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22 グラント家の事情


ジェイドとアイラは揃って叔母の待つ談話室に向かい

扉を静かに叩いた。

ジェイドが「お待たせして申し訳ありませんでした。」と

声を掛けながら入室するとジュリアがソファーから立ち上がり

笑顔で迎え入れてくれた。


「待っていたわ。さあさあ二人ともそこに座って頂戴。

 アイラさんも王都から遥々お疲れだったわね。

 色々伺いたい事もあるのだけれど

 先ずはこちらの事情を聞いて頂くのが先ね。」


「それは私から説明します。」

ジェイドが叔母の言葉を引き継ぎ

三人向かい合って座ると事の次第を話し始めた。


「叔母と俺の生家は隣国ギリニスのグラント侯爵家だ。

グラント家は500年前に侯爵家を起こした聖女の代から

異世界から召喚され魔王を討伐した勇者にまつわる品々を保管する

神殿の管理を任されてきた。


しかし200年前、何者かの手によって国宝でもある遺産が奪われ

グラント家は窮地に立たされた。

勇者の遺産はその功績からギリニス王国だけでなく

周辺国にとっても歴史上の宝として崇められていたんだ。


当時ナリア王国に遺産が持ち込まれたという偽の情報に踊らされ、

密告された場所を捜索したが遺産の発見には至らなかった。


事件直後に行方不明になった神殿の使用人に嫌疑がかかったが

盗まれた遺産は200年の時を経てなお未だに発見には至っていない。


勇者一行の功績を讃えて建てられた神殿には

勇者とその従魔であったフェニックスの像が祀られ

併設されている宝物殿に献納されていた主な遺産は

一行が魔王討伐に向かった際に携えた勇者の宝剣をはじめとした

勇者のマント、魔術師の杖、聖女の首飾り、魔王討伐の証となる魔王の魔石

そして異世界から勇者を召喚する為に古代から伝わるという

古文書と魔法陣を描く腕輪。


納められていた品々は確かに勇者が存在し魔王を討伐した事の証として

300年間勇者の偉業を後世に伝え続けてきた物だ。


しかし偉業を証明してきた勇者の遺産の紛失によって

勇者が確かに存在したという事実さえ伝説になり

そして遂には御伽噺へと変わってしまった。


グラント家は勇者と共に召喚された聖女の血筋で我々はその末裔に当たる。

歴史を証明して来た宝を取り戻さなければいけないんだ。」


ジェイドの説明にジュリアが続ける。


「そしてこれも今は御伽噺になりつつあるのだけれど

神殿が出来てからの300年間、200年前勇者の遺産が盗難にあう直前まで

”勇者様の従魔”と伝わっているフェニックスが

”数年に一度、神殿の棟の上に設けられた止まり木に降り立った”

という記録が神殿に残っているわ。

そして”従魔の契約の証が勇者の右腕に現れる”

という言い伝えもグラント家に代々伝わる書物に残されているのよ。」


「・・・」

アイラは黙って聞いている。


「今回のナリア王国の召喚の儀が行われるらしいという連絡を叔母から貰い

ギリニス王国で騎士団に所属している俺が情報の真偽を確かめにやって来た。


召喚の儀が行われたという事はナリアが古文書と腕輪を所持している証。

盗難にあったとはいえ元々はギリニス王国所有の国宝。


返還要求の為に証拠を集めようとしている所に勇者の特徴を持つ君が現れた。


そこで君の事情を打ち明けてほしい。

もし俺たちの想像している通りの召喚された者ならば

勇者の遺産を取り返すための協力をしてほしい。

我々に出来る事ならば何なりと君の要望に応えると約束するから。」


「お願いよアイラさん。あなたの証言がどうしても必要なの。

グラント家はこの200年間、ずっと手がかりを求めてきたの。

そしてこれが最初で最後のチャンスかもしれない。

この機会を逃したら私たちはきっと永遠に

遺産を取り戻す事が出来なくなってしまうわ。」


必死な二人の訴えにじっと聞き入っていたアイラが口を開いた。


「ご想像の通り私は異世界から他の三人と一緒に召喚されました。

でも私がその時召喚された者だと証明するのは難しいかもしれません。」


思わぬ返答にジュリアが慌てる。


「どうして?!ナリアの手の中にある三人なら

ナリアの思い通りの証言もするでしょうが

王宮の手から逃れてきたアイラさんまでもが

ナリア王国に味方するというのですか?」


「いいえ、私は遺産は正当な持ち主、あるべき場所に返す事が正しいと思います。

ただ、私の証言は役に立たないかもしれないのです。」


アイラの答えにジェイドが思い至る。

「それは最初に会った時、男装していた事と関係あるんだろ?」


「はい。私は劇団・・・芝居で男装をしている時召喚されました。

魔力とかスキルが人並み外れていたら良いように使われると思って

咄嗟に能力も偽装したんです。だから召喚され王宮を去るまでの私は普通の男性。

ナリア国がその気になればいくらでも私の存在は否定できると思います。」


「・・・せっかく古文書と腕輪だけでも取り返せると思ったのに

また振り出しに戻ってしまうのかしら。」


「・・・」

アイラもジュリアと一緒に項垂れる。何か役に立てることは無いだろうか・・・

”古文書をとりもどす?”そう思った時、はたと気が付いた。


「あっ!」




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