23.【レンタル屋】に出会った
朝六時。しっかり今日は早起きをした。
早く戦闘になれ、経験値を多く稼げる中級ダンジョンにも行きたい。
少しずつ階層を上げていけば強くなっていくモンスター。
今の私のレベルであれば問題ないだろうが、心と体の同期がまだ完全ではないのだ。
ゆっくりではあるが、徐々に慣れてきているので、中級にはいきたいが焦らずやっていこうと思う。
それでは、本日のダンジョン挑戦開始だ。
植物系と虫系が多く出ると聞いていたこのダンジョン。
虫系には殺虫剤を撒いてみたけど、畑フィールドのモンスターにはまだ除草剤は確かめていない。
なんだか食べ物に除草剤は……と思ってしまって。
そもそもモンスターなのだから気にする必要はないのに何故か躊躇う。
とにかくまずは七階層のウサギを倒しながら進んだ。
そして、八階層。
やはり畑フィールドである。
次に現れたのは長芋型モンスターだった。
粘着性の強い液を出し、足止めされたのは焦ったが、落ち着けばなんてことはない。こちらの動きが一瞬止まってしまうが、脱出はすぐ可能で、細切れにしてやった。
アイテムとしてドロップして食べられないのが本当に残念だ。
ここでも、除草剤は使えずじまい。
次の九階層はまた草原フィールド。
ここでは大きな蝶が出てきた。痺れ毒っぽい何かを撒き散らしたけど、殺虫剤で弱らせて一刀両断。
痺れ毒は少しピリピリして、動きを鈍くする感じであるが、こちらも問題なく動けた。
しかし、初級ダンジョンのモンスターだから毒が弱いだけであって、中級以上の毒持ちモンスターになったらきっと動きが鈍くなる程度では済まない。
そんな時に役に立つのが毒消ポーションだ。
だけど私は持っていない。
それこそIDCで購入するか、どこかのダンジョンクリア報酬で手に入れるかだ。
IDCで購入できるのに購入を忘れていた私は、何が準備万端だと自分でツッコミを入れたぐらいだ。
このダンジョンの通常クリア報酬は初級のポーション。
次に挑戦するダンジョンの通常クリア報酬は、魔力回復ポーションか解毒ポーションの出るダンジョンがいいかもしれない。
ま、今ないものはしょうがない、痺れもすぐに治ったし、次だ次。
十階層は何と森だった。
畑からの脱出である。
モンスターも竹型モンスター。
これは漸く除草剤の出番かと撒いてみると、なんかイヤイヤと横に揺れてしなりだした。
むしろ攻撃が強くなってないか!?とビックリするほどにブンブン全身を揺らす。
しかし、しばらく待っているとその動きも弱まって萎れてきた。
今だ!と薙ぎ払っていく。
ちょっとヒヤッとした戦闘だったから、この階層で除草剤を使うのはやめようと感じた。
これは一応IDC所属の《挑戦者》専用アプリで記録しておいた。
このアプリのすごいところだが、現在の位置と合わせメモとして記録を残しておくことが出来る。
そして十一階層の草原は変わりない。
ここではキツネ型のモンスターが出たけど、全然キツネみたいな大きさではない。
オオカミくらいの大きさはありそうだ。
なかなか俊敏だったが、これも躱せる。まだまだスピードは対応できそうだ。
中級ボスモンスター挑戦レベルが50と聞いた時の自信喪失が少し取り戻されてきた。
だが、まだ初級で喜んでいてはダメだと感じた。
十二階層も森フィールド。
今度は植物でなく、蜂型のモンスターだった。フクロウぐらいの大きさの。
大きいだろうってツッコミはもうやめている。
蜂型モンスターも数で一気に押されたら危ないけど、ダンジョン内の戦闘は全て一対一。
負けることはないが、次から次に出てくるから戦いの切れ目を見つけるのが大変だった。
一瞬の隙をついてめちゃくちゃ走ってこの階層を抜けた。
でも、経験値はたくさん稼げたと思う。
十三階層も変わらず草原。
ここでは少し休憩のため、セーフティエリアに立ち寄る。
草原の一部がドーム上に覆われているセーフティエリア。遠くから見てもわかりやすい。
ここでは初めて【レンタル屋】に出会った。
立て看板に『トイレ一回300円』と書かれている。
そして利用する人が思った以上に多い。
へえ、なんて思っていたら、一人の《挑戦者》がその【レンタル屋】の店主に自分のスマホを見せて、登録は済んでいるのかと聞いていた。
【レンタル屋】店主も、もちろん登録済みだと返答しPNカードをその《挑戦者》に提示していた。
そして、《挑戦者》はスマホにそのPNカードをかざし、確認できたと返していた。
これはあれだ、IDC所属の《挑戦者》の抜き打ち検査だとようやく気づいた。
私だってそのやり方をレクチャーされているのに、恥ずかしい話、初めての【レンタル屋】に興奮して忘れていたのだ。
初めてIDC所属の《挑戦者》を見かけたので、意を決して話しかけてみることにした。
「突然すみません、私もIDC所属の《挑戦者》の佐藤と申します」
と、セーフティエリアで休んでいたその男性の《挑戦者》にアプリの証明画面を見せて声をかけた。
所属《挑戦者》専用アプリには名前と顔写真、所属であるIDCのマークが書かれているページがあり、それが証明となる。
「ご丁寧に、敷田です。どうしました?」
「いえ、ごめんなさい、ダンジョン内で初めてIDC所属の方をお見かけしたので。まだ所属になって日が浅いもので、先ほどの勉強になりました」
「ああ、抜き打ちですね。今回はこのダンジョンの再調査と【レンタル屋】の取り締まりを依頼されてたんですよ」
「へえ、そんな依頼もあるんですね」
どうやらSNS情報の審議と合わせて【レンタル屋】の調査も依頼されたらしい。
SNSの審議とは除草剤や殺虫剤の効果。一応そう言った情報があるとIDCが検証に入るそうだ。
私は知らずうちに効果を確かめていたようだ。
依頼は受けていないが、アプリメモに残しておいてよかった。役に立つかは別として。
敷田さんから色々聞いているといい時間になったので、ありがとうございましたとお礼を言ってセーフティエリアを後にした。
連絡先を聞かれそうな雰囲気に一瞬なったが、うまくかわしてその場から逃げた。
あまり今以上に連絡先は増やしたくないし、わからないことはIDCの担当森田さんに聞けばいいやと思ってしまったのだ。
話しかけておいてとても失礼だったかもしれないが、申し訳ない……
セーフティエリアから出て、もぐら型のモンスターが襲ってくる。
姿は見えないが、ドドドドっと下から近づいてくる音を感じることはでき、飛び出してきたところを倒す。
この階層も早足で進んでいった。
十四階層では薔薇型モンスター、トゲトゲが少し当たって痛かったが、まだまだ対応できる。初級ポーションが活躍した。
十五階層ではカマキリ型モンスター、なかなか鎌が鋭く素早いモンスターだった。背中についた羽で飛ぶことも出来るが、そこまで早くなかった。
十六階層に到達した時点で20時近くになってしまった。
なので、今日はここまでとした。
途中休憩を挟みながら進んではいるが、やはり疲れは溜まる。
森フィールドでもセーフティエリアはドームで覆われている。
ダンジョンに泊まる組はそこまで多くないのか、人数はまばら。
ここでも【レンタル屋】が一件出ていたが、敷田さんが声をかけていた【レンタル屋】だったので、私はスルー。
自分の「テント」に入り、手洗いうがい、全ての装備を外してソファにもたれかかる。
アイテムボックスからお茶を出し、ゆっくり飲んだ。
「はあ、テントの中はやはり落ち着く」
少しボーッとしてから、今の私のステータスを確認した。
今回ダンジョンに入ってから、確認していなかったし、今日でどのくらい経験値を稼げたのか気になって。
【名前】 佐藤 月姫
【クラス】 槍術士 Lv.43
【HP】 2,960/3,130
【MP】 1,178/1,252
【武器】 白金の槍
【スキル】 一閃突き・薙ぎ払う・五月雨
【エクストラスキル】 アイテムボックス(上)
【EXP】 21,741/ 2,116,999
【残存EXP】 7,102,077
【残存ライフ】 3
「え……全然経験値貯まってないな……次のレベルまでが遠い」
次のレベルまでまだまだ全然届かなそうだった。
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