24.やはり優秀だった
次のレベルまでまだまだと認識して、明日は朝イチでボスに挑もうと決めた。
初級での戦闘もきっと十分だ。
次のダンジョンは弟と中級に挑んでみようと思う。
一人だとやはり不安があるから。
戦闘は一対一だから結局は一人で戦うことにはなるのだけど、後ろに控えてくれてると思うと安心感がある。
ダンジョン常識を知らない私にとってはとても頼りになる弟だ。
色々情報も調べてきてくれるから、自分の情報とも照らし合わせられてより心強い。
だから皆チームやグループを組むんだなと納得した。
弟もまた土日を使ってレベルを上げると言っていたから、あれから少しは上がっているのかもしれない。
このダンジョンを攻略したらお願いしてみようと考えながら、お風呂に入った。
極楽だ。
♢ ♢ ♢
朝八時。
平日だからボス待ちはいなかったようで、セーフティエリアから直結のボスボタンを押したら、直様足元に穴が空いて落下を開始した。
ボスボタンからのボス戦は慣れたもので、着地も完璧だ。
この空間も千葉市第三初級ダンジョンとほぼ同じ作り。
【鳥取第二初級ダンジョン最下層へヨウコソ】
【ボスモンスターガ出現シマス】
【戦闘態勢ヲ整エテクダサイ】
聞いたことのあるアナウンスが響く。
暫くして中央あたりでモンスターの叫び声が聞こえるが、今回は前回のホブゴブリンより大きく、人型ツリーのモンスターだ。
名前はツリーマンだとどっかのSNSで見た。そのまんまだ。
これまたSNSで除草剤の効果があると書いてあったからダッシュして近くに寄り、シュッと吹きかける。
なんか、ギャーって言ってグネグネしている。
そして、竹型モンスターみたいに萎れてきた。
でもまだ目らしきところはギラギラしてるからやる気満々だろう。
長い腕をしならせて攻撃してくるけどそれをステップで躱し切りつけていく。
数回切りつけると膝をついたので、その隙をついて首辺りをスパッと薙ぎ払うとツリーマンは消えていった。
まだ五分もかかっていない気がする……慣れてきたという事だろう。
【最下層ボス・ツリーマンヲ撃破シマシタ】
【鳥取第二初級ダンジョン初回クリア報酬、銀ト可動掃除機ヲ獲得シマシタ】
【鳥取第二初級ダンジョン通常クリア報酬、ポーション(初)ヲ五本獲得シマシタ】
これまた前回同様アナウンスが流れ、アイテムボックスに獲得品を仕舞っていると、すぐ後に【間モ無ク出口へ転送シマス】と続いた。
あっという間にボス戦が終了し、出口から出て、受付で退場手続きをする。
その間、顔のニヤけを我慢するのに必死だった。
「可動掃除機」が手に入ったのだ!
早く触りたくてしょうがない衝動を必死に抑えていた。
退場手続き完了後、一応弟に鳥取市第二初級ダンジョンをクリアして、「可動掃除機」を手に入れたと報告した。
ついでに獲得した銀の延棒はどうしたのかも聞き、今度中級ダンジョンに付き合ってくれないかとも打診しておいた。
まだ仕事中だろうから昼にでも返信が来るだろう。
着替えている時に、そうだ必要間石を調べておかないとと思い、「鑑定鏡」で鑑定をする。
【可動掃除機】
【自立型掃除機。水拭き可。収集ゴミ自動消去。空気清浄機能付】
【必要魔石:水・風・光・闇 各(小)1点】
素晴らしい!
自立型だから恐らく障害物とかも避けて掃除してくれるだろうし、集まったゴミも自動で消去してくれるとは。
しかも空気清浄機能までついているとは思わなかった。掃除しながら空気まで綺麗にしてくれる……最高じゃん。
でも、ゴミの自動消去は気をつけないと。どこまでのものをゴミと認識するかわからないけど、アクセサリーとか落として収集されてしまったら、最悪自動消去だ。
下にものを落とさないよう極力気をつけよう。
必要魔石もわかったので、着替え後IDCカウンターで魔石の購入も済ませた。
「可動掃除機」を早く使いたくて、役所から一番近いテントの張れる場所を探す。
しかし、私の探し方が下手だからか、なかなか予約なしで当日OKな場所を見つけられない。
翌日以降の予約なら出来るサイトが多かった。ダメもとで電話してみたが当日は全て場所が埋まってしまっているとかで結局予約はできなかった。キャンプは人気なんだろう。
大人しく、近くのビジネスホテルの予約をとり、チェックイン時間まで我慢することに。
もう一度ダンジョンに入り、セーフティエリアでテントを張ろうかとも思ったが、既に着替えて退場手続きまでしてしまった後だ。面倒くさかった。
そうだ、チェックイン時間まで観光をしよう。
有名な砂丘もあるし、博物館も神社もある。調べていると行ってみたいところが沢山。
もしかしたら意外に時間が足りないかも。
ネットで検索すると、いくつか半日で廻れる観光ルートもあったのでそれを元に行ってみることにした。
まずはまだ朝なので散歩がてら有名砂丘へ。
ありきたりな表現かも知れないが、まるで日本ではないような、海と砂浜との風景がとても幻想的だった。
さらさらとした砂浜は少し足を取られて歩きにくいが、のんびりと歩くには良い。
歩き疲れて座り、海を見ながらぼーっとしていると、とても癒される。
少し肌寒いけど、天気のいい今のこの景色を見れるなら我慢できる。
そんなぼーっとした時間を過ごしていると、昼間近になったので、近くのお店でランチをすることにした。
とてもいい時間だった。
ランチの海鮮丼も美味しかったし、その後に行った博物館もいろいろな展示がされていて面白かった。
近くの神社では可愛いお守りも購入。
気づいたら、予約したビジネスホテルのチェックイン開始時間を過ぎているではないか。
半日だが、今回も満喫した。
夜の砂丘も綺麗なんだろうなと思いながらも、「可動掃除機」の魅力には抗えず、ビジネスホテルに向かった。
ビジネスホテルにチェックインし、早速部屋に行き、「テント」を出す。
「テント」のリビングに行き、アイテムボックスから「可動掃除機」を出す。
形は丸くて、某ロボット型掃除機に似ている。
下に置き、早速魔石をセット。
上部に着いた丸いボタンを押すと【使用者を登録しました。固定位置を決めてください】と初めてのことを言われた。
固定位置とは?
わからないからIDCの森田さんにトークアプリで連絡をしてみた。
すると電話がかかってきた。
「はい、佐藤です」
『IDCの森田です。トークアプリよりも電話が早いと思いまして、今お電話大丈夫ですか?』
「はい、ありがとうございます。急に聞いてしまって」
『いえ、大丈夫ですよ。「可動掃除機」ですが、初めに所定の位置を決める仕組みのようです。あらかた掃除が終わったら戻る場所のようですね。ですので、邪魔にならない箇所に置き、もう一度上のボタンを押せば良いそうですよ』
「へえ……ここで良いか」
ハンズフリーに電話を切り替え、ここで良いかとリビングの端に置いてボタンを押した。
『位置決めが済めばあとは自動で稼働するようですよ』
「あ、動きました!ありがとうございます」
『正常に稼働したならば何よりです。あ、そうでした。鳥取市第二初級ダンジョンのご報告もありがとうございます。確認いたしました』
「いえ、他の所属の方にもお会いしましたから、私より細かく報告があると思います」
『複数の方からの情報が大事ですから。今後も引き続きよろしくお願いいたします』
「あ、はい……」
『では、失礼いたします』と電話は切れた。
真面目な方だ森田さん。
電話をしながらも自然に動いている「可動掃除機」。
とても静かで、気づかず蹴ってしまいそうだ。
足元には気をつける事と、物を落とさないことを意識しなければと誓う。
「可動掃除機」で少し検証したら、段差三センチは越えられなかったが、二センチまではいけたので、リビングのカーペットは平気そうだ。
そもそもの大きさ10センチくらいだから、ソファの下は入れずダメだけど、それ以外は掃除できそうで安心。
ソファの足が短いからその下は自力で掃除しよう。
リビングダイニング、キッチンが終わったら廊下に向かっていったので、トイレ以外の部屋の扉は開けておいた。
ちょっと玄関の段差が心配だったが、センサーがあるのかそれより先には進まず、玄関に落ちることはなかった。
優秀すぎるよ「可動掃除機」くん。
ゆっくり動く「可動掃除機」を見ていたら、何時間か経っていたことに驚いた。
そして、弟の返信に気づくのに遅れたら、電話がかかってきて「可動掃除機」を羨ましがっていた。
銀の延棒のことも聞いてみたら、毎回獲得した時にIDCに買取してもらっているそうだ。
何か作りたいものがあるならとっておくのも良いけど、売ってもいいんじゃない?と。
確かに今二つあるが、今のところ何かに加工する予定はない。
今度IDC統括本部に行ったら買取に出そうと思った。
そして、明日実家に戻る予定であると伝えたら、『俺もいく』と食い気味に言われ、来週の土日に中級ダンジョンへ挑戦することも決まった。




