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3話 クマになってしまった

 目が覚めると見渡す限りクマだった。


 母クマらしきクマが私の顔を覗き込む。


「あなたは西の国境での魔獣との戦いで大怪我をしたのよ。ツェツィーの回復魔法で傷は治ったのだけれど、頭を強くて打ったせいで、意識がなかったの。目が覚めてよかったわ」


 父クマらしきクマも私の頭に手を置き微笑む。


「本当によかった。意識が戻らなかったらどうしようかと思ったよ」


 クマが普通に話をしているのが不思議でたまらない。


「クマ……」


 心の声が飛び出してしまった私に母クマは眼を丸くした。


「まぁ、何を言っているの? あなたもクマじゃない。そりゃ、外に出る時は人間化するけど、みんなプライベートエリアの中ではクマのままよ」


「私もクマ?」


「もう、やっぱり頭を打って、意識不明の時間が長かったから変になっちゃったのかしら? それに私なんてどうしちゃったの?」


 母クマは困ったような顔をして私を見ている。


 よく見ると、確かに手には黒い毛に覆われていてもふもふしている。私はクロクマか? 布団をめくってみると、身体も黒い毛でもふもふしている。胸のあたりは白い毛がある。顔は見えないが、多分クマだ。間違いなくクマになってしまった。


 茫然としている私の頭の中にクマの私のこれまでの記憶が流れ込んできた。


 私は熊獣人の国に転生したようだ。名前はリオンハルト。それでリオ呼びなんだな。そこは前世と同じなので馴染みやすい。


 今は17歳。熊獣人の国の第一王子だ。転生しても王子とは。また同じことを繰り返さないように、今度は魅了の魔法にかからないように気をつけなければ。


 クマ獣人は外に出る時や外交の時など人を会う時は人間化する。この国は王族も貴族も民も皆そうしている。


 私の家族は国王である父、王妃の母、弟がふたりいる。この国は前世の国と同じで魔法がある。ただ、前世は魔法を使うのは魔導士だけで、普通の民は使えなかったが、この世界では皆が普通に魔法を使う。そして、前世と違うところは魔獣が発生することだ。


 私達は魔獣が民に危害を加えないように結界を張ったり、戦ったりしている。王家は率先して戦いに出る。もちろん私も魔獣と戦う。クマ獣人は皆、クマとしての戦闘能力に魔力が加わるので強い。


 頭の中に入ってきた情報と前世の情報を融合している間、ぼんやりしていたので、みんなはまだ本調子でないと心配していたようだ。ベッドの周りを見渡すと黒いクマ、茶色のクマ、そして白いクマもいる。前世で、これだけクマがたくさんいるのを見たことがない。しかも皆立ち上がっているので変な気分だ。


 私は転生者チートか、かなり強く、魔法もガンガン使え、魔力も底なしらしい。それゆえ、今までは怪我をしても回復魔法ですぐに回復し、意識不明になることなどなかった。今回、意識不明になったのは、きっと前世の記憶を思い出すタイミングだったのだろう。


 そうだ。カナリア。カナリアに会わねば。私はカナリアに会って心から謝罪し、妻にし、生涯愛し愛され、愛を貫くために転生したのだ。カナリアを探さなくてはならない。カナリアに愛を乞わねばならない。


「父上、私には婚約者はいないでしょうね?」


 父はきょとんとした顔で私を見る。


「お前は婚約者は自分で決めるからいらんと言っていただろう。だからおらん」


 よっしゃー! 私はベッドの上でガッツポーズをした。


 今回での戦闘で受けた私の怪我はかなり酷かったそうだ。利き腕と右脇腹を食いちぎられ、火傷も酷く、何箇所も骨折していた。それでも魔獣を全て排除し、湧き出ていた泉を浄化した途端に意識を手放した。


 父の話では、その後、魔導士のツェツィーが回復魔法を施し、なんとか元の形に戻したが、ダメージが強く、なかなか意識が戻らなかったそうだ。


 今の私は完全復活とまではいかないが、まぁ、今すぐにでも戦闘に出られるくらいには戻っている。


 戦闘もだが、カナリアを探しにいかねば。私は父に相談をしてみた。


「父上、私は妻になる人を探しに旅に出たいと思っています。きっとこの国のどこかにいるはず。行かせて下さい。お願いします」


 父は腕組みをして何かを考えているようだ。


「旅は無理だ。ただ国のあちこちから小規模な魔獣討伐や瘴気の浄化の依頼があるのはお前も知っているだろう? 移動魔法で飛んで瘴気を浄化し、魔獣を退治して、その地でちょろっと嫁探しをしてくるというのはどうだ?」


 確かに一石二鳥という訳ではないが、それなら行った先でカナリアを探せる。


「しかし、いつまで私なんだ? 目覚めてからのお前の言葉遣いが美しすぎてちょっと引くぞ。今までのお前は荒っぽかったからなぁ」


 父は苦笑いをしている。


「ツェツィーが回復魔法をかけた時、言葉や動作まで回復させたのか?」


「そうかもしれませんね。ツェツィーは天才だから、言葉遣いまで回復したのかも?」


 私は苦笑いをした。そういうことにしておこう。


 ツェツィーはまだ子供なのだが、天才魔導士と呼ばれている。周りはツェツィーの魔法のせいだと思っている。まだリオンハルトに慣れず、リオネルの話し方が出ているだけなのだが、ツェツィーのせいにしておこう。早くリオンハルトの話し方に慣れないといけないな。


 とりあえず父からOKをもらった。もう少し回復し、完璧になったら出発しよう。

私はカナリアに会える日を思いワクワクしていた。早くカナリアが見つかるといいなぁ。


お読みいただきましてありがとうございます。

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