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第十九話 婚約者候補

 いわばわたしは、このフィリシャール公爵家では四面楚歌と言っていい状態。


 ルナディアーヌのお父様も継母と異母妹の方を愛していた。


 ルナディアーヌのことは決して好きではなかったと思う。


 しかし、それでもわたしとオーギュドリュネ殿下の婚約を進めてくれたし、後継者にもしてくれた。


 もちろんそれは、ルナディアーヌのことを思ったのではないのだろう。


 王太子殿下との婚約は、


「ボワデシャール公爵家の長女と行う」


 という王室との取り決めを忠実に実行しただけだと言える。


 後継者のことも、この王国の貴族では一般的な、


「長子相続」


 というしきたりを忠実に実行しただけのことだと言える。


 継母とルゼリアの要請を受け入れて、ルゼリアを婚約者や後継者にすることは、王室・貴族たちの批判を浴びることになる。


 お父様は名誉を重んじる人だったので、そのようなことは避けたかったのだろう。


 また、二人の要請を受け入れることは、二人にも批判の矛先が向くことになるので、二人のことを愛しているお父様は、そういうことも避けたかったのだろう。


 ただ、ルナデアィーヌの能力自体は評価していたようで、一度だけルナディアーヌに、


「お前は高い能力を持っている。そのことについては評価していい」


 と言ったことはある。


 その時は、大して心に残らなかった言葉だった。


 今思うと、ただ取り決めやしきたりに従っただけではなく、その能力を評価していたので、そのまま婚約者・後継者の座を維持したのかもしれない。


 お父様はそのことについては何も言わなかったので、推測でしかないのだけれど……。


 それでも結果的に、お父様の生きている間は、わたしの地位は安泰だったと言える。


 その点については、ありがたく思わなればならないのだろう。


 継母とルゼリアは、お父様が生きている間は、憤懣は貯まっていたのだろうけれど、その決定に従い、おとなしくしていた。


 ルナディアーヌのお父様が。前世のわたしとオーギュドリュネ殿下が結婚するところまで生きていれば、あの悲惨な婚約破棄や公爵家追放、そして処断をされることはなかった可能性が強い。


 わたしは今、ボランマクシドル王国の王太子グラスジュール殿下の、フィリシャール公爵家での婚約者候補になっていることを思い出していた。


 まだ婚約者候補であって、正式な婚約者というわけではない。


 しかし、他に有力な候補者はいないので、このままだと婚約が成立し、婚約者になる。


 まもなく前世と同じような状況になってしまう。


 ただ前世と違い、継母だけでなく実の父もわたしのことを嫌っている。


 本来であれば、二人がかわいがっているコルヴィテーヌが婚約者候補になってもいいところだ。


 しかし……。


 今のボランマクシドル王国の王室は、人間関係が複雑になっていた。


 国王陛下には先の王妃殿下の子であるグラスジュール殿下と、今の王妃殿下の子であるウスタードール殿下がいる。


 王太子の座にはグラスジュール殿下がついているのだけれど、今の王妃殿下としてはこれが面白くない。


 自分の実子であるウスタードール殿下を王太子の座につけ、将来の国王にしたいと思っているのでは、という噂がわたしの耳にも入ってきていた。


 王妃殿下は今でも贅沢好きだということなので、ウスタードール殿下が国王の座につけば、より一層贅沢をするつもりなのだろう。


 最近、その動きはますます強まってきていて、グラスジュール殿下の王太子としての地位は危ないのでは、と言われ始めてきた。


 ここでグラスジュール殿下が、人望のある方であったとすれば、それほど大きな話にはならなかったのかもしれない。


 学校ではいつも学業成績は一番。


 武術も馬術も、そして、剣術も学校では一番の腕前。


 グラスジュール殿下のそういう話を聞くと、人望もありそうだと思うだろう。


 しかし、


「グラスジュール殿下は、いつもだらけた服装の着こなしをしている。学校ではもちろんのこと、王宮でも公式行事以外はいつもそういう態度を取っている。王太子たるもの、いつもきちんとした服装をするべきである」


「グラスジュール殿下は、毎日髪自体は洗っている。しかし、その後、整髪ということをしない為、結果的にいつも髪の毛は見苦しく乱れている。王太子たるもの、身なりはいつもきちんと整えるべきである」

「グラスジュール殿下は、食事のマナーがなっていない。フォークやナイフを作法に基づかず、適当に使って食べるということを行っている。王太子たるもの、食事のマナーを守るべきである」


 ここまでは身なりやマナーの悪評。


 これだけならまだましなのだけれど……。


「グラスジュール殿下は、学校でも王宮でも、傲慢な態度をとることが多く、国王陛下や王妃殿下の前でもそれは変わらない。自分が一番偉いと思っていて自分以外のものを見下しているのだ。国王陛下は、そのことについては許容しているようだ。しかし、王妃殿下はただでさえグラスジュール殿下のことが嫌いなのに、そういう態度をとられるので、その態度をとる度に怒っているようだ。周囲の人たちからの反発も大きくなっている。王太子たるもの、人々には心やさしく接するべきである」


「グラスジュール殿下は、相手と話をする時、普段は傲慢な態度をとるので、人の話をまともに聞くことはない。さすがに機嫌のいい時ぐらいは、話を聞くだろうと思うかもしれない。しかし、そういう時でも、すぐにわけのわからない方向にすぐ話を持っていく。それも丁寧な言葉ではなく、ぶっきらぼうな言葉で。王太子たるもの、人の話はいつでも真摯に聞き、きちんとした会話をするべきである」


 グラスジュール殿下のとる態度についての悪評も多い。


 こうした批判の声がわたしの耳にまで聞こえてくる。


 これだけ聞いただけでも、決して人望があるようには思えない。


「面白い」


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