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30 再びオルコットへ


ダンジョンから出た二人はそのままオルコットへ向かう事にした。

ジェイドが世話になったオルコットの人々に報告と謝意を伝え

一刻も早くギリニス王国に帰りたいと考えたからだ。


一日目の野営でもアイラの様子は以前と違って沈みがちだ。

次の日になってもどこか上の空な事が多い。

野営場所で夕食を摂った後、ついにジェイドは焦燥感に苛まれ

横に座って焚火をぼんやりと眺めているアイラに話しかけた。


「ここ二、三日よく考え事をしている様だが、何か心配事でもあるのか?」


「・・・」


「前にも言った通り、アイラには本当に感謝している。

今回の件が片付いたら何でも出来る限りの・・・!」


そこまで話してはたと気付いた。

アイラは異世界から召喚された。ずっと帰りたかったに違いない。

古文書も魔法陣の腕輪も、帰還に必要な物は揃ったのだ。

後は古文書を読み解けば帰還することが出来る。

今、グラント家に出来得る最大限の協力は

アイラが元の世界に帰る為の手助けなのだ。


「・・・アイラが元の世界に帰りたいのならグラント家として

出来る限りの協力をしよう。古文書を読み解きさえすれば・・・」

「違うの。帰りたいとは思うけど・・・

古文書は多分、スキルで読み解く事は容易いと思う。

そうじゃないの。

私のお爺ちゃんは勇者の従魔の名前を知っていた・・・」


「ああ。」


「500年前の、それも異世界の勇者の従魔の名前・・・普通なら有り得ない。

お爺ちゃんが勇者本人でない限り・・・腕に同じ痣もあった。」


「そうだな。そう考えると君のおじいさんが

500年前の勇者であった事は間違いないんだろう。」


「お爺ちゃんは10年前まではちゃんと生きていたわ。

私が召喚されるまで住んでいた日本で・・・

孤児だったから苦労したっていう話は聞いたけど

大人になるまでの話は聞いたことが無かったわ。

今思うと召喚されるまでは日本の違う時代で生きていたのかもしれない・・・」

「!」

「そう考えたら、もし私が日本に帰ることが出来たとしても

同じ時代に帰れるという保証が無いの。

家族どころか知っている人が全然いないかもしれない。

環境だって全然違うかもしれない・・・

そんなところに一人で帰って生きていく自信が全くない・・・」


知らず知らずに涙が流れ言葉に詰まる。


「それなら・・・それだったら此処にいれば良い。

アイラの家族はいないけど、こっちに来てから知り合った人達が

沢山いるだろ?絶対みんなアイラを大事にしてくれる。

住む所だってグラント家なら大歓迎で迎えるぞ。

ギリニスに行けば俺の妹もいる。

きっとアイラと気が合うと思う。多分・・・

ちょっと我が儘だがそこはまあ愛嬌だ。」


「何それ・・・でも本当に今まで知り合った人達は良い人ばかり。

知ってる人が一人も居ない所へ行くのは絶対に無理・・・

オルコットも好きだけど、まだ行ったことが無いけど

お爺ちゃんが勇者として頑張っていた国にも行ってみたい。

まだ、家に帰りたい気持ちは有るけど・・・

もう少し気持ちの整理に時間はかかるけど

もし決心がついたら絶対力になってね。」


「ああ。約束する。最大限力になるから・・・

一人で悩まないで何でも相談して欲しい。」


「ありがとう。話を聞いて貰ったらちょっとすっきりした。」


「話を聞くくらいお安い御用だ。何時でも言ってくれ。」


「うん。ありがとう。頼りにしてる。」


「ああ。」


 ~~~  ~~~  ~~~


「ヘタレね。」

「ええ。ヘタレですわね。」


ここはオルコット領主の執務室である。

あれから何事もなく無事に領主館へ帰還しジェイドは

オルコット夫妻と世話になったシグルス商会のアリスを前に

一人で今回の遠征の詳細を説明した。


報告の最後にアイラが元の世界に帰れないと言った時の事を

かいつまんで話した後の叔母とアリスの言葉である。


「先日商会の宝飾店へ訪れた時の詳細は聞いているわ。」

「何故そんな事を!」

「社長夫人に店での出来事を話せないような従業員は雇っていないわ。」

「それは職権乱用では無いですか!」


「とにかく、訪れた若い男性二人組の若い(かた)が黒髪の妹の誕生日プレゼントにと

もう一方の男性の瞳の色と同じ色の髪飾りを選んだ事をその男性は

”選んだのは自分ではないから問題ない”と

自分の瞳と同じ色のそのお品を購入する事を否定しなかったそうね。

本当にその若い男性が(・・・)に送る物なら何ら問題は無いでしょう。」


「・・・」


ジュリアが続ける。

「それだけの独占欲がありながら何故もっと気の利いた事が言えないのかしら?」


「・・・男としてあんな時に弱みに付け入るような事は出来ません。」


二人に軽く睨まれてもそれ以上の事は言い返す事が出来なかった。



アイラは次の日から二日間は旅の疲れを癒すという事もあって

頻繁にアイラの為の品々を持参するアリスや商会の人達の相手をしたり

ジュリアと庭園の散歩やアフタヌーンティーを楽しんだりして過ごした。


ジェイドはオルコット氏や識者とダンジョン内での事を推測し


何者かから逃げた実行犯は洞窟に隠れ、追手の追撃から逃れるために

魔法袋の中の物を使おうとしたのではないかと考えた。

宝剣で撃退したとか、魔石の魔力を使って勇者召喚を

行おうとしたのかもしれない。

とにかく、魔法袋から宝剣、魔石、古文書、腕輪を

取り出したまま力尽きた。

宝剣に勇者の魔力を感じ取ったピー助が洞窟迄

犯人を追ってきたのかもしれない。


その後ピー助は洞窟で宝剣を守りながら暫くは魔石の魔力をエサとし

魔石をコアとしてダンジョンが徐々に形成された後は

発生する魔物もエサとしていたのかもしれない。

魔王の魔石は盗み出されるまでは神殿に有る事で

魔石の力が封じられていたのかもしれない。


という結論に達したのであったが、真実は永遠に

解き明かされる事は無いだろう。



明日はギリニスへ向けて立つという日

オルコットで親しくなった人たちが集まって

誕生日の晩餐会を催してくれた。


そしてオルコットへ帰還して三日後の今日

アイラとジェイドは馬でギリニス王国のグラント家へと向かおうとしていた。

ルカを連れて行って良いと言われたが流石に令嬢の愛馬を

借りたままには出来ない。

乗馬の腕もここ数日で上達したので、別の牝馬を借りる事になっている。


ジェイドのナリア王国への来訪は勇者の遺産の調査であったが

結果はだれしも予想できなかった程の成果である。


勇者の遺産どころか、オルコット奪還のための証拠も揃い

伝説の勇者の従魔を見つけ、何より勇者の孫迄連れて帰還するのだが

アイラが勇者の孫であることは当面の間一部の者の間での

秘密とする事が決まっている。


「アイラ、道中は色々危険が有るから暫くはショウの姿で旅をしてくれ。」

というジェイドの言葉に従いショウとして馬の横に並び立ったアイラは

世話になったオルコット夫妻やシグルス商会の面々に

最後の別れの挨拶をしている。



ジュリアはアイラに

「グラントに着いたらこの文をジェイドの妹に渡して頂戴。」

と封書を差し出す。

その様子をジェイドがいぶかし気な表情で見守っている。


「はい確かにお預かりします。」

アイラが受け取ろうと手を出した。

「くれぐれもよろしく。」


ジュリアはアイラに手紙を渡しながら謎めいた笑みで

ジェイドを見やったのだった。




ここまでお読み頂きありがとうございます。

後り一話で完結ですので最後までお付き合い頂けると

嬉しいです。

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