13 旅程 其参
王都を発ってから三日目昼までの道中は順調だった。
初めて見る異世界の田舎の景色や、時折目にする見た事もない動物たち。
人里離れた街道では念の為に内緒で探査魔法を使っていたが、
領地境に近い森を進んでいる時に複数の魔物を感知した。
危険が迫っているので取りあえずは控えめに報告する事にする。
御者台のニックさんに右前方から迫って来る危機を伝える。
「私の探査スキルで魔物の気配を感じます。
右前方から迫っていますが、おそらくD級位の魔物数匹です。」
強さ的には問題ないけど、どうやら群れのようだ。
前方から向かってくるので振り切って逃げる事は出来ない。
数で攻められるとなると此方も迎え撃つ準備が必要だ。
雑木林の中の生い茂った草木が敵を隠し邪魔になるので、
なるべく開けた場所で大木を背に馬車を停めた。
「どうやらキラーウルフの群れのようだ。アイラは大丈夫そうか?」
馬を下りて馬車の前方に陣取ったシドさんが声を掛けてくれる。
「大丈夫です。お二人に指導して頂いた成果をお見せしますよ。」
「それは楽しみだ。」
「来るぞ!」
ニックさんの声と共に木の間の茂みから一斉にキラーウルフが飛び出した。
ニックさんとシドさんが前方に踏み出し応戦する。
最初の一振りで二頭が倒れた。隙を縫ってもう一頭が後方支援の私の方へ
駆け込んできた。
横に躱しながら落ち着いて剣を振るい、上手く仕留める。
前方に目をやると流石ベテラン、飛び掛かるウルフを難なく交わしながら
倒していく。
横の茂みからも二匹飛び出したので
そちらに駆け寄り応戦する。
常に馬車から離れすぎない様に気を付けながら
それほど時間もかけずに討伐を終えた。
「初戦闘にしては上出来だったな。連携も悪くなかった。」
「ありがとうございます。お二人の指導のお陰です。」
「さて、このウルフの後始末をどうしたものか・・・」
腕を組みながらニックさんが思案している。
「ああ。毛皮は素材にはなるが、馬車には商材が乗っているし、
乗せたとしても匂いで他の魔物を寄せ付けてしまう。」
シドさんも困り顔だ。
「毛皮だけ馬に乗せるにしても・・・今から解体するには時間がかかり過ぎて
日が落ちてしまうな。」
「やはりこのまま放置しておくのは不味いですか?。」
「このままだと匂いで集まってきた魔物が他の旅人を襲う事も
考えられるからな。」
「あの、私土魔法なら使えるので大きな穴なら掘れますけど・・・」
マジックバッグはあくまで小容量設定なのでここは他の手を考える。
ただ、普通の土魔法の使い手がどれほどの事が出来るかは分からない。
「そうか!ここは安全第一に考えて埋めていくのが一番だな。
しかしこれだけの量となると相当掘り起こす事になるが大丈夫か?」
「何とかぎりぎりでいけると思います・・・」
そう言いながらゆっくり土に穴をあけ始める。
ニックさんとシドさんは魔物の回収に向かった。
いつの間にか馬車から出てきたスーザンさんが
「まあ、土魔法も使えるの?万能の冒険者ね。
ねえ、うちの商会に雇われてみない?あなたならお給料弾むわよ。」
と言いながら穴を覗き込む。
「ありがとうございます。でもまだ冒険者始めたばかりだから
彼方此方行ってみたいなと考えているので・・・」
「そう?残念ね。気が変わったら何時でも言ってちょうだい。
待ってるから。」
「ありがとうございます。
オルコット領は治安維持がしっかりしていると聞いたので
生活拠点の候補として考えているんです。
その時はよろしくお願いします。」
二人が運んできた魔物をしっかり土の中に埋め込んで出発した。
オルコット領に入りこの旅程最後となる宿に着いた時には
辺りが暗くなっていた。
宿で夕食を摂りながら会話する。
ニックさんは外で積み荷の番をしている。
「アイラは明日シグに着いた後の予定は決まっているの?」
「領都に向かうつもりです。せっかくここまで来たので
領都のギルドで依頼を探して暫く滞在するつもりです。」
「そう。なら、私たちと一緒に領都まで行かない?
実は領都に急用が出来て王都を発ってきたのだけど
一度シグルス商会によって積み荷を降ろしてから向かう予定なの。」
「それは願ったり叶ったりの申し出ですけど、
これ以上甘えちゃっても良いんですか?」
「序だから全然気にしなくっていいのよ。
寧ろ一緒にいてくれた方が私も楽しいから。」
「ありがとうございます。それじゃあ遠慮なく同行させて貰います。」
「明日の夕方には商会に着くから、
明後日の朝に発てば昼過ぎには領都に着く予定よ。
ゆっくりは出来ないけどシグの街も良い所だから短い時間でも散策してみてね。」
「はい。ありがとうございます。シグからは徒歩の予定だったので助かります。」
翌朝は早めに宿を発ち昼過ぎにシグの街に入り舗装された道を馬車で進む。
窓から見える街並みを眺めていたが、シグルス商会に着いたので
馬車を下りあらためて辺りを見回す。
シグルス商会は目に入る建物の中で一番立派だ。
「大きな商会だったんですね。私なにも知らなくて・・・
気さくにして下さるから中程度の商会をイメージしてました。」
「ふふ、びっくりした?これでもオルコットでは一番の商会と自負しているのよ。
依頼書にサインしておいたからギルドで換金してきてね。」
「はい、ありがとうございます。
明日は何時にお訪ねすればいいですか?」
「何言ってるの。
今日はうちに泊まるんだからギルドに行って少し散策したら戻ってきてね。
オルコット名物で持成すから楽しみにしてて。」
「いいえ、そこまでお世話になるわけにはいきません・・・」
「妹のくせに何遠慮してるの。遅くならないうちに帰ってくるのよ。
また後でね。」
「スーザンもああ言ってるんだから遠慮しないで。
下に姉妹がいないから本人も楽しんでる。」
「えへへ、本当にありがとうございます。じゃあ、また後で。」
「ああ。初めての街だからくれぐれも気を付けて。」
暗くなる前にと、ギルド目指して歩き出す。
領都に近い事もあり賑わっている。




