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9 疑う事も大事です


ジェイドはアイラと別れた後、外壁門近くの厩舎に向かった。

預けてあった馬を引き取り街道に出てオルコット領を目指す。

ここからオルコット領都迄は馬で3日程かかる。

馬で適度に駆けながら先ほどの出来事を回想する。


宿を引き払い、オルコット領に向かえば二度と会う事が無いであろう

おおらかで明るく親切な女性。

初めて見た時、勇者と同じ黒髪、瞳を持っている事に意識を向けた。

少女とも思える見た目に反して成人しているという。

手助けしてもらい会話するうちに

掛け合いが心地よく最初と違う好奇心の様なものを感じた。

送り届けて貰った詰め所で、ここで別れてしまえば

また会う事ができるだろうかと

自分でも驚くぐらい再会の為の手を打ったが、引き際も心得ている。

それに自分には大事な使命がある。


思った通り広い王都で再会する事なく街を発つ日がやってきた。

厩舎を目指していると、市場の肉屋の軒に吊るした薫製肉を買う

彼女が目に留まった。

暫く遠目に見ていたが彼女と目が合いこちらに気付く。

運命なんて信じていなかったがもう少し話がしてみたい。

食事に誘うと今回はあっさり受けてくれた。


俺の知る女性達はしゃれた店で、流行などの話をしながら

周りを気にして堅苦しい食事をする。

面倒そうで親しくなりたいと思ったことは無い。

彼女は庶民というには品があり、貴族というには砕けた性格をしている。

実際食事に誘ってみて今まで出会った事の無いタイプの女性だった。


何故か心残りを感じるが、楽しい昼のひと時が終わり今度こそお別れだ。

出来る事なら彼女が興味を持ったオルコット領を訪れてほしい。

そうすれば再会するチャンスがほんの少しだけ増える。

そんな一縷の望みを抱いて王都を後にした。




ジェイドさんを見送ってその足で宿に戻って思い出した。

ガラス製の小物を買ってコンタクトを作ってみようと思っていたのに・・・

でもよく考えるとコンタクトなんて使ったことが無いから知識もない。

装着だって不安しかない。

瞳の色を変えるのはあきらめた方がよさそうだ。

暫くはアイラのままで行動しよう。

取りあえず王都を出てどこに向かおうか。


ジェイドさんから聞いた話でも

オルコット領はこの国の中では一見の価値がある領地の様だ。

異世界での初めての移動が一人旅というのは不安しかない。

取りあえずオルコット領方面への護衛の依頼でも探してみよう。


道中、寝食を共にするなら、女性冒険者を募っている依頼があれば都合が良い。

思い立ったが吉日、まだ日も高いのでギルドへ向かう事にした。


ギルドのクエスト掲示板で適当な依頼が無いか探していく。

オルコット領か隣接するハドソン領、または手前の領地の名前で探して行く。

すると一枚の依頼書が目に留まった。


急募

『オルコット領シグ街までの護衛

内容  移動中の馬車及び宿での女商人の護衛兼身の回りの世話』

 ※ 女性冒険者に限る


カウンターに移動し受付で詳しい内容を確認した。


「シグ街に拠点を置くシグルス商会会長の孫娘スーザンさんが

定期的に王都の支店に視察にやってくるのですが、いつも同行している

侍女兼護衛の方が急な流行り病で寝込んでしまったので

急遽、帰りの道中の護衛を冒険者に依頼したいとの事です。」

「見ず知らずの冒険者で大丈夫なんですか?」

「その点は大丈夫かと・・・。

商会で正規に雇っている二名のベテラン男性の護衛が常時同行しています。

男性では目の届かない間の簡単な護衛と道中の話し相手や

世話係として女性の同行者が欲しいそうです。」


「この依頼私で大丈夫なら受けたいのですが。」

「護衛としては男性二人が同行していますから

募集要項にはランクの指定は有りません。

ただ、明日の朝出発という事ですが大丈夫ですか?」

「はい。先方さえよければお願いします。」


という事で急遽明日、王都を発つことが決まった。

幸運な事に移動は馬車で宿に宿泊する事になるので

心配していたテントや布団は当面準備する必要ないようだ。


何とか王都を離れる目途が立ったと安堵していたが

ふと、もし帰還できる方法が分かった場合、

連絡が取れなくなった私はどうなる?という考えが頭に浮かんだ。

やばい。一先ず逃げ出すという事に気を取られ過ぎて

帰還についての思考がすっかり抜け落ちていた。


召喚されてすぐに聞いた情報では帰還についての記述さえ

見つかっていないと言っていたが、進展は有ったのだろうか。

私以外の三人は召喚に関わった人達と常に連絡が取れているのだろうか。

それとも一旦落ち着いて生活しているという事で

放っておかれている可能性もある。


最初から不信感しか抱いていないが、

王都を出る前にもう少し事情を探っておいた方が良い気がする。

危険はあるが取りあえず使い慣れてきた隠蔽魔法で

召喚された神殿に潜り込んでみよう。

隠蔽が解けた時の言い訳が立つようにミズキのメイクを施し

いつものようにローブを纏い気配を探って宿を出た。


通い慣れた王城への道に出て城門付近まで人混みに紛れながら進んでいく。

夕方近くという事もあり肌寒く、ローブ姿の人も多い。

急ぎ足で帰宅する人が多く、他人に気を取られる人は少ないようだ。

城門で出てくる人の流れに逆らって、

ミズキの時に支給された入城許可証をぱっと見せ

「忘れ物をしてしまって。」

と言って敷地に入った。

敷地内に入る勤め人の数は膨大で、門兵もいちいち名前と顔なんて

覚えていないから外門でのチェックはかなり甘い。

取りあえず許可証を見せるだけで、

よほどの事が無い限り引き止められることは無い。


奥に進み適当な物陰で隠蔽魔法を発動して神殿を目指す。

神殿の祭壇の間のさらに奥へ進むと扉が並ぶ廊下へと出た。

召喚された後、今後の細かい話を聞いた応接室近くにある階段の陰に隠れて

息を潜め人の気配を探る。


どれ位経ったろうか。辺りが暗くなり始めた頃、

正面の入り口が静かに開いて二人の人物が入ってきた。

手に何か持っているのは確か神殿長。もう一人は魔術師団のジェフリーだ。

気付かれないよう、もう一度隠蔽魔法の発動を確認して

目前を通り過ぎる二人の後をつけて行く。


応接室のさらに奥の扉を神殿長が開き、ジェフリー魔術師を中へと招き入れる。

慌てて私も後を追って部屋に滑り込んだ。


「ん?!」

「いかがされた?神殿長?」

「いや、どこか窓でも開いておるのか風が通って行った気がしたのだが。」

「肌寒いのはその所為か・・・」

「ふむ。風邪などひかぬよう気を付けねばなるまい。」

「明日は大事な召喚の儀。熱など出しては笑い話にもできんからな。」


ええっ、今『召喚の儀』って言った?!


「それにしてもまさか成功するとは思わなかったが

否定的だった者たちまで結果を目にした途端、国王様に

『もっと優秀な異世界人を召喚するべきだ』などと進言するとは・・・」

「召喚に使われる魔力量は半端ではないが、今は時世も安定しており戦力用の魔力過多と言えるからのう。あと2.3回は召喚できそうじゃ。」

「平和な時世のうちに優秀な人材を揃えておくのも

国家の将来の為となりますからな。」


「この古文書も大した物よの。最初はダンジョンに捨てられた紛い物かとも思ったが・・・まさか本物の勇者の遺産とは誰も思わなかったじゃろうて。」


「200年前とは言え隣国で盗まれた文献らしいという事で

王はあまり乗り気ではない様子で有るから、明日になって尻込みされないとも限らない。今日、古文書を拝借してきて正解であろう。」

「そうですな。この保管庫に入れておけば明日の朝一番に召喚の儀が行えます。

召喚が済んでしまえば誰も文句は言えないであろう?」

「勇者の卵を沢山囲っておけば情勢に何か変化が起こっても

我が国は安泰ですからの。」

「おっしゃる通りです。」


そんな会話をしばらく続けた後、二人は保管庫に古文書をそっと隠して?

出て行った。

私は腸が煮えくり返るのと同時に落胆した。

ちょっとでもあいつ等を信用しようとした自分バカだった。

召喚した事を反省して帰還について調べるどころか

さらに犠牲者を増やす気満々じゃないか!!


保管庫に近づくと手をかざす。中の古文書をイメージして・・・

いや待てよ、中身全部とイメージして

『収納』

と念じた。

そのまま気配を探りながら扉をそっと開け城門から外に出る。

物陰を見つけ隠蔽を解いてアイラに戻り宿へと帰った。



お正月、忙しかった方も

そうでもなかった方も

あけましておめでとうございます。


今年も( `・∀・´)ノヨロシク

お願いします。

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