17 あっさりバレました
翌朝、朝食を頂き出立の準備をして玄関ホールに向かった。
ホールに着くとケビンさんも一緒に歩き出した。
「昨日、ご領主様に献上するのに相応しい品が手に入ってね。
私も領都まで同行させてもらうよ。」
外に出ると今日は社長夫妻が一緒という事もあってか
昨日までと違って二頭立ての立派な馬車が停めてある。
ケビンさんは何故か馬車の御者台で待っていたシドさんの横に腰掛けた。
アリスさんも同行し王都に運ぶ荷物も多いという事で
商会所有のマジックバッグを使用するそうだ。
馬車の中はすっきりしていてゆったりと腰掛ける事ができる。
昨日までより道連れ?が一人増えた事で馬車の中はかなり賑やかだ。
「アイラは冒険者になってどの位?」
「ランクは?」
「何をする事が好き?」
「好きな食べ物は?」
「好きなタイプは?」
・・・
アリスさんの独壇場である。
「お母さん、いい加減にして。約束が違うでしょ?」
「良いじゃない。あなたはもう『おばさん』の部類だから
若い子と話す機会が少ないんだもの。
それにこんないい子、滅多に出会えないし・・・
貴方は5日も一緒だったんだからもっと色々話したんでしょ。」
「あんまり煩いと嫌われるわよ。」
「そんな事は無いですよ。私も楽しいです。」
「ほら、アイラもこう言ってるんだし。あなたの方が煩いんじゃない?」
「私はそんなに質問攻めにはしなかったわ。」
何だかんだで領都の中心街に差し掛かった。
「あの、私はこの辺で下ろしてください。
街並みを楽しみながらギルドを探します。」
「いいじゃない。このまま一緒に領主館まで行きましょ。
ご領主夫人と母は昔からの知り合いだからアイラの事も歓迎してくれるわ。」
「そうそう。是非紹介させてほしいわ。こんな可愛い冒険者
きっと気に入ってくれるから。」
領主館は不味い。国の上層部とのやり取りもしているだろう。
召喚の事も色々と知っているかもしれない。
何かボロが出て不審に思われたら王国に連絡が行く可能性がある。
引き止める二人を何とか躱して馬車を下りた。
「本当に色々お世話になりました。
またご縁があった時はよろしくお願いします。」
「本当に行っちゃうの?困った事が有ったら何時でも頼ってね。」
「はい。遠慮なくそうさせた頂きます。」
「ええ。待ってるから。」
手を振りながら停まったままの馬車を後にした。
ギルドに向かいながらいつものように物陰に潜む。
髪色をラテベージュに変え後ろで纏める。ローブを羽織ってフードを被り
綺麗に整備された街並みを散策しながら目的地を目指した。
程なくして王都のそれより立派な建物を見つけ扉を開いた。
クエスト掲示板で沢山の依頼書の中に手ごろな依頼は無いか探しながら
お世話になったスーザンさんたちの事を思い浮かべる。
ここまで無事にたどり着けた事、色々親切に教えて貰えた事。
感謝しかない。
ふと、隣領のダンジョンに向かったジェイドさんの事が頭に浮かんだ。
ちゃんとした仲間は見つけられただろうか。無事にダンジョンに着いただろうか。
そんな事を考えていると不意を突いて幻聴?が聞こえた。
「アイ・・・ラ?!、アイラじゃないか!」
ドキッ・・・振り向きそうになってぐっと堪えた。
前に回り込んだジェイドさんがフードを覗き込んだ。
「アイラ・・・、じゃないのか?」
「ひ、人違いでは、、、僕はショウです・・・
C級冒険者の・・・」
目を合わせられずに顔を背ける。
「・・・そういえば髪色が違うな。しかしよく似ている。
知人は『アイラ』という17歳の女性なんだが、心当たりは無いか?
妹だったりとか?従妹だったりとか?」
ジッと顔を覗き込んでくる。
「そ、そういえば…従妹にそんな名前の子がいたかなあ・・・
あはは、、、むかーし会った事が有るような、無い様な?」
何とも言えない圧を感じ、思わず引きずられて中途半端に答えてしまった。
「・・・」
うわー気まずい・・・
「似ていると言われた事が有るような、無い様な?」
目を泳がせる・・・
「そうか・・・まあいい。それは置いておいて
今、ダンジョンに潜る仲間を探している。君に頼みたい。」
何でいきなりそんな方向に話が飛んだ!?
「えっ、会ったばかりでお互い何も知らないでしょう。」
「これでも人を見る目は有る!」
言い切った言葉に思わずボソッと呟いた
「そこは疑問形じゃないんだ・・・」
「!」
「ちょっと顔を貸してくれないか?」
「ナンパですか!? ・・・あっ!」
しまった、思わず突っ込み癖が出てしまった・・・
「「・・・」」
「いいから、ちょっと来てくれ!」
「えー強制的!?」
ちょっと声が大きくなり周りの人が気遣ってくれた。
「あの、大丈夫ですか?」
「「 大丈夫です。ご心配なく! 」」
見事なほど声が被った・・・
腕を掴まれ引きずられるように出入り口近くまで連行される。
その時、ギルドの扉が開きシドさんが飛び込んで来た。
すれ違いざま一瞬目があったが、
私と気付かないのかそのままカウンターの方へ進んで行った。
私はジェイドさんにギルドの外へと連れ出された。
「さて、説明して貰おうか。」
「な、何をですか?」
「今は魔法で髪色を変えているよな?」
「・・・」
「年齢は…化粧か?上手いものだな。」
「・・・」
「性別も変えているのか?」
「いやいやいや、いくら魔法でもそれは無理ですよ。」
「それもそうだな。」
「はぁ~、なんで判っちゃったんです?」
「・・・長年培った感?」
「ご冗談を?特殊スキルの使い手ですか?」
「アイラがそれを言うか?」
そこでさっきすれ違ったシドさんの事を思い出した。
「さっきギルドを出る時すれ違ったシドさん、
王都からここまで5日も一緒にいて目まで合ったのに
私がアイラだって事に全く気付いてませんでしたよ。」
「5日間ずっと一緒!!、二人だけで?!」
何故かさっきまでの勝ち誇った取調官の様な態度が一変した。
「いいえ、男女二人ずつでしたね。」
「どいった関係で?!」
「とある商会の依頼で護衛の仕事でした。」
「そ、そうか。それは大変だったな・・・。」
「そんな事なかったです。いい方達ばかりでとても楽しかったです。」
「・・・」
「で、なぜ姿や名前を変えて移動しているんだ?」
「・・・別に疚しい事はしていませんよ。ただ、正体を知られると不味いとか?
ちょっとした事情持ちです。」
「どこかの姫君とか、家出少女とかでは無いのだろう?」
「姫君って柄に見えますか?
それにもうすぐ18になるのに今更家出って・・・無いですね。
まあ、嫌な相手と結婚を強要されでもすれば別ですが。」
「許婚がいるのか?!」
「いないですよ。そんなもの好き?」
「そ、そうか。」
「いや、そこは『もの好き』ってとこ否定してくださいよ。」
「あ、ああ。話が逸れてしまったな。
たぶん、アイラは私が探している物と十中八九関係があると思うんだが。
俺の事情を説明しないとな。しかしここで込み入った話は不味いな。
移動しよう。」
「どこに行くんですか?」
「近くに叔母の家が有るからそこにしよう。」
「ジェイドさんてオルコット出身だったんですか。
道理でオルコット推しするわけですね。」
「いや、俺は隣国出身だ。それも含めて説明するからついて来てくれ。」
という事でショウのままジェイドさんについて歩き出した。




