表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/107

第百四話 領内の改革

 ボランマクシドル王国の王都から近くの港までは、馬車で一日半はかかることからしても、フィリシャール公爵家の領内にある唯一の港の立地条件はいいと言えるだろう。


 これほど恵まれた条件を持つ港は、ボランマクシドル王国内では、ここしかないと言っていい。


 良港と言うのにふさわしいところだ。


 しかし、歴代の当主は、寒村にすぎなかったこの場所に関心を示さなかった。


 農業を中心に考えていたので、こうした場所を活用することなど、思いもよらなかったということなのだろう。


 それだけならばまだしも、父や継母は、ここに入ってくる商人たちにも重い税をかけるようになった。


 もともとここにも様々な規制があったので、さらに寂れる結果となってしまった。


 ボランマクシドル王国内の港も発展していたとは言い難いが、それでもこの状況よりははるかにましと言えるだろう。


 わたしは当主就任後、ここを訪れたのだけれど、あまりの寂れ具合に涙した。


 しかし、同時に、良港であることを生かし、整備をしていけば、ボランマクシドル王国の中でも一番の港にすることができるという気持ちも強く持った。


 そして、その港が持った力でここに住んでいる人たちを幸せにしていくとともに、フィリシャール公爵家領内の人々やボランマクシドル王国内の人々を幸せにしていこうと固く決心するのだった。


 わたしと改革プロジェクトチームの人たちは、フィリシャール公爵家の改革を進めていく。


 しかし、フィリシャール公爵家内の多くの人たちは、こうしたわたしたちの動きに反対をしてきた。


「改革というのはただの自己満足。適度な贅沢はフィリシャール公爵家の品位を保つ為に必要なこと、そして、港の整備のような公共事業を行えば、財政赤字はかえって拡大する。税率は少なくとも現状を維持すべきで、赤字を減らしていくのであれば、さらなる増税をすべき。領民よりもフィリシャール公爵家のことを大切にした政治をしなければならない」


 という主張だ。


 フィリシャール公爵家内は、一時期、継母の勢力が大部分を占めたことがある。


 わたしが心を入れ替えてからは、少しずつわたしの支持者が増え始めていて、わたしが当主になった後は、さらに増えていた。


 しかし、継母の支持者は依然として多く残っている。


 そういった人々は、わたし自身に対しては従う態度を見せているものの、わたしの改革に対しては公然と反対する。


 わたしの改革に反対するほとんどの人たちが、継母の支持者であると言っても過言ではないと言っていい。


 彼らの意見通りにすれば、現状と何も変わらず、困窮した領民の反乱が発生する。


 彼らの目的は、結局のところ、わたしの改革に反対し、妨害をすることで、領民に反乱を発生させ、わたしの失政ということで、継母と異母妹の復権を図っているということなのだ。


 領民のことなど全く考えていない。


 彼らの目的は、絶対に阻止しなければならなかった。


 わたしはフィリシャール公爵家内のわたしに対する反対勢力の説得を行うとともに、グラスジュール殿下の支援を得て、改革を強力に進めていくことにした。


 しかし、反対勢力の抵抗は激しいものがあった。


 また、悪役令嬢というわたしの印象も依然として根強く残っていて、それは継母の支持者以外にも相当数いた。


 そうした人たちの多くは、わたしの政策に反対はしないのだけれど、積極的に賛成をすることもなかった。


 こうした状況なので、最初の内は、政策を実行しようとしてもなかなか賛成が得られない状況だった。


 しかし、それでもわたしはめげることはなかった。


 グラスジュール殿下がいつも励ましてくれたからだ。


 やがて、わたしの政策を支持する人は増えて勢力を増していき、反対する人の勢力は弱まっていた。


 現状はまだまだ改革の途上ではあるものの、税率を適正値に戻した効果がまず大きく、各政策についても効果が出てきている。


 その結果、フィリシャール公爵家の領内は、産業の振興により少しすつ活気が出てきていた。


 何よりも、今まで沈んでいた領民たちの表情が明るい。


 そうした姿を見ていると、わたしもうれしくなってくる。


 わたしの目指していた方向は、これでよかったのだと思っている。




 グラスジュール殿下とわたしは、このように自分たちの使命を果たそうと一生懸命努力をしていた。


 わたしたちが二人だけの世界に入らなかった理由の一つ目ということになる。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


と思っていただきましたら、


下にあります☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。


面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に思っていただいた気持ちで、もちろん大丈夫です。


ブックマークもいただけるとうれしいです。


よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ