【最終話】リオはなかなか気づかない
病院に着くと、子グマのツェツィーがまだアマーリアの好きな奴の治療をしていた。
「ツェツィー、心身体力増強魔法をかけてやろうか? すぐに治せるぜ」
ツェツィーは呆れたものを見るような目で俺を見る。
「この人は鍛えていても普通のクマだよ。そんな強い魔法かければすぐに回復するだろうけど、元の身体や心がついていけないよ。みんな自分と一緒にするな。自己治癒力を弱めないためにゆっくりやらないとだめなんだよ。馬鹿だな」
馬鹿かよ。良かれと思ったのにひでーな。
ツェツィーは俺の頭の上で指をパチンと鳴らした。
なんだこの重さは? 身体も心も重い。
「心身体力増強魔法を解いたの。リオだからこんなんで済んでるけど、普通のクマはもっとしんどいよ。だから無闇に使うんじゃないよ」
「わかった。どうしたら治るんだ。」
「寝る」
俺はツェツィーに言われたとおり眠った。
どうやら討伐に参加していて、俺が勝手に心身体力増強魔法をかけた奴らもみんな眠っていたようだ。
◇◇◇
俺達は王都に戻ることになった。アマーリアは好きな奴に付き添っている。ずっと手を握って愛の回復魔法を流し続けている。
「あれはいいのか?」
「微量をゆっくり長く流すのは有効的なんだ。姉様はこのままずっとこっちにいるみたいよ。リオ、残念だったね」
ツェツィーは憐れんでいるような顔で俺を見た。
「いや、いいんだ。アマーリアはカナリアじゃないし。俺はカナリアを探すよ」
そうだ。次の討伐先でカナリアを探そう。どこかにきっとカナリアがいて俺が迎えにくるのを待っているはずだ。
「そう。じゃあ頑張って探してね。私とキースはもう少しこっちにいるよ」
「おっ、そうか。魔石のこと頼むわ。領地の者に還元できるようにしたい」
「そうだね。これだけ魔石があれば色々できるもんね。じゃあね。お疲れ様でした」
怪我をした領地の男達も何人かの重症者以外は元気になり、元の暮らしに戻っているようだ。あれだけの魔石があれば生活も楽になるだろう。魔石は魔道具を使う時のエネルギーになる。色々な魔道具が使えるので暮らしも楽になるだろう。
ロルフとエミーリアはすっかり仲良くなっているようだ。
「リオ、王都に戻ったら俺達婚約することにした」
ロルフが顔を赤らめている。
「エミーリアいいのか?」
エミーリアは頷く。
前世で婚家や夫から酷い扱いを受け、身体を壊して儚くなってしまったジュリアの生まれ変わりのエミーリアには幸せになってほしい。
「ロルフは裏表がないし、脳筋だからあいつらとは違う。信用できるもんね」
「あぁ、荒っぽいが信用できる男だ。今世では幸せになれるな」
「リオもね。まぁ、まだ、そう簡単にはカナリアを見つけられないかもね」
なんだよ。エミーリアはカナリアを知っているのか?
「神様から教えてはいけないって言われてるのよ。自分でみつけなさいな」
エミーリアはふふふと笑った。
いつかきっとカナリアを見つける。
そして今度こそカナリアを幸せにするんだ。
俺は再びカナリアを探し出し幸せにすると誓った。
◇◇◇キース視点
「アイツ全く気づかないな」
「いいのではない。まだまだ修行が足りないと神様が思っているのよ。10年くらいかかるかもしれないね」
リアはクスクス笑う。
カナリアの生まれ変わりのリアは誰よりもリオの傍にいるのにな。
これも神様の采配なのだろう。
「前世でカナリアに嫉妬した心の隙間につけ込まれ、魅了の魔法にかかったお仕置きだな。まぁ、でも今世のリオは、前世のリオと違ってハガネのメンタルだからなぁ」
「そうね。嫉妬したら、前世の時みたいに心に溜めないで、口から『お前すごいな、嫉妬しちまうぜ~』て言ってしまうものね」
リアはクスクス笑う。
「私も前世とは違って耐え忍ぶのは苦手。今は辛辣でズケズケ言っちゃうキャラだもの。神様がキャラ変してくれたので今世は楽~」
確かに前世のカナリアは見ている方が辛くなるくらい耐え忍んでいた。
一途にリオを思い、リオのために生きていたと言っても過言ではない。だから神様は今世では性格をガラリと変えた。
けれども俺にとっては何も変わらない可愛い妹だ。
「俺はすぐにリアがカナリアだと気づいたのに、なんでリオは気づかないのだろう?」
「それは神様の采配。気づいても私が受けいれるかどうかは別の話だしね」
リオよ。早く修行を積んで、すぐ近くにいるリアに気づけ。
それまでは俺がリアを守ってやるからな。
頑張ってリアに惚れられる男になるんだぜ。
「キース行くよ」
「あぁ」
俺はツェツィーリアと一緒に王都に戻った。
〈了〉
***
これにて完結です。
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