表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイテムが欲しい、ただそれだけ  作者: 秋海棠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/8

2.逃げて戦った?

ボワンっと変な気の抜けるような音がして、何か柔らかいものの上でバウンドして私は地面に着地した。

 

 急に床が抜け真っ黒な空間を落下し始め、ああ、人生これで終わりかと何だか妙に冷静になり、目を閉じ走馬灯を見る準備をしていたら柔らかいものの上に落ちたもんだから、慌てて態勢も崩れて怪我するなと思ったのに綺麗に着地できた。


 うん、なぜ出来た?

 自分のポテンシャルが恐ろしい。

 いやいや、ポテンシャルで片付けられる感じじゃ無いんだけど、私の身体能力どうした?

 

 数秒自分に驚いていたが、それよりも何よりもこの落ちてきてしまった場所はどこなのか。外に出る場所はあるのかを探さなければと周囲を見渡すと、とてつもなく広い空間に自分がいることに気づく。

 天井まではどのくらいの高さがあるのか正直わからないくらいだし、それは左右にいたっても同じだ。

 〇〇ドームで表すのも難しいが強いて言えば5個分以上の広さはあるんじゃないだろうか、わからんけど。


 そして見える範囲には出口らしきものがない。

 そもそもここから反対側の壁がどうなってるかなど見えないほど遠い。


「……なんかゲームのボス部屋っぽいけど。取り敢えず一周するべきか」


 そんな独り言の直後、


【茨城上級ダンジョン最下層ヘヨウコソ】

【後五分デボスモンスターガ出現シマス】

【戦闘態勢ヲ整エテクダサイ】


「ボスっ!? このっ、フラグめっ!!!」


 まさかの秒でフラグ回収とは。


 待て待て待て!

 フラグの事なんて今はどうでも良くて、本気でここにモンスターが出るの!?


「えぇぇ、なんか戦闘体制どうのって言ってたけど、どうしたら良いのよ?」


 そんなアタフタしかしてなかったら、


【ボスモンスター出現マデ1分デス】

【戦闘態勢ヲ整エテクダサイ】


「ど、え、どう、え!? 取り敢えず槍?」


 何とか隣に転がってた槍だけはもったが、またまたパニック状態の私を置いて事態は急変する。


 空間の中央とおもしき場所がビカッっと激しく光り、私の視界を奪うと同時に、


『GYUAAAAAAAAAAAAAA!!!!!』


 と、とてつもない咆哮が空間を支配した。


 ビリビリと凄まじい咆哮が私を襲い体が固まる。ヒュッと、一瞬息も止まった。

 咆哮はまだ続いているが何とか息を吐き、呼吸を整えると視覚も戻ってきた。

 だが視覚が戻らなければ良かったと心底思う光景がそこには広がっていた。


 十階建のビルくらいはありそうな巨体。全身が赤く光った鱗で覆われ、顎を上に向けてあげた咆哮は凄まじく、大きな口から放たれている。そこから見える牙は何でも噛み砕いてしまいそうなほど鋭く見え、私が持っている槍なんて目じゃない。

 二足歩行なのか前足は上げられており、牙同様鋭く大きな爪が見えている。そして、背中にある広げられた大きな羽はその巨体をより大きく見せている。


 どう見ても赤い竜だ。目の前にゲームのグラフィックなんて生ぬるい竜がいる。人生で「腰が抜ける」なんて経験したことがなかったが、今まさに経験している。脚が震えて言う事を聞かない。


 目の前の赤竜の咆哮が徐々に小さくなっていき、上げていた顎が下がってくるのがスローモーションに見えた。

 そして目の前の赤竜と目があった時、死んだ。そう思った。竜の口元が笑ったように見えたからだ。

 

 竜は私に向かって口を大きく開けると、口の中に赤いモヤのようなものが溜まっていくのが見てとれた。

 何かを私に向かって吐き出そうとしているようにしか見えない。

 直ぐ放たれるわけでもないから逃げれば良いものを、私は現在腰が抜けて動けない状況だ。死んだと思うだろう。


 そんな時、手の力が抜け持っていた槍が私に倒れてきた。


「い、イッタぁぁぁぁ!!!」


 倒れた槍の柄が私の太ももを直撃しめちゃくちゃ痛いと思ったら、さっきまでの恐怖が和らぎ足が動く。慌てて槍を持ち、今の場所から急いで離れた直後、竜から赤い何かが吐き出され、それは地面を抉りながら私が先程までいた場所を丸焦げにした。


「っ!?」


 間一髪。本当に髪先が焦げただけで済んだ。

 さっきまでいた場所は広範囲にわたり焦げている。


 いやしかし、なぜ焦げなかった私。

 焦げの範囲が広すぎるんだが?

 普段の運動不足な脚力でなんて到底移動できる距離と速さではない。

 どうしたんだ私の脚力。

 さっきの着地もそうだけど、火事場の何とやらで済ませられるレベルじゃないぞ。


 竜からの攻撃を躱した事に自分でもビックリしているけど、まさか躱されると思っていなかっただろう竜も目を見開いてビックリしているみたいだ。

 見開かれた目はどんどん吊り上がっていき、怒らせてしまったことは一目見てわかった。


「いや、怒られても……私の方が怒りたいわ!!!」


 私の言葉など無視し、怒った竜は大きな羽をはためかせホバリングし始める。

 そして鋭利な爪がある前足を私に向かって振り下ろすと、そこから斬撃みたいなものが出て勢い良く私に向かって来た。

 

 その攻撃の向きや角度が何となくわかり軽やかなステップで自然とそれを躱す。


「え、なんで躱せるの?」


 その後も竜の攻撃は止まない。

 素早く近くに飛んできて長い尻尾で攻撃を仕掛けてきたり、直接爪での攻撃や数十の赤い球を投げつけてきたり。

 その全てを躱わす、躱わす、躱わす、とにかく躱して逃げる。


 いや、何故逃げられるんだ私は。


 一度でも竜の攻撃が当たってしまったら即死亡。

 息が上がってきているけど、何とかまだ攻撃を躱せている。

 でもそれも長くは続かない。そろそろ足と体力がヤバいと気づき始めている。


 そしてまた竜が私へ向かって赤い何かを吐こうとしたので、当たらないよう今度は竜の足元に向かった時、これまでの竜の攻撃でズタズタに抉られていた地面の亀裂に足を取られ、前につんのめる体勢になってしまった。


 走っていたスピードもスピードの為、このまま前に転んだら大怪我をするのは必至。

 小学生の時に習った受け身を活かせないかと思った時、持っていた槍が手からすっぽ抜けた。槍投げのような感じになってしまい、そのまま受け身を取るも体に激しい痛みと衝撃が走る。


 ああ、死んだなと痛む体そのまま倒れていると、それ以上の痛みが襲ってこない事に気づく。


『GUUU……』


 頭上から呻き声が聞こえたので、痛む体を押してうつ伏せだった状態を仰向けにすると、赤竜が私の上に倒れ込もうとしていた。これまたスローモーションで迫ってくる。痛みで立ち上がる事など出来ずその光景を見ていることしか出来ないけど、ふと私が手を滑らせて放ってしまった槍が竜の喉元あたりに刺さっているのが見えた。


 ああ、一矢報いることが出来て良かったと目を閉じた。


 ……


「……ん?」


【最下層ボス・赤竜ヲ撃破シマシタ】

【茨城上級ダンジョン初攻略ニツキ、アイテムボックス(上)ヲ付与シマシタ】

【茨城上級ダンジョン初回クリア報酬、ミスリルトテント(上)ヲ獲得シマシタ】

【茨城上級ダンジョン通常クリア報酬、ポーション(上)ヲ十本獲得シマシタ】


「っ!?」


 いつまで経っても赤竜の巨体に押し潰される痛みがなく、その代わり機械的な音声が流れてビックリする。


「ダンジョンクリア? っ!?」


 機械的な音声が茨城上級ダンジョン云々と言い終えた後、私の体と私の横の何かが光った。


 光が収まると、私の横には所謂ゲームで見るような宝箱が出現していた。


「体が光ったし、いきなり宝箱って。しかも私が赤竜を倒したの? 嘘でしょ」


 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ