27 街での買い物
翌朝、起きたアイラはジェイドに言われた通り
ショウの姿でダイニングに向かった。
朝食を済ませオルコット氏の案内で厩舎へ向かう。
領主の館という事もあり沢山の馬が飼育されている。
「アイラは女性にしては背が高いが線が細いから
この馬が丁度良いだろう。性格も大人しくて人懐こい。」
領主自らが選んでくれた葦毛の馬は均整の取れた馬体をしている。
「とても素敵な子ね。」
「気に入って貰えたかな?名前はルカというんだ。
王都にいる娘の愛馬だよ。」
「よろしいんですか?大切な馬をお借りしてしまって。」
「いや、久しく人を乗せてないから可愛いお嬢さんに騎乗して貰えて
ルカも喜ぶだろう。」
可愛いという言葉に照れながら答える。
「ありがとうございます。大切に扱わせて頂きます。」
アイラの言葉にジェイドも続ける。
「すっかりお世話になってしまって申し訳ありません。
この件が片付いたらグラント家として最大限の礼を尽くさせて頂きます。」
「いや、愛する妻の為だ。気にする必要はない。
それに君たちのおかげでオルコット家にとっての長年の念願も叶いそうだ。
私は仕事があるのでここで失礼するが後はよろしく頼むよジェイド君。」
オルコット氏はさらりと恥ずかしげもない言葉と辞去の挨拶を残し
執務室へと歩いて行った。
残された二人は馬屋へ入りジェイドが丁寧に馬具の付け方を教えた後
馬具を乗せた馬をアイラが引いて馬場へ向かう。
その後騎乗の仕方、基本的な扱いを教えて貰った後 並足で馬場を回る。
暫くはジェイドがアイラを乗せた馬を引きながら雑談する。
「そういえばもうすぐ誕生日だったな。いつなんだ?」
「10日後かな。」
「なんだもうすぐじゃないか。何かプレゼントする約束だったな。何が良い?」
「えっ、こんな慌ただしい時に?ダンジョンから帰ったら考えます。」
「いや、それはそれで忙しくなりそうで忘れてしまったら申し訳ない。
そうだ、買い出しに行く序で悪いが今日街に出たら一緒に何か探そう。」
「ホントに慌てなくて良いんですけど・・・」
「いや、俺が落ち着かない。是非そうさせてくれ。」
その後ジェイドも 厩舎から引いて来ていた愛馬に騎乗し
並んで並足に馴らしていく。
時間も頃合いになったので馬を戻して街に出た。
オルコット領都は街の大きさではさすがに王都には敵わないが
一つ一つの建物や街並みが洗練されていてとても雰囲気がいい。
二人で洒落たカフェのテラス席で昼食を摂る事にした。
王都ではカフェでさえ入った事が無かったので
メニューについては違いは良く分からない。
迷う事なく二人揃って本日お勧めランチを注文すること暫し、
運ばれてきた色とりどりの料理が盛られたプレートにテンションも上がる。
前菜を一口食べてアイラがにんまりと笑みを溢す。
「わー、異世界へ来て初めてこんなに美味しいもの食べた気がします。
王都の宿の料理も美味しかったけど、大衆向でいつもの味って感じで・・・
これは素材の鮮度から違う気がします。」
どれどれとジェイドも同じものを口にする。
「俺は料理の味は良く分からないが一つ一つ
丁寧に作られているのは間違いないな。」
二人でそれぞれの料理を吟味しながら楽しく会話する。
昼食を終えて出口に向かうと前回の分はプレゼントをもらって
帳消しになってしまったからとジェイドが会計を済ませてくれた。
その後並んで市場に向かう。
「そういえば私、オルコットに向かう前に市場で食材や調理器具を結構揃えて
アイテムボックスに入れたまま忘れてました。
食材はもう少し買い足すとして調理器具は買わなくても行けると思います。」
「ああ、前回一緒に食事した時だな。いろいろ珍しそうに覗き込んでたな。」
「え~っ何時から気付いてたんですか?!」
「いや、直前だぞ。すぐに声を掛けようと思ってた・・・
それよりアイラも野営料理が出来るのか?」
「野営で作るのは初めてです。普通の家庭料理は作れますけど。」
「そうか。俺は騎士団の遠征で必要だから多少の経験はあるぞ。」
「じゃあ、竈づくりとか火起こしは任せられますね。」
「ああ。作業分担で効率よく出来そうだ。」
市場であちらこちらの店を覗き王都と違った食材の種類の多さに驚かされる。
その後二人はシグルス商会の経営する装飾店に向かった。
但しアイラが男装しているので妹の誕生日プレゼントを見繕うという設定だ。
店内に入り二人で色々見て回る。
暫く見て回ったアイラの目に留まったのは
ジェイドに買った物とそっくりな石に金の縁取りがされた髪飾り。
「この石、一目見て気に入って買ったんだけど、自分用にはどうかなって思って。
ジェイドさんにプレゼントした銀色の縁取りも素敵だったけど
金色の方が黒い髪の時に映えそうでしょ?」
店の人が気を使ってアドバイスをする。
「妹さんは黒髪なんですか?それならお似合いになると思いますよ。
石の色が地味な分金の縁取りで飾り全体が引き立って見えますよ。
お兄さんからのプレゼントでしたら何ら気にする事も無いですし。」
「あはは、そうですね。隣国とはいえその風習は
ちゃんと知ってるから大丈夫です。」
「ああ。アイラがそれでいいなら良いんじゃないか。
・・・俺が選らんだ訳ではないし。」
「なんか煮え切らない返事。でもちょっとお揃いみたいで悪いかなあ。」
「いや、俺が黒い石を贈るよりは問題ないんじゃないか・・・
アイラが気に入って買うならそれが良いと思うぞ。」
「それじゃあ、これをお願いします。」
という事でプレゼント用に綺麗に包装して貰い帰途についた。
後数話、何事も無ければ今月中に完結予定です。




