11.アイテムを検索した
「テント」を出して中を見てもらってたら、話がゴチャゴチャしてきてカオス化しそうだったから、一度実家のリビングへ戻りお昼を食べながら落ち着いて話そうとなった。
昼は母が昨日から仕込んでいたおでんとおにぎり。
しみしみおでんで和みながらも、「テント」の中の話題に戻る。
「姉ちゃん、まじあの一部屋俺専用でお願い!」
「いや、あんた自分の部屋あるでしょうが。ここも借りてる部屋も」
「借りてるところは解約する。だから一緒にダンジョン周ろう!」
「は? 何であんたと行くことになるのよ。1人で行くわよ。戦闘も1対1なんでしょ?」
弟曰く、戦闘は1対1でしか出来ないけど、結構パーティを組んで入場しているらしい。
ダンジョンの事で弟から新たに得た情報は、
・各階への転移装置はない
・戦闘中は不可だが、「離脱したい」や「脱出したい」など叫ぶと外に出してもらえる。(例外としボス部屋に入ったら脱出は不可能)
・ダンジョンはどこも1階から20階まで
・階が上がれば上がるほどモンスターは強くなり、獲得経験値も高くなる
クラスは回復職とか色々あるそうで、戦闘中は無理だが、戦闘が終わったら怪我の治療をしてもらうんだと。
回復職も戦闘はできるけど、モンスター回避薬なるものも存在するそうで、後方待機している場合もある。
ポーションなどもダンジョン内ショップで手に入るが、ランダム出現でどこに出るかわからない上、購入は獲得した経験値でしかできない為、買えば買うほど経験値がなくなりレベルが下がるんだと。
一階から最下層まで全ての階を攻略するとなると泊まり込みは必須で、大荷物になることからパーティを組んで分担して挑むのが普通らしい。
パーティの誰かが負けて外にポイっとされたら皆一度外に出るのが今は主流だとか。
戦闘では経験値しか得られないのに報酬とかどうするんだろうなと思ったけど、それはパーティによってまちまちなんだとか。
戦闘職がダンジョンショップで品物を交換したりで支払うとか。攻略後山分けだとか。
うーん、私には向かなそうだ。
「でも、出たいって叫べば出れたんだ……IDCさんたちそこは言ってなかったような……」
「当たり前すぎていうの忘れたとか?」
本来は⦅挑戦者⦆の資格をPNカードに紐づけた時点でダンジョンの諸々説明があるそうだが、この前IDCの二人から聞いた話にはなかった。
ただ、あの二人も自身が管理している上級ダンジョンが攻略されたので少なからず動揺や興奮があり、細かいところを伝え漏れたとしても仕方がないか。
今度講習を受けるか、嫌だが弟と一度ダンジョンに入って手解きを受けるかの二択だな。
「じゃあ、来週末一緒に初級ダンジョンに行ってくれる? あ、でも同行は一回でいいから仕事は辞めないでね。部屋もあげないし」
「ええー……(上級攻略しかないか……)」
「陽太、お前変な事考えているだろう。月姫はたまたま運が良かっただけだ。そんな生半可な気持ちならすぐそのライフオーバーとやらになるぞ」
父が弟の思考を読んだのかピシャリと一言。
それには母も私もウンウンと頷いて同感だ。
「ってか、あんたレベルいくつなのよ?」
「……25」
「25ってダンジョンで言うとどのあたりを普通回るの?」
「……初級」
「あんたも初級じゃない!」
「うるさいなぁ、土日とか休みの日にしか行けないんだから仕方ないだろう!」
「まあいいや、来週の土日はお願いするね」
「二人とも初級? ってそんなに危なくはないの? 怪我だけは気をつけなさいよ。もし治らないような傷なんてつけて帰ってきたら……いいわね?」
「「……はい」」
母の有無を言わさないような圧がすごかったので、とりあえず弟と了承する。
「あ、月姫あんたよっちゃんとどっちーとさっちゃんに謝っときなさいよ!お母さん経由で連絡してもらっちゃたから」
「うん、来月会う予定だし、もう連絡して謝った」
「もう、本当に色々な方に迷惑かけたんだから」
「はい、すみません……」
母にお小言をいただきながら、弟にステータスの事も聞いてみた。
弟はクラス剣士でレベル25、HPはMAX397・MPは159、装備は白銀の剣でスキルはスラッシュと連撃。
残存経験値は8万くらい。
私の現在のステータスはこれだ。
【名前】 佐藤 月姫
【クラス】 槍術士 Lv.43
【HP】 3,130/3,130
【MP】 1,252/1,252
【武器】 白金の槍
【スキル】 一閃突き・薙ぎ払う・五月雨
【エクストラスキル】 アイテムボックス(上)
【EXP】 501 / 2,116,999
【残存EXP】 7,080,837
【残存ライフ】 3
レベル差はあまりないように感じたけど、数値で見ると結構差があるのだと実感。
低いうちはレベルが上がりやすいけど、高くなればなるほど必要経験値も高くなるのは必然か。
それにしてもHPとMP10倍近く違うのには驚きである。
他のクラスがどのくらいか知りたいなら、IDC公式HPで大まかなステータス数値は公開されているから見てみたらと弟談。
ついでに初級のダンジョンなら、ほぼ全てのダンジョンが一度は攻略されているからどんなアイテムが出るか調べられるよと言う。
それを早く言って欲しかった。
早速弟と目ぼしいアイテムを探していく。
しかし、公式HPにもその他SNSの情報にも、エアコンなるアイテム獲得の情報は今のところない。
ただ、冷暖両用のタワーファンは新潟の燕三条中級ダンジョンの攻略アイテムであるらしいと見つけた。
なんでも、出る風の温度も風量も自由自在だし、加湿・除湿・空気清浄機能・自動洗浄までついているとか。
もはや我が家のエアコンより高性能では?と思ってしまう。
ただし、アイテムに必要な魔石が多いからなんとも言えないらしいが。
ちなみに必要なのは、風の魔石(小)10、水・火・闇それぞれ小の魔石を1つだから、維持費を考えて意外に手放す人もいるとか。
公式HPでのお値段はなんと……52万円。
本当、高性能なエアコンと大体同じくらいの値段。
アイテム買取額はもう少し下がるだろうが、通常の家で暮らしているならばコンセントがあるし、売って新しいエアコンを買った方がいいと考えにもなる。
手放すという考えにも納得がいく値段だ。
でも私はそんなアイテムが欲しい。
まだ貯金はあるから魔石の金額入れても買えるな……何台か。
IDCから報奨金も入るし……攻略は後回しにして、1台は買うか!
エアコンほど重くもなさそうだし、一旦は1台にして、自分の実力がわかったら攻略に挑んでみてもいい。
そうだ、そうしよう!
「よし、明日これ買いに新潟行ってくるわ。あとで在庫を問い合わせてみるけど、あったら早速行ってくる!」
「いいなぁ。俺も欲しい。姉ちゃん金あるなら俺のも……」
「あんたテントの一室もらえると思ってない? あげないってば。それに欲しいなら自分で買え」
「ちぇっ」なんて28歳の大人の弟に言われても何も可愛くない。
なんだか私のテントに住む気満々な香りがする発言だったから、住まわせる気はないからねと念を押しておく。
弟のことはさておき、念の為在庫があるかどうか確認しておかなければ無駄足になってしまう。
在庫がないからとすぐ中級ダンジョンに挑もうなんて思いはさらさら無い。
なので、電話してみると現在2台であれば在庫があるとのことだった。
2台も在庫があるとは思わなかった。
2台とも欲しいが、流石に先日200万以上も散財したばかりだ。
ここは1台で我慢すべきだろう。
そこで取置きができるのか聞いてみたが、それはIDC一律で行なっていないと言う回答だった。
先着順ってことね。急がねば。お礼を言って電話を切ったら、
「じゃ、もう帰って明日に備えるわ」
「あると分かったら行動早いな!明日予定なければついて行ったのに……」
「え、泊まっていかないの?」
弟はそんな私に呆れた目線を送ってくるが欲しいものは欲しいのだ。
それが先着順ならば急ぐしか無いだろう。
それに予定がなかったらついてくる気だったのか。
母にも欲しいアイテムが売ってたから、今日は泊まらず明日新潟に行ってくると告げると弟と同じ呆れた目をされた。
そんな二人の目線を気にすることなく帰宅の準備をして、弟と来週土曜の朝九時から初級ダンジョンに挑む事を決め、実家を出た。
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