まず稼がねば
夜明けから移動して、街に到着。
「なんて街?」
「どこだろうな? 多分マングー領の街だと思うけど」
いきなり金を稼ぐハメになったカシスレットは街の人に商業ギルドがどこにあるか聞いて、街中をノロノロとトラックで移動する。
「なんかめっちゃ見られてるわね」
「王都を離れると魔導車は少ないからな」
魔導車は高額なので、一部の金持ちが運転手付きで乗るような代物。地方では荷物運びで使うようなものではない。
商業ギルドの前にトラックを停め、手続きをしようとすると、
「登録料1万Gです。お連れ様も登録されるなら、2万Gになります」
「えっ?」
「業務内容は何ですか?」
「で、出直してきます……」
最悪だ。金を稼ぐのにまず金が必要になるとは。
「ねー、カッシー。あれ食べたい」
頭を抱えるカシスレットとは裏腹に、ココは串焼き屋台を物欲しそうに見る。
「へい、いらっしゃい。一串200Gだよ」
じーっ。
「どうした? いらねぇのか?」
屋台の人が串を渡そうと出してきたが、ココはじーっと見つめるだけで受け取らない。
「お金持ってないの」
「なんだ嬢ちゃん冷やかしか。なら、商売の邪魔だからあっちに行ってくれ」
じーーっ。
「ココ、商売の邪魔だから、あっちに行くぞ」
と、引っ張ろうとするも、ココは串焼きを見つめたまま離れようとしない。
「あんちゃん、彼氏か? 可愛い彼女に串焼きぐらい買ってやれよ」
「今、金を全部落として持ってないんだよ」
「2人とも文無しか。こっちも商売だから、ただでやるわけにはいかねぇからな」
ココはそれでも串焼きに釘付けだ。
何かないか、何かないか……。
カシスレットは金の代わりになるものがないか考える。
「店主。この屋台は夜もやってるのか?」
「まぁ、そんなに遅くまでやってねぇが、売りもんが残ってたら、夜までやるぞ」
「その魔導ライトだと暗いだろ?」
屋台に取り付けてある魔導ライトはかなり旧式のもの。魔力効率も悪いからあの大きさだとかなり暗いはずだ。
「しょうがねぇだろ。これよりデカいライトにすると魔石代で赤字になっちまう」
「それ、魔石使用量はそのままで、明るくなるように改良してやろうか?」
「ん? そんなことができるのか?」
「まぁな。改良できたら、その串肉をそいつにやってくれ」
と、カシスレットは串肉1本で魔導ライトの改良をやることにした。
工具箱を持ってきて、魔導ライトをバラして、回路を組み直していく。
「あんちゃん、魔道具師か?」
「そんなもんだ。はい、できたぞ。明かりを点けてみてくれ。昼間でも明るさが違うのがはっきりと分かる」
店主は言われたとおりに明かりを点けてみる。
「おっ、こりゃすげぇ。これで本当に魔石の使用量が同じなのか?」
「同じどころか、半分以上使用量が減るはずだ」
「マジか? そりゃすげぇ。ほら、嬢ちゃん。これは報酬だ」
と、串肉を渡されたココ。
「やったーっ!」
そして、がぶりとかぶりつく。
「んーっ。おいひい!」
とても美味しそうに食べるココを見て、他の客もそんなに旨いのか? と、集まってきた。いきなり忙しくなる屋台。
「あんちゃんたち、用事がなかったら手伝ってくれ。あとで、もっと串肉をやるから」
「私がやるー! はい、カッシー。残り食べて」
「あ、ありがと……」
最後の一口分をカシスレットに渡して、ココが手伝い始めたので、カシスレットも手伝うことに。焼くのは店主。客対応はココ。カシスレットはお金の受け渡しだ。
「おう、助かったわ。串肉をやると言ったが、全部売り切れちまった」
「えーっ、騙したの?」
プンプンと怒るココ。
「こんな早い時間に売り切れるなんて思ってなかったからな。その代わり、うちで飯を食わしてやるのでいいか?」
「やった! もうお腹ペコペコ」
カシスレットは店主を荷台に乗せて、家まで移動した。
「入ってくれ」
家は長屋の中のひとつ。お世辞にも綺麗とは言えないような家だ。
「今から焼いてやるからちょっと待っててくれ」
と、台所で何かを焼いて持ってきてくれた。
「ほら、食えるだけ食っていいぞ」
ココは大喜びで食べ始めた。カシスレットもお腹は空いている。しかし、何の串肉か分からないので食べるのを躊躇した。
「これ、なんの肉だ?」
「これはホルモンってやつだ。食ったことねぇのか?」
「ホルモン?」
「内臓だ。売りもんにはならねぇが、食うと旨いんだぞ」
内臓……。
カシスレットは虫の幼虫みたいな見た目のホルモンを口に運ぶことができない。
「カッシー、食べないの? 美味しいよ」
「え、あ、うん……」
カシスレットは目を瞑って串肉を口に入れた。
「お? 旨い……」
「だろ? 下手な肉よりホルモンの方が旨いんだよ。街じゃ、ゲテモノ扱いされてるから、売りもんにはならねぇけどよ。しかし、嬢ちゃんは平気で食うな」
「私はホルモン好きよ。小さいころはよく食べてたから」
「そうなのか。なら、もっと食え食え」
「うん♪」
カシスレットもココもホルモン串をお腹いっぱい食べた。
「金がねぇなら、泊まっていけ。雨風ぐらいは凌げるぞ」
「いいのか?」
「あぁ。あの魔導ライトは買ったら、凄い高いやつだろ? これぐらいしないとバチが当たるってもんだ」
ということで、ここで1泊させてもらうことになった。
「お前らどこから来たんだ?」
「俺たちは王都から来たんだ」
「珍しい魔導車だなとは思ったんだ。王都じゃあれは普通なのか?」
「王都でも珍しいぞ。魔力をかなり使うからな」
「だろうな。盗まれないように気をつけろよ」
「この街は治安が悪いのか?」
「前まではそんなことなかったんだが、ここんとこ急にな」
まさか、厄災の影響が出始めてるのか?
「分かった。気をつけるよ」
「そうした方がいい。それと明日からどうするんだ? 文無しじゃ大変だろ」
「そうなんだよ。商業ギルドに登録しようと思ったら、登録料が必要でさ。それを払えないから、手詰まりなんだよ」
「なら、どこかの商会で荷運びすりゃいいんじゃねーか? あの魔導車で運べば登録料ぐらいすぐに稼げるだろ」
と、アドバイスをもらったので、明日からそうすることにしたのであった。




