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第百二話 聖女認定

「これは奇跡でございます。総司教様、この方は、わたしが今まで見た治療魔法使いとは、比べることのできないほどの力を持った方でございます。聖女認定をするのは当然のことでございます」


 司教は興奮しながらそう言った後、頭を下げた。


「そなたが言うことは、わたしにも大いに理解できる」


 そう言った後、総司教はわたしたちの方を向き、


「国王陛下、グラスジュール殿下、わたしごときのものが申し上げるのは失礼だと存じますが、リランドティーヌ様は、わたしが持っている知識からも、今実際に使用していただいたことからしても、聖女に認定されるにふさわしい方でございます」


 と言った後、頭を下げた。


 こうしてわたしは聖女に認定された。


 大聖女様もわたしの前に現れ、祝福してくれた。


 とてもうれしく、また、ありがたいことだった。


 しかし、これはまだ始まりにすぎない。


 わたしは、大聖女様に祝福を受けた後に改めて示され、そして、国王陛下とグラスジュール殿下に依頼をされた、


「治癒魔法使いの養成」


 に邁進していくことになった。


 わたしはその第一歩として、養成学校の設立の準備を進めていく。


 わたしは聖女として、人々の難病を治療するという使命も持っている。


 しかし、大聖女様はその時、人材の養成をまず優先してほしいとの方針を示し、そして、養成された人材と一緒に、治癒魔法を使って人々を救っていくという方針が示されていた。


 わたしはその指示に従い、人材の養成にまず集中していった。


 わたしは学生であるだけではなく、王妃になる為の教育と、グラスジュール殿下のプロジェクトチームでの活動、そしてフィリシャール公爵家の当主としての活動があり、忙しかったのだけれど、カリキュラムや教科書は一から全部、わたしが作った。


 大変な作業であったのだけれど、何とか学校設立の間に合わせることができた。


 そして、わたしは学校を卒業すると、王立の「治癒魔法使い養成所」の所長に就任した。


「学校」ではなく「養成所」という形態になる。


 治癒魔法の素質を持ったものは、この王国の中では少ない。


 この王国での治癒魔法の今までの冷遇ぶりからすれば仕方のないところだ。


 その為、現時点では、まだ十人ほどの生徒が集まった段階。


 とはいうものの、この生徒たちはみな高い素質を持っていた。


 師匠と呼べる人がいないので、みな自分でその能力を磨いていたのだろう。


 この世界での「治癒魔法使い」の教師は、聖女級の高い能力が求められるわけではない。


 中程度の能力でも十分評価されているので、この能力と教える能力があれば教師になることができる。


 残念ながら、今までのこの王国では、その能力にも及ばない人がほとんどだった。


 その点、この十人は、もう少し教育を行い。それに基づいた練習をすれば、中程度の能力を得られることができるので、教師になことのできる人材だ。


 ただ、その生徒たちは、いずれもこの養成所だけに通うわけではなかった。


 王立の学校に通っているか、既に職業を持っているか、そのどちらかということになる。


 いわゆる掛け持ちという形態。


 最初からここに通うまらばともかく、片方を捨ててこちらに集中することは困難な話なので、仕方のないところだろう。


 ただ、この十人の話とは別に、ここに通うこと自体、能力があったとしても、掛け持ちをすること以外の選択は、人々の意識からすると難しいものであることは認識していた。


 それだけ今のこの王国では治癒魔法のことが評価されていない。


 また、教師はわたししかいない状態で、そのわたし自身も平日は時間が取れない。


 今のところは、休日の午前中しか時間がなく、そこで集中的に授業を行っている。


 そして、授業で学んだことに従って、平日の時間を使って自分で技術を磨き、次の授業で成果を見せることになる。


 ただ、いつまでもこの形式でいるわけにもいかない。


 生徒が優秀であるから成り立つことだと言っていい。


 いずれは、この十人の多くが教師になることによってわたし以外の教師を増やし、また、人々の意識改革を行って掛け持ちの人をなくすことによって、「養成所」を「学校」という形態に変えていきたいと思っている。


 この前途ある十人の生徒たちが、やがて、この王国の中で治癒魔法使いの中心になっていき、わたしと一緒に人々を救っていく。


 それが、今、わたしの目標としているところだ。


 大聖女様も、その目標は、


「途中の目標」


 という位置付けで了承している。


 しかし、大聖女様は、


「治癒魔法使い養成の為の学校を作り、聖女となる人材を養成して、人々を救っていく」


 という高い目標を掲げていて、わたしにも提示している。


 それに対し、今のわたしは自分の掲げた目標にも到達はしていない。


 まだまだ出発点というところ。


 この王国では百年ほど聖女が現れたことがなかったこともあって、人材がとにかくいない。


 十人の優秀な人材を集めること自体、わたしが奔走した結果だった。


 このよな状況なので、大聖女様と最初に話をしてから一年半ほどが経っても、その期待に応えているとは言い難いところがある。




 わたしたちの結婚式の一か月ほど前のある日。


 この頃、わたしの心の中では、大聖女様の期待に応えられないことに対し、申し訳なく思う気持ちが大きくなってきていた。


 特に夜寝る前は、その気持ちがより一層大きくなってくるので、大聖女様に詫びた後、寝ることにしていた。


 この日の夜も、大聖女様に詫びた後、寝ようとしていた。


 すると、大聖女様がわたしの前に現れた。


 わたしが驚いていると、大聖女様は、


「あなたはこれまで十分使命を果たしております。今までのこの王国の状況からすると、十人の優秀な方たちを招集することに成功すること自体、賞賛に値します。それだけではなく、きちんと育てていことも賞賛に値するのです。一年半という時間でまだこの状況だということを、あなたは申し訳なく思っているのでしょう。しかし、優秀な方を一人でも招集して、しかもその方を育てるというもののは大変なことなのです。もっと胸を張ってください。そして、あなたが自分の締めを果たす為、一生懸命努力していることは、わたしも十分理解をしております。わたしに対して詫びることは一切ありません。むしろ、わたしは、あなたに対して、大いに感謝しています。あなたのように、地道に治癒魔法使いを養成して行くことが大切なのです。これからも今の調子で、人材の養成をしてください。これはあなたにしかできないことです。また、今あなたが養成をしている十人は、順調に育っています。いよいよ皆さんの力を持って、難病で苦しんでいる人たちを救う時が近づいています。この十人は、一人前になれば、あなたのもとで、その力を存分に発揮することができると思っています。あなたはもっと自信を持ってください。わたしはいつでもあなたの味方です。これからも自分の力を信じて進んでください」


 と言って、やさしく励ましてくれた。


 わたしはこの言葉によって、力をもらった気がした。


「大聖女様。ありがとうございます。最近、心が落ち込み気味でしたけど、おかげさまで一気に回復できそうです。改めて、大聖女様のご期待に沿えるよう、一生懸命努力してまいります」


 そう応えたわたしは心を立て直していく。


 そして、


「まず十人の生徒たちを育て、その十人が中心となり、わたしと一緒に人々を救っていく」


 という目標実現の為、改めて動き出していくのだった。


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