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第百話 結婚式へ

 それから一年半以上の月日が経った。


 五月の下旬。


 今日はよく晴れていて、爽やかな風が吹き、新緑がとても鮮やか。


 とても過ごしやすい日。


 グラスジュール殿下とわたしは結婚式を迎えていた。


 たくさんの出席者で会場は埋まっている。


 国王陛下、王室・貴族の方々、平民の代表。


 みな笑顔わたしたちを祝福してくれている。


 わがフィリシャール公爵家からは、残念ながら執事と侍女のみ出席。


 この二人はわたしによく仕えてくれた。


 ありがたいことだ。


 侍女のリディレリアさんはこれからもわたしに仕えることになった。


 フィリシャール公爵家令嬢付の侍女から、王太子妃付の侍女ということになる。


「これからもリランドティーヌ様の為。一生懸命お仕えします」


 と言ってくれた。


 父と継母は修道院。


 異母妹コルヴィテーヌは、自分のことを反省し、わたしに忠誠を誓うのであれば、フィリシャール公爵家に復帰できることになっているのだけれど、わたしに対する反感をまだ持ち続けているので、実現はまだ遠い。


 幼い頃の一時期だけだったとはいうものの、わたしに懐いた時期もあったコルヴィテーヌ。


 心を入れ替えて、この結婚式に出席してもらい、その当時のようにお互い笑い合って、手を取り合いたかったという気持ちはどうしてもある。


 結婚式ではそれはかなわなかったのだけれど、そういうことができる日が訪れることを願っていた。


 式は順調に進行していき、これから誓いのキスを行うところ。


 待ち望んでいた結婚式。


 わたしの心の底から、様々な記憶が湧き出してくるとともに、様々な思いも湧き出してくる。キス自体は、この一年半の間、会う度にしてきた。


 しかし、誓いのキスは、今までのキスと違い、特別なもの。


 夫婦として、永遠の愛を誓う儀式だ。


 そして、結婚式の後は、初夜を迎えることになる。


 わたしたちは、まだ二人だけの世界に入ったことはない。


 グラスジュール殿下もわたしも、その世界に入っていきたいと思っていなかったわけではない。


 しかし、二つの理由から、わたしたちはその世界に入ってはいかなかった。




 まず一番目の理由として、わたしたちは、それぞれの使命を果たすことを優先にしていたことがあげられる。


 グラスジュール殿下はボランマクシドル王国の政治改革。


 わたしは治癒魔法を使う人たちの養成とフィリシャール公爵家の政治改革。


 どちらもこの王国の将来にかかわる大変重要なことだ。


 お互いのこの使命が、ある程度形になってくるまでは、二人だけの世界に入っていくのを我慢しようと思ったのだ。


 グラスジュール殿下は、国王陛下の権限移譲を受け、政治改革に乗り出した。


 何と言っても喫緊の課題は、財政再建と国民の生活の改善。


 税率を下げて国民の生活を楽にすると同時に、税収が下がった分をどこかで補わなければならない。


 相反する話になるので、最初から困難を極めることだと言わざるをえない。


 グラスジュール殿下はプロジェクトチームを立ち上げ。ここの若手の有望な人材を集め、対策案を練っていく。


 わたしもこのメンバーに参加した。


 王室内の出費を切り詰めることから始めた。


 グラスジュール殿下とわたしは率先して切り詰めていく。


 しかし、王室内の反発は強いものだった。


 その中心になっていたのが、ウスタードール殿下を推していた勢力。


 形の上ではグラスジュール殿下に忠誠を誓うようになっていたのだけれど、こうしたことを通じて、グラスジュール殿下にはまだまだ心服していないということを見せつけていたのだった。


 グラスジュール殿下は、そうした人たちに対して、説得を試みた。


 それまでのグラスジュール殿下からは信じられないほどの我慢強さで説得を続けた。


 もともと高圧的な話し方をするグラスジュール殿下だったのだけれど、その点も抑えてながらの説得。


 大変な苦労だったと思う。


 国王陛下とわたしも一生懸命協力した結果、何とか王室内の説得に成功した。


 もちろん出費の切り詰めだけでは問題の解決にはならないので、産業の振興に取り組むことになった。


 まずは農業。


 この王国の主要な農作物は小麦。


 輸出の主力となっているほどのものだ。


 この王国の農地が占める割合は四十パーセントほど。


 そのほとんどで小麦の生産を行っている。


 というよりも、他の農作物はほとんど作られていないのが現状。


 歴代の国王が小麦を輸出品目の中心と考え、その為に小麦の生産を奨励したことが大きく影響している。


 その為、野菜や果物は、ほとんど輸入に頼っている。


 しかし、小麦は作付面積に対する収量は決して多くはない。


 灌漑設備が整っておらず、その年の降水量に左右されるところが大きいのと、品質改良を行っていなかったので、収量がそれほどない一般的な品種を作り続けていたところが大きい。


 また、連作の弊害が出ていることも要因として挙げられる。


 これらの問題の内、連作については、対策を取ることにはなっていた。


 休耕地を作ることが対策として有効だとは思われていた。


 しかし、一部でしかその対策は行われていなかった。


 その他の問題については、重要視されなかったこともあり、長年放置されていた。


 また、小麦の売値もそれほど高くはない。


 小麦を作ってもそれほど多くの収入にはならず、また、野菜や果物といったある程度高値で売れる作物はほとんど作っていないので、農民の生活はもともと苦しい。


 それも関わらず、今までは、重い税を課されてしまっていたので、余計に生活は苦しいものになっていた。


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