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2話 神様ってか?

 自分のしたことに絶望し、泣き叫び続けていた。


 カナリアを愛していた。


 命よりカナリアが大切だった。


 カナリアなしでは生きていけないくらい愛していた。


 それなのに魅了の魔法なんかにかかり、カナリアを傷つけ、挙句に殺してしまった。


 カナリアの父親は我が国の宰相だった。国王である私の父とは幼い頃からの親友で、ふたりで支え合い、国を良くしていっていた。


 カナリアの母親は王妃である私の母の妹だった。ふたりとも私が生まれた時から、私を大切にしてくれた。


 カナリアの兄は近衛騎士でいつも私を守ってくれていた。ザラに夢中になっている時に私に苦言を呈してくれた。


 男は皆、ザラの魔法にかかり、ザラの意のままになったのに、カナリアの父親と兄だけはかからなかった。私とはカナリアへの愛の深さが違ったのだろう。


 私はカナリアを愛していたが、何処かに隙があったのだろう。そこにつけ込まれ魔法にかかってしまったのか。


 カナリアは私のために王太子妃、そして王妃になるために毎日、勉強していた。文句も言わず、弱音も吐かず、いつも微笑んで「リオ様のためなら頑張れます」と言ってくれていた。


 優秀で非の打ちどころのないカナリアに嫉妬していたのかもしれない。


 優しくて、慈悲深く、いつも私のことを気にかけてくれていたカナリア。


 プラチナブロンドの艶やかな髪、可憐で儚げな菫色の瞳。小柄で抱きしめると折れそうなくらい細いのにとても柔らかく豊かな胸。小さい丸い顔に大きな丸い眼。小さな鼻、そして小さいがぽってりとした鮮やかな赤い唇。愛しくてたまらない。


 なぜ嫉妬などしたのだろう。全て私のために頑張ってくれていたのに。馬鹿だ。私は大馬鹿だ。


 会いたい。カナリアに会いたい。


「やっと好きな女を思い出して後悔に浸っているようだけど、そろそろあんたの行き先を決めなきゃいけないんだよ。さて、何処にいきたい?」


 男は薄ら笑いを浮かべながら私に問う。


「カナリアに会いたい」


「そりゃ無理だ。カナリアは天国のもっと上、神の領域にいる。あれは神の愛し子だったからな」


「神の愛し子?」


「なんだそんなことも知らなかったのか? 神から愛され、たくさんのギフトを与えられていた。カナリアがいるだけで国は栄え、民は幸せだったのに、お前が殺しちゃったから、国は無くなった」


「そうか。私が馬鹿だから愛するカナリアを殺し、国を潰した。やり直したい。ザラに会う前に戻ってもう一度やり直したい……」


 男の顔を見た。男は腕組みをして難しい顔をしている。


「時戻しは無理だ。未来が変わる可能性がある。それはできない」


 男は大きく息を吐いた。


「実はな、カナリアもお前に心残りがあるんだよ『あれは本当のリオ様ではない。リオ様はきっと魔法か何かにかけられていたのよ』って言っていたぜ。全くカナリアの慈愛ぶりには参ったよ。さすが神の愛し子だな」


 カナリアはそんなことを言っていたのか。たしか処刑前にも「リオ様、正気に戻ってください。私に魔法を解く力があれば……」と言っていた。


 あの時は何を戯言を言っているのだとカナリアを罵ったが、カナリアは全てわかっていたのだ。


 情けない。本当に自分が情けない。


 あの時は冤罪で処刑されるというのに、私を罵ってくれればよかったのだ。それなのにカナリアは微笑み、私の心配をしていた。


 私は自分の馬鹿さ加減に唇を噛んだ。


「なぁ、時戻しは無理だけど転生はどうだ? お前達は全く違う世界に全く違う人間として生まれ変わる。同じ世界の同じ時代に、年も同じくらいに生まれ変わらせてやるよ。本当はお前なんて地獄の底でずっと無限に苦しめてやりたかったが、カナリアに思い残しがあったから、それを解消してやりたい」


 男は苦虫を噛み潰したような顔で私を見た。


「お前がカナリアから受けた恩は山よりも高く海よりも深いんだぜ。来世では一生カナリアのために生きろ。カナリアからどんな目に遭わされてもな」


 男は乾いた笑いを浮かべなから消えた。

そして私の目の前が真っ暗になった。



◆◇◇



「リオ! リオ! しっかりしろ!」


 誰かの声が聴こえる。


「リオ、眼を覚まして!」


 眼を覚ませって?


 そうだ。神さまは転生させてやると言っていた。私は転生したのか?


 ゆっくりと眼を開いてみた。


 するとそこには心配そうな顔をしたクマ……クマ?!


 沢山のクマ達が私のベッドの周りを取り囲んでいた。    


お読みいただきましてありがとうございます。

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