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4 冒険者


森の中に見えてきたログハウス調の建物を目指して進んでいくと

他にもちらほらと人影が増えてくる。


建物の正面玄関の裏側はぐるっと木製の塀で囲まれている。

露天風呂になってるのかなあ、ワクワク感がとまらない。

期待に胸膨らませ玄関口から建物に入った。

まだ昼前にもかかわらず、フロントは結構賑わっている。


受付に向かうとお姉さんが「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。


「入浴料はおいくらですか?」

「10歳以上の未成年はお一人鉄貨3枚です」

「17歳ですが・・・」

「失礼しました…成人はお一人鉄貨5枚です。」


ちなみにこの国の成人は16歳だ。

背は高いけど黒目、黒髪の所為もあって顔は童顔に見えるらしい。

図書館で調べたら、海に浮かぶ島国の民族が黒い瞳に黒髪。

そこそこ大きな国で100年前位から海を渡って移住した人も結構いるとの事だ。


料金を払って女湯の扉に向かった。

話に聞いていた通り女湯は貸し切り状態のようだ。


この国の貨幣は金属製で、最小単位は半鉄貨。価値は日本円で約20円くらい。

四角い硬貨の真ん中に穴が開いている。

半鉄貨が5枚で鉄貨(約100円)。こちらは穴が無い。


鉄貨10枚で穴開きの半銅貨(約1,000円)、半銅貨2枚で銅貨(2,000円)。

銅貨10枚で銀貨(20,000円)、銀貨10枚で金貨(200,000円)、

金貨10枚で白金貨(2,000,000円)。


鉄貨以外は円形だが大きさが違う。

慣れるまではちょっとややこしい。でも普段は銅貨までしか出番は無いだろう。

庶民の私としては宿代を纏めて払ったときくらいだ。


誰にも気兼ねすることなく、脱衣所で服を脱ぎ洗い場で汚れを落とす。

男として生活してきたので風呂に入るのは6日ぶりだ。

浄化魔法は使えるが、気分的に水で拭かないと落ち着かない。

今日まで部屋で濡れた布で拭いて凌いできた。


思った通り露天風呂がある。それも情緒ある岩風呂だ。

少し硫黄のにおいがして温泉感が増す。

久しぶりにゆったりとした時間を過ごす・・・

寝てしまいそう。


のぼせる前に後ろ髪を引かれながら湯から上がる。

毎日でも来たい気分。

コーヒー牛乳なんて売ってないかな、なんて思ったりしながら

濡れた体を拭いていると見慣れた痣が目についた。


右の二の腕にある小さな十字架にも見えるその痣は

普段はあまり目立たない薄いピンクだけど

熱を出した時には青紫になって結構目立つ。

今は温泉で温まったせいかちょっと赤くなっている。


身なりを整え風魔法で髪の毛を乾かし来た時と同じように纏めておく。

そのままロビーで一息入れる。


「良いお湯でした。ありがとう」

受付のお姉さんに声を掛けて施設を後にする。


マップを広げる為に来た道と違う道を進む。

しばらく行くと遠くで誰かを呼ぶような声がする。

声の方に近づいて行くと聞き覚えのある声だった。


「誰かいないか。動けなくて困っている。助けてほしい。」


今日は確か森に魔物討伐に行くと言っていた。

声のする方へ近づいて行くと、やはり見知った人物だった。

私だとは気づかないだろう。性別も年齢も髪色も違うのだから。


「大丈夫ですか、どうされました?」

「よかった。誰にも気づかれなかったらどうしようかと思った。

魔物と交戦中に足を踏み外してこの崖から滑落したんだ。

骨折はしてないと思うが右足首を捻ってしまって

支え無しでは動けなくて途方にくれていた。

誰か呼んできて貰えないだろうか。」


足首が腫れて痛々しい。

見上げれば藪に隠れているが3メートルほどの崖なっている。


「こう見えても力は有りますし、身長も有るから私で良かったら

王都か温泉まで支えてご一緒しますよ。」

「それはありがたいが、大丈夫か?」

「一応試してみてダメな様なら人を呼びに行きますよ。

試してみるだけなら大して時間もかからないし、

無理はしませんから。」

「じゃあ、よろしく頼む。ああ、俺はC級冒険者のジェイドだ。」

「私は冒険者になりたてのアイラです。

じゃあ支えますので立ってみてください。」


身体強化をして体を支えて立ち上がらせる。


「肩に腕を回して…大丈夫そうですか?歩けそうですか?」

「ああ。何とかなりそうだが、重くは無いか?」

「私は大丈夫です。じゃあ一応城壁門目指しますね。」


温泉施設の方が近いが、怪我を診てもらうには街に戻った方が後の手間も省けるだろう。


「世話を掛けるがよろしく頼む。」

「疲れたら言ってください。休み休み行きましょう。」

歩きながら世間話をする。


「アイラは冒険者になりたてと言ったが、今日は森での仕事だったのか?」

「薬草採取ついでに温泉に・・・あれ、温泉ついでに薬草採取だったかな?」

「なんだ、その気楽さ。女性に年齢聞くのは失礼かもしれないが

いくつなんだ?まだ成人前じゃないのか?」

「温泉の受付でも勘違いされましたけど、ちゃんと成人してますよ。」

「そうなのか?黒目、黒髪が珍しい所為か若く見えるな。」

「自分でもそう思います」

彫りも浅い日本人は幼くみられることが多いらしい。


「んー、どこかで会ったか?珍しい特徴だから

一度会ったら忘れないと思うんだが・・・」

「ええ~、覚えないです。街中で見かけたんじゃないですか」

「それだって忘れないと思うぞ。」

「新手のナンパですか?ここへ置いて帰りますよ。」

ちょっと話しなれてきたので冗談も混ぜてみる。


「いやいや、それは困る。ナンパはしてみたいが、そんなんじゃないよ。」

半分本気に聞こえちゃったかな。


「そういうジェイドさんはいくつなんですか?」

「俺は先月25歳になったな。」

25歳と聞いて去年パパになった同じ年の上の兄を思い出した。


「ふふ、意外とおじさん・・・」

「いやいや、まだおじさんは無いだろ。せめてお兄さんと言ってくれ。」

「んー、微妙」


「で、いくつなんだ?」

「忘れてませんでしたか。しつこいのは嫌われますよ。

来月18歳になります。内緒ですよ。」

「誰に内緒なのか分からないが・・・意外とお姉さんだな。」

去年叔母さんになったけどね・・・


「おじさんには言われたくないですね。」

「だから、お兄さんだ!」

「ふふ、考えときます。」

「何を?・・・」


「で、こんなところで何の魔物と交戦したんですか?

結構強い魔物ですか?」

「いきなりビッグボアが飛び出してきて追い詰められた。

この辺りでは滅多にお目にかからない魔物だ。」

「そうなんですか。私も気をつけます。」

「ああ。用心してくれ。」


そっと探索魔法であたりを探る。

大丈夫、大きな気配は感じない。

「おや、何か魔法を使ったか?」

「!・・・身体強化魔法を・・・」

「そうか、疲れたのならどこかで休むか?」

「大丈夫です。念の為ですしまだ疲れてません。」


驚いた。この人、魔力を察知するんだ。

ホントにC級冒険者?

魔力を漏らさない様に気をつけないといけない。

鑑定魔法なんて使ったら怪しまれそうだ。


でもビッグボアの奇襲に驚いて足場を誤るなんて

ちょっと抜けてる面もあるのかも・・・

思わず笑みがこぼれた。


「何か可笑しかったか?」

「いいえ、ちょっと思い出し笑い」

「何か楽しい事があったのか?」

「初対面の人には内緒です。」

「気になる・・・」


「城壁が見えてきましたね。何とかなりそうで良かったです。」

「ああ。初対面ですっかり世話になってしまったな。

そのうちお礼をさせてもらうよ。」

うん。律儀で真面目な人だ。


「いいえ、お気になさらず。私も何時

誰の世話になるか分からないし、お互い様ですよ。」


そういう事で門兵さんに引き継いで別れる。

「本当に礼は良いのか?俺の気が済まないんだが。」

「ええ。さっきも言った通り私もお世話になるかもしれないので

その時はよろしくお願いします。」

「せめて滞在先だけでも教えてくれないか?」

「ナンパには応じませんよ。じゃお大事に。」

「ああ、世話になった。ありがとう。」


別れてギルドを目指す。

「薬草採取してきましたので引き取りをお願いします。」

予め取り出しておいた薬草とギルドカードを提出する。


「お預かりしますね。結構な量ありますね。」

「あちこち歩き回りました。でも珍しい物は少なかったです。

あと、女性でも安心な宿を教えて頂きたいです。一週間ほど滞在する予定です。」

「それなら大通りに面した双葉館がお勧めです。」

「周りが賑やかなのはちょっと・・・もう少し静かな所は無いですか?」

「では、通りを一つ入った小さな広場横の道草亭が良いと思います。」

「ありがとうございます。そこに行ってみます。」


「お待たせしました。こちら買い取り料とギルドカードをお返しします。」

「わあ、初報酬です。嬉しいな。ありがとうございました。」

銀貨もあってそこそこの収入だ。


ギルドから出て道草亭を目指す。

路地に入ると広場の向こうに看板が見えた。

用意しておいたフード付きのローブを纏って宿に入る。


「こんにちは。宿泊をお願いします。」

「いらっしゃいませ。お一人ですか?」

私より少し年下らしい女の子が対応してくれる。

「はい。食事なしでとりあえず一週間ほどお願いできますか。」

「素泊まりですね。分かりました。前払いで銀貨1枚と半銅貨1枚です。

食事希望の場合前日に言ってください。朝夕2食で半銅貨1枚です。」

「ありがとう。とりあえず素泊まり7日分です。

あと、仕事が不定期なので昼間寝てたりするんで

掃除してほしい時はこちらからお願いして良いですか。」

「はい。手の空いている時なら言って頂いた時に掃除に入ります。

宿帳に名前と職業の記入をお願いします。」


「・・・アイラさんですね。じゃあお部屋へご案内しますね。」


廊下の奥へ進んでいく。両側に客室がある。

「今空いているのはこの部屋と2階に一部屋ありますがどうされます?

うちでは女性単身の方はなるべく一階、

それ以外の方は二階をご案内してます。」

「そうなんですね。安心して過ごせるのでこの部屋で良いです。」

「洗面台とトイレは共同ですが、お湯が欲しい時は

鉄貨3枚でお部屋までお持ちします。」

「分りました。」

「じゃあこちらがカギになります。

念のために貴重品は持ち歩いてくださいね。」

「気をつけます。ありがとう。」


部屋に入り鍵をかける。

服を着替えていつものメイクをする。

他の宿泊客の出入りが増える前にローブを纏い

探査魔法で宿内の人の動きを探る。

廊下やロビーに誰もいない事を確かめ素早く部屋を出て鍵をかける。

認識阻害魔法を使いロビーから外に出た。

慣れない事にドキドキが止まらない。


歩きながら人通りの少ない路地で魔法を解き

ローブをしまって下宿を目指す。

下宿に入るとロビーに面したダイニングに数人の人が集まって

椅子に座ったジェイドさんを囲んでいるのが見えた。



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