動画を撮り、SNSサイトへ投稿しているそうなんです」


「一年以上記憶がないって事ですし、動画の感じから無許可なのは明らかですけど、結構拡散されてます実際」


 と言って、今まで閉じていた鮫島さんのノートPCが開かれ、私に画面が向けられる。

 そこには、顔にモザイクのかかった女性が一心不乱に槍を突き出しモンスターと戦闘している姿が映っていた。しかも、次から次へと休むことなく戦い続けて、戦闘後動画撮影者が声を掛けても一切応答しない姿まで。


 動画のコメント欄には、この女性を近くで見たとか友人であるとか知人であるとかの書き込みがされており、そこから辿って私であるなどと特定しようとするものまである。


 そして、動画はこれ一つではなく、たまたま同じダンジョンに潜っていた人たちが気付いていくつも上げている始末。

 どうやら挑戦者界隈では無姫(ムキ)と言う通り名で呼ばれているとコメント欄に記載されていた。


「……」


 もうね、何これって感じよ。

 ってか超こわい。

 何がって、確かに私が着ていたデニムとトレーナー、装備?なんだよ。

 なんで私の意思とは関係なく動いてるの?

 きっと同じ装備の人だ、そうだ、知らん人だ。


 そんな現実逃避が許されていない私は、犯罪者にでもなったのだろうか?

 何故身元まで晒される程話題になってしまったのか、映像を見てもちっともわからない。

 それでも、さっき宝箱を持ってダンジョンから出てきたのを見ていた人がいたなら、攻略が広まるのも時間の問題かもしれない。


「買取に出します」


 襲われるくらいなら手放す。


今日の更新はこの話で以上です。明日また更新予定です。お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ