12話 次の任務
父が呼んでいるとツェツィーが俺達を呼びにきたので、ロルフ、キースと一緒に執務室に向かった。
ロルフが楽しそうな表情をしている。奴は少し戦闘狂なところがある。魔獣を退治するのが大好きなのだ。
俺はどちらかといえば嫌いだ。戦いより、浄化したり結界を張る方がいい。リオネルの意識が戻ってからはよりその傾向が強くなった。リオネルは平和主義だったからな。
「次の討伐かな?」
「そうだろうな」
また戦闘か。魔獣といえど殺していくのは良い気はしない。しかし、ロルフはスカッとすると言う。人それぞれだな。
執務室に行くと、アマーリアとエミーリアがいた。
「今度の討伐にはツェツィーの代わりにアマーリアとエミーリアに参加してもらう」
ロルフは嬉しそうだ。俺もきっと顔がにやけているだろう。
ひとりだけ難しい顔のキースが父の顔を見た。
「ツェツィーは?」
「ツェツィーには別の任務を頼む。キースもツェツィーと合流してほしい」
子グマと子グマ使いは別任務か。その分をアマーリアとエミーリアなんだな。
アマーリアとエミーリアはツェツィーの姉だ。
ふたりとも美人で色が白く、胸が大きくて腰が細い。
アマーリアは17歳、エミーリアは15歳だ。その下に弟が二人いてツェツィーは5人姉弟の末っ子になる。
白いクマは魔力が強く、皆、生まれながらにして魔導士。その中でも末っ子のツェツィーは別格らしい。
「私達でツェツィーに比べると力は劣りますが、皆様の足を引っ張らないように頑張ります。よろしくお願いします」
アマーリアの挨拶にキュンとなる。
「俺が命に変えてもお二人を守ります」
「俺も守るぜ。まかしときな」
俺一人で抜け駆けしようとしたらロルフも乗っかってきやがった。
「ありがとうございます。でも、私達より、魔獣討伐を優先してください」
なんて良い子なんだ。やっぱりアマーリアいいなぁ~。
ツェツィーがとことこと歩き、俺の傍に来た。
「姉様に変なことしちゃダメだよ」
俺の耳元で囁く。
こいつ、俺の心が分かるのか?
いや、別に変なことをしようなどとは思ってない。ただ、愛し愛されるような関係になれたらいいなと思っているのだが。
「姉様は好きな人がいるの。だからだめだよ」
好きな人が俺だという可能性がないわけじゃないだろう。
「リオじゃないから」
やっぱり俺の心がわかるようだ。ツェツィーのひと言がグサリと俺の心に刺さった。
◇◇◇
今度の任務先もまた泉からの瘴気がすごいらしく、前と同じように最悪、泉を凍らせ封印するしかないようだ。大丈夫だとは思うがツェツィーがいないので少し不安になる。
アマーリアとエミーリアの二人と一緒に討伐に行くのは初めてだ。二人の力がよくわからないがツェツィーと同じではないだろう。
「では、明日出発する。今回も頼んだぞ」
「はい!」
キースとツェツィーは残って、自分達の任務内容を聞くようだ。
俺はアマーリアの傍に行き、声をかけた。
「アマーリア嬢、エミーリア嬢、お二人はどんな魔法がつかえるのですか?」
俺の言葉に、後ろにいたエミーリア嬢が前に出た。
「私は攻撃魔法が得意。浄化は姉がやります」
いやいや、俺はアマーリアに聞いたんだ。
まぁ、いいか。
エミーリアは白いウェーブのかかったロングヘアでナイスバディではあるが、目がつり気味で気の強そうな顔をしている。
こうやって見ると、人間化したツェツィーは白というより透明な感じだった。俺達、黒や茶のクマも微妙に濃さが違うように白のクマも違うのだな。やはりツェツィーの魔力は飛び抜けているから透明なのだろうか?
ロルフが嬉しそうな顔でエミーリアを見た。
「お~、攻撃魔法か。いいなぁ。俺も攻撃魔法が得意だ。魔法剣は使えるか?」
「もちろん」
二人は攻撃話で盛り上がり始めた。このチャンスを逃してはならないとばかりに俺はアマーリアに声をかけた。
「アマーリア嬢は浄化が得意なのですか?」
「いえ、得意というほどではありませんわ。浄化も回復魔法も人並みで、ツェツィーの足元にも及びません。殿下の浄化魔法は素晴らしいと常々ツェツィーから聞いております。微力ではございますが頑張ります」
いい。この謙虚さたまらん。
いつも偉そうな子グマとは大違いだ。やっぱりアマーリアがカナリアだ。カナリアも謙虚だった。いつも一歩引いて俺の傍にいてくれた。
子グマは一歩引くどころか、いつも俺の前や上にいる。しかも偉そうで10歳も年上の俺にガンガン命令する。まぁ、ツェツィーがカナリアであるわけはないからどうでもいいのだが、姉妹でも偉い違いだ。
「大丈夫。絶対俺が守ります。ちゃちゃっと魔獣を倒したら、一緒に食事でもしましょう」
アマーリアはこくりと頷いた。
どさくさに紛れてご飯の約束したぜ! ロルフには内緒にしておこう。
俺は小さくガッツポーズをした。
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