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薫子の元カレたち

 渚に()()()()()ことに気づいた、薫子は大いに動揺していた。

相手は大学生。そして何より女性である。


 これまでの彼氏たちはイケメンとは言えなくても、趣味が合う人だった。

大学生時代は一緒の授業で同じクラスで、大学の図書館で本を読んでいる

顔なじみ、として、なんとなく声を掛け合う仲に。


 どちらかといえば、運動部より文芸部という雰囲気の男子だった。

そのうちに、お互い好意を抱いて、自然と付き合うような感じになったものの

付き合ってからもドラマディックな展開があるわけでもなかった。

 一緒に映画館へ行ったり、お互いの家で、海外ドラマを観たり、

好きな作家の本の話をしたり。

そんな()()()日々を過ごせる相手だった。


 そして時々、優しいSEXをした。薫子の初めては彼だった。

そんな優しい平穏な時間を薫子は幸せだと感じる日々。

 社会人になることがお互い決まり、彼は地方へと行くことになった。

結果、ありきたりだが、自然消滅。この言葉が一番しっくりくる。

お互い積極的な性格ではないので、気づいたら別れていたという感じだ。


 社会人になってからは、人見知りな性格もあり、

新人時代に仕事の指導してくれた同じ部署の男の先輩と同期の女子数人と

仲良くなったくらいで、それなりの規模の出版社ではあったものの、

一緒に飲みに行くような知り合いは少なかった。


その同じ部署の先輩はなぜか私を可愛がってくれて、飲みにも連れて行ってくれた。

居酒屋な時もあれば、お洒落なバーの時もあり、薫子は経験したことない

大人な世界を満喫する充実な日々を送る。

先輩は比較的仲間も多く、普段から仕事帰りに飲みに行っている様子だが、

口下手な薫子は先輩と2人の時でも、先輩の飲み友達について聞くことが出来ずに

一人悶々と過ごすことも少なくない。


2人で飲んでいる時は、先輩の趣味であるスノーボードの話や映画の話をしたりした。

それに薫子が同調するような相槌を打つ。

映画の話はそれなりにできるので、時折盛り上がったりもした。

そんな日々が流れ、3-4か月経って、先輩との時間にも慣れてきた頃、

行きつけのバーから、そのまま先輩の家になだれ込み

キスの嵐と激情のままのSEXをした。


 事後の先輩はタバコを吸ってビールを一口飲んでいた。

普段、タバコは吸っていなかったので薫子も遠慮していたが、紫煙に誘われて吸いたくなった。

「一本、いただけますか?」

薫子はそういうと、

「いいよ。タバコ吸うんだね。遠慮しなくて良かったのに。はいどーぞ。」

といって、タバコとライターに火をつけてくれた。

「普段は家でしか吸わないんです。なんとなく女性はタバコ吸わないイメージありませんか?」

事後の気だるい時間を、他愛のない話で埋める。


 「日本はお堅いからね。そういうイメージあるよね。僕は彼女がタバコ

吸ってても構わないけどね。」

()()()()()っていいました?」

薫子は驚きのあまり、目が点になっていた。

先輩と一緒だと居心地が良いけど、まさか彼女に昇格するとは

思ってもいなかった。

 「それは、そうでしょ。薫子ちゃんの事好きだから抱いたんだよ。

SEXするったて、誰でもいいって訳でもないしね。」

「先輩、社内でも人望あるからてっきり彼女がいるのかと思っていました。」

「彼女がいるのに、薫子ちゃん誘って飲みに行ったら、その架空の彼女に貼り倒されるよ(笑)」

薫子はそれもそうかと妙に納得した。

「で、私を彼女にしてくれるんですか?」

「僕はそのつもりで、自分のマンションに入れたんだけどね。

薫子ちゃん、もっと自信持てばいいのに。可愛いんだから。」

先輩は事も無げにそんなことを言う。

「私なんて可愛くないですよ!それに初めて言われました。」

「そう?僕には十分に可愛く映ってる。順番逆だけど、だから彼女になってくれない?」

この時には落ち着きを取り戻した薫子は

「はい。喜んで。よろしくお願いします。」

と、満面の笑みで答えた。


そうして、先輩との日々は始まった。

最初のうちは社会人になってからの初めての彼氏ということもあって

大人びた気分に浸り、デートも楽しかった。

暑い夏でも寒い冬でも手を繋いでどこへでも出かけ、

遊び終わると、先輩の少々男臭い部屋で抱き合った。

そして事後の後のタバコと缶ビールで余韻に浸る。


 それもルーティン化してしまい、彼は誘っても都合が悪いと会わない日が続いていた。

会社ではいつも通り接してくれてはいたものの、飲みに誘われなくなった。

そして、おきまりの「僕たち別れよう」が待っていた。

先輩にとっては、薫子との時間は楽しいが飽きていたのだ。

 まだ若く刺激を求める年代の男性には、ぬるま湯のような薫子との時間が

うまらなくなっていたのだ。


薫子は泣きわめくような()()()()()()

姿を晒すこともなく、ただ、「そうだね。それがいいと思う。」

と、ポツリと言って、そのまま別れ、1人映画館に行った。

恋愛ものだったけれど、何の感動も覚えなかったのを覚えている。

気付いたら、さめざめと涙を流していた。

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― 新着の感想 ―
easy come, easy go… 薫子は格好いいですね〜 でも、やはり胸が痛かったです><
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