詩集:歌ヲ吐ク 晴天ハ霹靂ヲ知ラズ 作者: 歌川 詩季 ほんと、ことわざ便利。 伝え聞いた対岸の惨劇は よくできたドキュメンタリほどには 僕らの心を痛めるけれど 喉もとを灼(や)く熱さは飽食のテーブルにつけば 皿を待つあいだの氷水で すっかり流されちまったよ 晴天(セイテン)ハ霹靂(ヘキレキ)ヲ知ラズ あの空を井戸の底から見上げる 蛙(かえる)の眼(まなこ)して腹を肥やすばかり 聞き覚えた忌まわしい過去の数 見え透いたプロパガンダで歪(ゆが)む 僕らの心も軋(きし)んだけれど 喉もと光る刃(やいば)は教訓のレパートリだから 死期を待つ余生に暮らす日々を どこかで学んできたものさ 曇天(ドンテン)モ土砂降(ドシャブ)リハ知ラズ あの空を屋根の下から眺める 魚の瞼(まぶた)して鰭(ひれ)を増やすだけさ まぶた、ある魚もいるんだって。 制作:ひだまりのねこ先生