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8話 魔獣

 泉の底には濃い茶色のでっかくて平べったい魔獣がいて、そいつの口から魔獣がどんどん出ている。


「リオ、とりあえず、こいつの口を塞がなきゃダメだね。縛る?」


「そうだな。魔法で紐を出して……それより、くっつけちまった方がいいんじゃないか?」


「そだね。そうしよ」


 ツェツィーは魔獣の親玉の口に向かって魔法を繰り出した。


 光がツェツィーの手から出て奴の口に当たる。


 ギャー!


 魔獣が声を上げた。


「もう、口がくっついたから声出せないね」


 ツェツィーがくくくと笑う。


「悪魔か」


「リオも共犯だから悪魔だね。さぁ、親玉退治しよ」


 俺達は奴に浄化魔法を浴びさせた。奴は俊敏に動く様子はなかったので、強力な浄化魔法で消せばいいと思っていたのだが……。


 ぶぁーん! ドン!


 魔獣が大きく平べったい体を浮き上がらせ反転させたのだ。


 反動で水流ができ、ツェツィーが流されていく。


「ツェツィー大丈夫か!」


「うん。私のことより、早く殺っちゃって~」


「おぅ!」


 流されていくツェツィーは気になるが、自分でなんとかするだろう。今はツェツィーの言うとおり目の前のこいつをどうにかしないといけない。


 攻撃魔法を連続で繰り出す。


 口はくっついているので魔獣を生み出すことはできない。


 しかし、奴は大きな体で俺の攻撃をかわしていく。


「リオ! 危ない!」


 えっ?


 後ろからツェツィーの声が聞こえてきたかと思い振り返ったら、飛んできた火焔をぎりぎりかわせた。


 あぶね~。胸を撫で下ろした。


「ボンクラしてんじゃないよ」


 流されていたツェツィーが戻っていた。


「流されたんじゃ?」


「私は天才だよ。あんなのへっちゃらさ」


 俺も転生者チートでここは良いところを見せるしかないな。


「ツェツィー、あいつは火に強いみたいだ。案外、凍らせたら面白いかもな」


「そうだね。やれる?」


「もちろん。俺も天才だからな」


 魔獣の親玉に向かって氷魔法を繰り出した。水の中で氷なんてどうなん? という感じだが……。


「馬鹿! やりすぎだよ!」


 へ? なぜ?


 俺の身体が一気に岸に引き上げられた。濡れた衣服や身体はツェツィーの魔法で一瞬で乾く。


 俺の姿を見てロルフは目を丸くしている。


「急に上がってきてどうした? あっ、ちいこい魔獣は大体消したぜ。残りはさっき消えたから、元を浄化したのか?」


 浄化というか……。


「馬鹿リオがやりすぎて泉を凍らせちゃったの。慌てて岸に上がったけど、私達まで凍るとこだったよ」


 キースが俺の肩に手を置いた。


「お疲れ様。このまま浄化しながら泉に結界を張ろう。何重も厚めにかけて、100年氷が溶けないようにしよう」


 さすがキース。


「怪我人はないのか?」


 キースに尋ねてみた。


「領地の騎士が何人か負傷してる。やはり戦いに慣れてないからだな。魔導士が応急処置はしたが、ひとり火傷がひどい騎士がいる」


 魔導士の処置でもだめか。


 ツェツィーが結界を張りながら俺達の方を見た。


「行くよ、どこ?」


「領主の屋敷だ」


「リオ、結界張っといて。フチは濃いめだよ」


 俺を見てそう言うとツェツィーは消えた。


 俺と魔導士達はツェツィーが張った結界の上により強い結界になるために張り重ねていく。


「キース、ツェツィーのところに行ってくれ」


「あぁ。ここはもう魔導士達に任せてリオも戻ろう」


 ロルフと騎士達は戦いの後始末をしている。魔獣が消えると魔石が残るから、その回収も大事だ。魔石は魔道具を使う時に役に立つ。


 後の指揮はロルフに任せ、俺はキースと領主の屋敷に向かった。



◇◇◇



 ツェツィーが人間化していた。久しぶりに見る人間ツェツィー。前に見た時より背が伸びている。


 透明な長い髪、細くて長い手足。黒いローブを着ているがそれがわかる。


 ベッドの上にいる怪我人は、瀕死の重傷のようだ。


 ベッドの脇でテレーザリアが涙を流している。


 やはり、領地の騎士が怪我をしたら領主の娘は心を痛めるのだろう。


 俺はテレーザリアの隣に並んだ。


「テレーザリア嬢」


 名前を呼ぶとテレーザリアは涙を拭き、俺の顔を見た。


「婚約者なのです。酷い怪我でもうダメかもしれない……」


 婚約者?! 婚約者がいたのか?


 カナリアではなかったのか?


 俺はショックで目の前を星がキラキラ飛んでいた。


「リオ、手を貸して!」


 ツェツィーが深刻な顔で俺を睨みつけ叫んだ。


「わかった」


 俺も手をかざし、回復魔法を流す。


 生きている。だから大丈夫さ。


「神様、こいつ死なせないでくれよ。何ごともなかったようにスッキリ治してくれよ」


 俺は小声で呟く。


 そうだ。クマだ!


「ツェツィー、クマ!」


 俺は回復魔法をかけているツェツィーの手首を握りクマになれと言った。ツェツィーはクマの姿の方が魔力が強い。人間化するために使う魔力を治療に使えるのだ。


 ツェツィーは頷き、キースに抱っこしてもらいクマに戻った。


「さぁ、本気出すよ」


 ツェツィーが本気を出せば俺の出る幕はない。この騎士はツェツィーとキースに任せて俺は他の怪我人が集まっている部屋へと移動した。


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