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アイテムが欲しい、ただそれだけ  作者: 秋海棠


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4/8

4.聞いた

 「……こんなに時間がかかるとは」


 持っていた槍は受付の人に預かってもらい、バックパックや宝箱は更衣室のロッカーへ入れて浴場へ入った。

 それから一時間半。体の汚れを落とすだけで一時間もかかってしまった。いくら汚れを落としてもずっと体が気持ち悪い状態が続いて肌も頭皮もヒリヒリしている。

 髪の毛なんて最悪だったが、ここでは言うまい。


 そうしてもう一つ冷静になって驚いた事は、髪の毛が異様に伸びている事。

 記憶では肩までのボブだったのだが結んでいたゴムを解くと、20センチ近くは伸びてるのではないだろうか。ちょっと伸び過ぎだ。

 怖い現実が頭を過ぎっているけど、鏡に映る私の顔は然程変わっていないように思う。


 長い髪を乾かし、更衣室で購入した下着と作務衣に着替える。元々着ていた諸々は好意でもらった大きなビニール袋に入れた。もちろん袋の口はきつく閉めた。


 受付に預けていた槍を受け取る時、受付の男性がビックリした顔をしていたのは何故だろう? 

 そんなに変わったかな? 

 入浴前は見るのも嫌だったし、一刻も早く入りたかったので自分のひどい状態は見ていない。

 まあ、スッキリしたから良いでしょう、眉毛はないままだけど。


 入浴施設から出て庁舎に向かうが、作務衣だけではとてもじゃないが寒い。

 今が何月何日かわからないけど、真冬であることは間違いない程だ。

 特にコートらしきものも持っていないから、湯冷めしてしまうななどと思いながら小走りで庁舎内にある総合窓口へ向かった。


 受付で名前を告げ鮫島さんを呼んでもらうように伝え暫くして、三階の応接室Aに向かうよう伝えられ、一人向かう。

 エレベーターを三階で降り、フロアマップを見て応接室Aの前に着きノックをすると、「どうぞ」と声が返ってきたので失礼しますと部屋に入る。


 中はまあまあ広く、黒の一人がけのソファが机を挟んで三つずつ並んでいる。

 そこには鮫島さんともう一人中年の男性がいた。


「佐藤様、お待ちしておりました。こちらダンジョン課の藤井も同席する事をご了承下さい」

「藤井と申します。よろしくお願いいたします」


 藤井さんの挨拶を受け、着席を促され、鮫島さんがお茶を出してくれた。


「それでは、ダンジョン攻略のお話をお伺いしても宜しいでしょうか?」


 そう藤井さんが話を始めたが、私は攻略という認識がない。

 そもそもダンジョンに自ら入った記憶すらないのだ。


「その、その前に聞きたいことが山ほどありまして、私の質問からいいでしょうか?」

「ええ、どうぞ」

「では、まず……今日は何年何月何日ですか?」

「はい? えーと、大和12年2月21日ですが」

「大和12年!?」

「「??」」


 私の記憶している日から1年以上経ってる……。


「大和12年……1年以上経ってるとか……」

「佐藤様? 大丈夫ですか?」


 あまりの衝撃に、鮫島さんからの心配の声に反応出来ない。

 髪の毛の伸び具合で薄々は感じていたが、1年以上とは思わなかった。


「え、って事は私もう32って事!? 待って! その間何してたの!?」

「さ、佐藤様落ち着いて下さい! どうなさったのですか?」

「私が聞きたいんですっ!!」

「ッ!!」

「起きたら一気に1年以上もスキップしてるって何なの!?」


 もうパニックである。赤竜遭遇並の。


「佐藤さん、落ち着いて下さい。ゆっくりお話を整理してみましょう」


 取り乱す私に藤井さんが冷静な声で語りかける。


「……すみません」

「どうぞ、お飲み下さい」


 勧められてお茶を一口飲めば、少し冷静になれた。

 取り乱した事に謝罪をし、去年の元旦から記憶がない事、気づいたらダンジョンの中にいてボスの赤竜を倒した事を話した。


「……」

「今までに聞いた事の無い例ですね……恐れ入りますがPNカードをお借りできますか?」


 一通り話し終え、鮫島さんは絶句し、藤井さんは冷静に「PNカード」の提示を求めてきた。私がカードを渡すと、ノートパソコンに繋いで何か確認を始める。


「そうですね、お住まいは千葉県で間違い無いでしょうか?」

「はい、何故このダンジョンに入っているかもわからないです」

「ふむ、記録によると、この一年定期的にダンジョンへの入退場が確認出来ます。主に千葉県と茨城県の初級・中級の記録ですね。どのダンジョンでも初回クリアの報告はなしと。今回が上級ダンジョン初入場のようです」

「え、え……全く記憶にない」

「今のお話からすると、『神の声』をお聞きにはなっていない?」

「『神の声』?」

「では、ステータスは?」

「ステータス……? うわっ!」


【名前】       佐藤 月姫

【クラス】      槍術士 Lv.43

【HP】        3,030/3,130

【MP】        1,050/1,252

【武器】       白金の槍

【スキル】      一閃突き・薙ぎ払う・五月雨

【エクストラスキル】 アイテムボックス(上)

【EXP】       501 / 2,116,999

【残存EXP】     7,080,837

【残存ライフ】    3


 「ステータス」と言ったら、目の前に半透明のモニターが浮かび上がった。そこにはゲームのような表記が並んでいて、私の名前が一番上に書かれている。


「どうやら初めてみるようですね。今、目の前に出ているものがあなたのステータス情報です。順を追って説明しましょう」


 いきなり目の前に映し出された情報に見入っていると、藤井さんが聞きたかったことを教えてくれた。

 

 事の始まりは大和11年1月1日、日本時間午前9時、私もうっすら記憶にある、耳元で聞こえた大音量の【【やあ、人類諸君!】】という声からだった。

 声の主はこの世界の管理者であると名乗り、全人類へ同時に語りかけていていると言い、続けて恐ろしい事を言った。


【【人類は凡そ500年後に絶滅するよ!】】と。

 

 絶滅の原因は色々あるが、巨大隕石の落下によるものが大きく、500年後技術がいくら進んでいたとしても絶滅は回避できないと。


 だが、特に近年目覚ましい発展を遂げ、多くの娯楽を生み出してきた人類に敬意を表して、生き残るための手段を提供するから是非ともクリアしてもらいたいと。

 その手段とは、南極に置いた魔王を倒すこと。


 魔王とは、この管理者が別の世界から連れてきたものらしいが、もちろん簡単に倒せる相手ではない。

 今の人類では何億人が束になっても倒すことは出来ない。

 そこで、これより人類にレベル制を導入し、ダンジョンを各地に設置するのでレベルを上げて魔王へ挑み、倒せた暁には衝突予定の隕石を消してあげると。

 

 話を聞きながらなんのこっちゃと思った。

 南極におる魔王ってなんぞ?

 500年後の人類滅亡って、確実に私生きてないし現実味が一切無いぞ。

 

 私が話を理解出来ていないだろうと察した藤井さんは「信じられませんよね」と乾いた笑いをした。


「ただ、この『神の声』の後、各地にダンジョンが出現したんですよ、本当に」


「いや、まあ、確かに私もさっきまでダンジョンにいたみたいですけど……」


 確かにこの話を聞く前から、衝撃的な体験をしていた。

 だけど、神の声って、管理者て。

 

「その後も『神の声』は魔王へ挑むルールや、ダンジョンのルール、ダンジョンから出るアイテム、ステータスについてなどを一方的に話していきました。そこで語られなかったことは自分たちで解明していけと」


「ルール……」


「はい。このルールがまたひどくゲーム的と言いますか、なんとも難易度の高いものでして……」


 ・魔王への挑戦はレベルが99となった者のみ一生に一度挑め、魔王と挑戦者のみ1対1の戦いとする

 ・敗れても死ぬことは無いが、二度と挑む事はできない

 ・外からの介入を許さない為、戦いが始まってから決着がつくまで誰も手出しは出来ない

 ・もしも魔王に勝つ者が出たならば、絶滅の要因となる隕石を消滅させ、勝った者には3つの願いを聞き入れる

 

  ダンジョンルールも、魔王ルールと似た様なものだった。

 ・ダンジョン内モンスターとの戦闘は全て単独(1対1)

 ・同時にダンジョンへの入場は出来るが、戦闘が始まったら他者の介入は出来ない

 ・自身のレベルを上げるには、ダンジョンで戦闘をし勝利による経験値の取得以外にない

 ・ダンジョン外で戦闘をしても経験値は一切得られない

 ・ダンジョン内の戦闘で敗れた場合死ぬ事はないが、ダンジョン外へ放出される

 ・敗戦が許されるのは二度まで

 ・敗戦はステータスに刻まれライフの数が0になると二度とダンジョンへは入場出来なくなり、ステータス没収となる

 ・ダンジョン内での人対人の戦闘やダンジョン外でのスキルを用いた犯罪もステータス没収の対象となる

 ・自身のレベルや経験値、残存ライフなどは「ステータス」で確認ができる


 大まかなルールはこんな感じ。


「……何が何やら」


「そうですよね、ダンジョンというもの自体私も知らず、当初は戸惑いました」


「でも、もう1年以上前の事なんですよね?」


「ええ。今ではダンジョン法も制定されましたし、ダンジョンでレベルを上げ、魔王へ挑もうとする者たちを総称して《挑戦者》と呼んでいます」

 

「ダンジョン法……《挑戦者》……」


「はい、ダンジョン法は入場の年齢制限や、ダンジョンで得た力を用いての不正や違法・犯罪行為に対するものが主ですね。それにダンジョンでは貴重なアイテムが手に入りますので、今ではそちらで生計を立てる者も出てきています」


「アイテム……あ」


 そう言って自分が持っている宝箱やバックパックの中身を思い出した。


 ダンジョン内の戦闘で得られるものは経験値のみ。

 普通のゲームだと大概モンスターなどを倒すと経験値と共に稀にアイテムが得られたりするが、管理者は経験値のみしか設定しなかったんだそうだ。


 では、どこでどのようにアイテムが得られるのかというと、ダンジョン最下層にいるボスを倒しダンジョンを攻略するか、不規則に現れるダンジョン内ショップにて自身の経験値と引き換えに購入するかの二択。

 

「じゃあ、これはやっぱり私がダンジョンを攻略したって事なんですね……」


「そうなりますね。国内の上級ダンジョン攻略はこれが二例目となるので詳しくお聞きしたいのですが」


「いや、攻略したと言えるのか……」


「セーフティエリアから直接ボスモンスターへの挑戦ですが、最下層のボスモンスター赤竜を倒したのですから攻略と言えますよ。何れにしろ、赤竜に関してお伺い出来ますか?」


 そう、私が押してしまったあの赤い矢印ボタンは、セーフティエリアというダンジョン内の休憩所に設置された、各階層をすっ飛ばし直接ボスモンスターに挑戦する為のボタンだった。

 だからあの時セーフティエリアで会った男の人達は声をあげていたのかなんて思いながら、赤竜との戦闘を分かる範囲で二人に伝えた。

 話しながらよく無事だったな私と今更思う。


「最後の槍が貫通した場所が赤竜の急所、逆鱗にでも当たったのでしょう。とても貴重な話を伺えました」


「佐藤様はかなり運が良いですね」


「運が良いのか悪いのか……何とか生きながらえました。あ、負けても死にはしないんでしたね」


 竜の逆鱗って急所なんだなとPCに情報を入力している藤井さんの言葉に驚き、鮫島さんの運が良いに同意したいけど複雑な気持ちになる。


「では次に獲得アイテムについてお伺いできますか?」


 藤井さんの言葉に鮫島さんが懐から虫眼鏡のようなものを取り出した。



誤字脱字がありましたら申し訳ございません。

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