20 アイラとショウ
ダイニングに移動してそれぞれ席に着く。
ジュリアが正面でジェイドはショウと並んで腰掛ける。
「腹が空いていたのか?そういえば俺もまだ昼めしを食べていないな。
叔母上は済ませましたか?」
「今日はそれどころでは無かったわ。今でもそうだけど。」
「グラント家の希望は逃げないと約束しますから先に昼食を摂りましょう。
それにしても大量に作ったな。」
「調理場使わせて貰うから使用人の人の分も作ったんだけど
何故か皆遠慮してしまって。」
「まあ、分からないでもないが・・・」
「えっ、毒なんて入ってないし、味だって悪くないと思うんだけど・・・
王宮で見習いやってる時だって・・・あっ!」
「その話も後からゆっくり聞かせて貰えるか?」
「・・・はい。」
「そう言えばバタバタしていてシグルス商会の方々の事にも
気が回らなかったわ。
早急に食事をお出しして頂戴。私はこちらで頂くから。」
二人のやり取りを呆れて見守っていたジュリアだったが
ふと思い出し執事に命じた。
「僕にはお気遣いなく。
ご領主夫人はちゃんとした物を召し上がってください。」
シグルス商会の人も訪問すると言っていた事を思い出したがそこは黙っておく。
「俺はショウの料理の毒見を買って出よう。」
「あっ、ひどい。無理して食べなくて良いですよ。
アイテムボックスに入れて・・・あっ!」
「そんなんでよく此処まで無事にたどり着けたな。」
「ここに来る迄には色々な人に助けて貰ったから。
それに、ジェイドさんが味方してくれるって思ったら
安心して気が緩んでしまったみたい。」
愁然としていたジュリアが立ち上がった。
「・・・やはり話を聞くまでは何も喉を通らなさそう。
書斎で待っているから食後に来て頂戴。」
「待ってください叔母上。」
ジェイドも立ち上がり叔母を引き止める。
「ショウ、叔母上は先ほど言った通りギリニス王国出身。
俺とは血の繋がった叔母で俺の次に信用してほしい人だ。
もし俺を頼れない時は叔母上を頼ってほしい。
だからショウが誰なのか叔母上だけには打ち明けても良いか?」
「ジェイドさんがそう言うならそれでいいです。」
「髪色を戻して。」
「・・・はい。」
ジェイドに促されて魔法を解く。
「黒い髪に黒い瞳・・・」
「アイラ・・・アイラ・ミズキと言います。」
「そうなのね。アイラさん、不躾だけど、右の腕に鳥の形の痣がおあり?」
「はい。生まれた時から・・・。」
「そう。ありがとう。ゆっくり食事をしてね。
私はアリス達にジェイドの知り合いの伝手で何とかなりそうだからと言って
今日の所は引取って貰うわ。食後にまたお話を聞かせて頂戴。
ジェイド、後はよろしくね。」
「はい。お任せ下さい。」
先ほどまでの沈んだ表情とは打って変わり
安堵の笑顔でダイニングを後にした。
それを見送ったジェイドがアイラを振り返る。
「色々聞きたい事もあるが、先に俺の生家グラント家の事情を説明した方が
アイラも安心して事情を話すことが出来ると思う。
しかし先ずは腹ごしらえしてからだな。
叔母上も待っおられるしお互いの事情の説明は
一緒に片付けた方が早いからな。」
アイテムボックスもバレたので堂々と黒パンを出す。
ナイフで切り込みを入れてピカタを挟んでジェイドさんに渡す。
「ご領主様のダイニングで行儀悪いけど、叔母さまをお待たせしているし、
もともと厨房の人達と気楽に食べるつもりだったから軽食って事で許してね。」
「ああ。しかしこうやって食べていると
王都の市場で食べた時の事を思い出すな。」
「そういえばあの時初めて家族以外の人から奢って貰ったんだった。」
「そうなのか?」
「あっそれで思い出した。
ジェイドさんに奢って貰ったお礼と誕生日のプレゼントを兼ねて
昨日見つけた小物を買ってあるんだけど、今渡しちゃっていいかな?」
「助けて貰ったお礼に奢っただけだぞ。誕生日のプレゼントだって
貰ったら何か返さないとな。」
「そうか・・・じゃあいいや。反って気を使わせちゃうもんね。」
「あ、いや、せっかく用意してくれたんだから貰わせてくれ。
アイラは来月誕生日だろ?その時に何か見合ったものをプレゼントするよ。」
「なんか、余計に悪い気がする。」
「そんな事はない。喜んで受け取るよ。」
アイテムボックスから取り出した包みを渡した。
「そう?じゃあこれ。気に入って貰えると良いけど。」
「開けてみても?」
「どうぞ。」
包みを開けたジェイドさんが固まった。
「ジェイドさん?」
「アイラはギリニス王国に行ったことは無いよな?」
「無いけど・・・」
「風習とかは・・・」
「勿論知らないけど、えっ何?!何か不味かった?!」
「ああ。知らないならまあ、仕方ないし・・・
ここはナリアだしな。
後学の為に説明しておくが、
異性に対して相手の瞳と同じ色の装飾品を贈る事は
・・・告白しているという意味合いにとられる事が有ってだな、、、
その、なんだ 知らなかったのなら問題は無いが
以後気軽に誰にでも渡すんじゃないぞ・・・」
「えー大問題じゃないですか。ジェイドさん彼女さんとか、
結婚してるとか無いんですか?!」
「自慢じゃないが両方とも無い!!」
「・・・」
「で、でもやっぱり不味いですよね。他の物考えますから
一先ずこれは無かった事にして下さい。」
「いやせっかくだからそんな勿体ない事はしなくていい。
”知らなかった”で済むことだ。
それにとても気に入った。」
「そうですか?じゃあ一応喜んで頂けたという事で
・・・貰って頂けて良かったです。」
「ああ。大切に使わせて貰う。さあ、そろそろ叔母上の所へ行こうか。
一先ず落ち着いただろうが、これからが大変だからな。」
「まだ良く分からないけど
とりあえずはお互いの事情を話してからですね。」
「ああ。よろしく頼む。」
という事で領主夫人の書斎に向かった。
21話はギリニス王国とナリア王国の因縁の時代背景で
本文からは少し話が離れます。




