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第百六話 誓いのキス、そして、結婚の成立

 わたしの心の底からは、様々な記憶が湧き出してきていた。


 そして、様々な思いも湧き出してきていた。


 わたしはその中で、グラスジュール殿下に対する熱い想いを改めて認識した。


 それとともに、わたしが疲れたり、悩んでいたりした時、大聖女様がわたしのことを励ましてくれていたことを改めて認識した。


 治癒魔法のこと。


 この王国の内政のこと。


 フィリシャール公爵家の内政のこと。


 そして、グラスジュール殿下とのこと。


 大聖女様の励ましがなければ、どこかで心が折れることがあった可能性がある。


 大聖女様には感謝の気持ちで一杯だ。


 そして、その後、わたしの意識は、王宮にある結婚式場の会場に戻ってきた。


 とても長い時間が経っていたように思った。


 わたしがその間、呆然とした状態だったとしたら、グラスジュール殿下や出席者に迷惑をかけ、心配をさせてしまったのでは、と思ったのだけれど……。


 それはほんのわずかの時間でのことだった。


 式は円滑に進んでいるので、わたしはホッとした。


 いよいよグラスジュール殿下との誓いのキスが行われようとしている。


 礼服に身を包み、凛々しいグラスジュール殿下。


 そして、純白のウエディングドレスに身を包んだわたし。


 グラスジュール殿下とわたしは手を握り合い、見つめ合った。


 なんという素敵な姿!


 グラスジュール殿下にうっとりするわたし。


 グラスジュール殿下がわたしに唇を近づけてくる。


 わたしもグラスジュール殿下に唇を近づけていく。


 重なり合う唇と唇。


 今までグラスジュール殿下とキスを重ねてきたわたしだったのだけれど、このキスは格別のものだ。

 誓いのキス。


 これをしたことにより、今までは婚約者としての立場だったのだけれど、これからは王太子妃としての立場に変わる。


 グラスジュール殿下とともにこの王国を背負う立場になるのだ。


 わたしは甘い気持ちになりながらも、今まで以上にグラスジュール殿下の為に尽くしていくとともに、妻としてより一層グラスジュール殿下を愛していこうと思うのだった。


 誓いのキスを行ったわたしたちに対し、出席者からは大きな拍手で祝福された。


 ありがとう、皆さん!


 わたしは涙が出てくるほどうれしかった。


 グラスジュール殿下もとてもうれしそうだ。


 そして、グラスジュール殿下とわたしは、その祝福の声に手を振って応えていった。




 結婚式とその後の披露宴も終わり、グラスジュール殿下とわたしは、グラスジュール殿下の寝室にいた。


 いよいよわたしたちは初夜を迎える。


 二人とも別々に風呂で体をきれいに洗い、寝間着に着替え、ベッドの上に座っていた。


 グラスジュール殿下は、


「今日、そなたと盛大な結婚式・披露宴を行えてとてもうれしかった。出席者もみな喜んでくれて、これ以上の喜びはない」


 と微笑みながら言うと、わたしも、


「グラスジュール殿下、わたしも皆様に結婚をこんなにも盛大に祝っていただいて、涙が出るほどうれしかったです」


 と微笑みながら言った。


 今日出席していた、国王陛下、王室、貴族、平民の代表は、全員わたしたちのことを祝福してくれていた。


 その中には、執事のモイシャルドさん、侍女のリディレリアさん、そして、ブリュマドロンさんがいた。


 一時期は、周囲の人たちの大部分から嫌われていたわたしたちなので、より一層うれしく思うところだ。


 ブリュマドロンさんとは、長年、学校の中で、ライバルどうしとして対立していた。


 悪役令嬢どうしで、毎日、嫌味の言い合いをするという険悪な関係だった。


 しかし、わたしが前世の記憶を思い出すことによって、その関係は変化していく。


 わたしにとって意外だったのは、グラスジュール殿下が心やさしい人だということをブリュマドロンさんは理解していたことだった。


 わたしはブリュマドロンさんからその話を聞いて、大いに勇気づけられた。


 ブリュマドロンさん本人は、わたしを勇気づけようとして言ったわけではないと言っていた。


 しかし、それは多分、「ツンデレ」というものに近いものなのだろう。


 本来のブリュマドロンさんは、心やさしい人だと思う。


 継母にイジメられたという点ではわたしと同じ。


 ブリュマドロンさんの場合、わたしとは違って、父親はまだブリュマドロンさんのことを大切にしようという気はあったようだ。


 ブリュマドロンさんは、それでもつらい状況だったようで、それが、


「周囲のものには絶対に負けたくない!」


 という決意につながる。


 これが、崇高な理想を掲げることにつながり、その達成に向かっていければいい。


 しかし、多くの場合、その決意は恨みや怒りが原動力になっているので、いい方向に向かうのは難しいことだ。


 結局、ブリュマドロンさんはわたしと同様、悪役令嬢化してしまった。


 わたしもその気持ちはよく理解ができる。


 しかし、わたしがブリュマドロンさんに対する態度を改め、やさしく接するようになったこともあって、ブリュマドロンさんは変わり始めた。


 相変わらず口は悪く、高笑いもする。


 でも、グラスジュール殿下の話になると、真剣な表情で話す。


 付き合い方についてのアドバイスをする時も、口は悪いままで、高笑いもおさまることはなかたのだけれど、時が経つにつれて、より一層親身にしてくれるようになった。


 ありがたいことだった。


 こうして、わたしたちは仲を次第に良くしていき、卒業式の時には、


「これからも友達として仲良くしていきましょう」


 と言い合えるほどの仲になっていた。


 その後はなかなか会う機会もなく、舞踏会の時に少し話すぐらいだった。


 この間の舞踏会で久しぶりに会った時は、まだまだ悪役令嬢的なところは残ってはいたものの、性格の良いブリュドネ公爵家令息レノールドさんと付き合いだしたことで、かなり口も良くなり、高笑いも抑えるようになっていた。


 いい方向だと思うのだけれど、少し寂しい気もする。


 そのブリュマドロンさんが付き合っているレノールドさんと並んで、わたしたちを祝福してくれたのは、とてもうれしいことだった。


 二人も既に婚約していて、七月に結婚式を行うことになっている。


 わたしも出席する予定だ。


 わたしはこのようにブリュマドロンさんのことを思い出していた。


 すると、グラスジュール殿下は、


「そなたにはこの一年半の間、いろいろ苦労さをさせてしまった。また、そなたがわたしのことを熱愛してくれているのがわかっていながら、二人だけの世界に入ることなく過ごしてしまった。申し訳なく思っている」


 と頭を下げてくる。


 それに対し、わたしは、


「グラスジュール殿下、頭をお上げください。わたしはこの一年半の間、大好きなグラスジュール殿下の為にはたらくことができて、幸せ一杯でございます」


 と言った後、


「二人だけの世界に入れなかったのは残念でございますが。それは今日から入っていけばいいことだと思っているのでございます」


 と恥ずかしい気持ちになりながら言った。


 グラスジュール殿下が求めれば、すぐに対応できるように心の準備はしているつもりだった。


 しかし、わたしは、前世までの過去世しか思い出すことができず、その前世での経験がない為、実質的に今回が初めての経験になるので、恥ずかしさを抑えようとしても、抑えることは難しいところがどうしてもある。


 胸のドキドキも大きくなってきた。


「そう言ってくれてありがとう、今まで二人だけの世界に入らなかった分、これからは入っていくことにしよう」


 グラスジュール殿下も恥ずかしそうに言った。


 グラスジュール殿下の方も胸のドキドキが大きくなってきているようだ。

「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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