11話 前世の記憶(キース視点)
全くリオにも困った者だ。
リオネルの生まれ変わりならリオネルの性格そのものだと良かったのだが、転生に気づくのが遅かった為にリオンハルトの性格がすでに形成されていて、そこにリオネルが混ざった。本人も違和感があっただろうな。
それにしてもカナリア探しか。灯台下暗しなのに。
俺がクマ獣人のキースに転生したと気がついたのは5歳の時だった。クマ獣人の子供は5歳になると人間化することができる。人間化には魔力が必要なので、小さい子供はクマのままでのんびり暮らしている。
5歳になり、初めて人間化した時に自分の姿を鏡で見て、誰かに似てる、見たことある……と思っていたら、前世の記憶が流れ込んできた。
俺はデーニッツ王国でブルーム公爵家嫡男のルーファスだった。
父は宰相、妹は王太子の婚約者で神の愛し子だった。
我が家門は、代々一門の中から神の愛し子が生まれる。国にとってなくてはならない重要な家門だ。
神の愛し子のいる国は繁栄する。言い伝えどおりデーニッツ王国はとても繁栄していた。
妹は王太子の婚約者だったが、神の愛し子は象徴的な存在で王太子妃、王妃というのは避けたいと、最初は国王夫妻や父は妹のカナリアは第2王子と婚約させようと思っていたらしい。
だが、美しいカナリアに一目惚れした王太子リオネルが、カナリアを婚約者にしたいと国王夫妻に懇願し、あまりの執拗さにリオネルとカナリアを婚約させた。
ふたりはとても仲が良かった。だが、リオネルに比べカナリアは優秀すぎた。皆がカナリアを褒め称えるたびにリオネルは歪んでいったのだろう。
学校に入ってからリオネルはカナリアを避け出した。カナリアはそれほど気にしてなかったが、俺から見た酷く拗らせているように感じた。
リオネルが誰よりもカナリアを愛しているのはわかっている。素直になればいいのに変なプライドが邪魔をしていた。
カナリアは忙しさのため、学校を2年で飛び級で卒業した。カナリアのいない学校に編入生が来た。男爵令嬢のザラだ。そのザラに男達は夢中になった。なぜあんな令嬢に夢中になるのかわからなかった。皆、まるで下僕のように彼女の傍にいた。
リオネルもそのひとりだった。いや、いちばんザラの傍にいた。
その頃からリオネルは変わっていった。以前は拗らせてはいたが、カナリアに対して以外はちゃんとしていた。それなのにまるで暴君と化していた。
「お兄様、リオ様はきっと魔法にかけられているのよ。あのザラ嬢が禁忌の魔法を使っているに違いない。魔法であんな風になっているの。魔法が解けた時、自分がしたことを知ってリオ様はきっと嘆き悲しむわ。今ならまだなんとかなる。ザラ嬢を調べて」
妹のカナリアはリオネルを信じていた。あんな拗らせていたリオネルを心の底から愛していて、全て承知の上でリオネルを救おうとしていた。さすが、神の愛し子だ。
俺ならリオネルなんか捨てて他国に逃げる。
俺と父はザラ嬢のことを調べ始めた。その結果、ザラ嬢はジンメル王国の間者だとわかった。しかし、王宮は国王までがザラ嬢の魔法にかかったようであれ程頼りにしていた父を疎むようになり聞く耳を持たなくなっていた。
魔法にかかっていなかった妃殿下は、ザラ嬢を排除しろと国王に言い、離宮に幽閉された。皆が間者のザラ嬢の言うがままになっているこの国に未来はない。すぐにジンメル王国に攻めこまれるであろう。
父は宰相を辞め、ブルーム一門を他国に亡命する計画を立てていた。
しかし、カナリアがザラ嬢に危害を加えたの冤罪で我がブルーム家一門は一族郎党末端に至るまで処刑された。
神の愛し子を自ら殺した国など滅ぶしかない。
カナリアは最後までリオネルを気にかけていた「リオ様は悪くないの。魔法にかかってしまっただけ」と。
俺からすれば魔法にかかったこと自体が罪だ。隙がなければあの魔法にはかからない。やはりリオネルはダメな奴だったのだ。
5歳の俺は王子の乳母をしている母と近衛騎士をしている父と一緒に王宮に住んでいた。
同じ年のリオンハルト王子がリオネルの生まれ変わりだとすぐにわかった。
今世ではこいつの傍にいて、こいつを矯正することが俺の使命のようだ。
俺は前世の記憶など全くないふりをして生きてきた。
リオンハルトがリオネルの記憶を思い出してからも俺は知らんふりをしている。
リオンハルトは反省していた。前世の自分を後悔していた。
リオネルに比べてリオンハルトは陽気で軽い。クマ獣人の性質かもしれないが、楽天的で安易なのだ。
魅了の魔法にかけられる前のリオネルは落ち着いたしごくまともな男だった。
カナリアを探して誠心誠意謝って、今度こそ幸せにすると言うが、はたしてカナリアをみつけることができるかな。
カナリアは尻尾を出すだろうか?
「リア、そろそろリオにお前がカナリアだと教えてやるか?」
「まだまだですわ。お兄様。リオ様にはもう少し修行を積んでもらわなくては。この国をデーニッツ王国のようにするわけにはまいりません。心身ともに鍛えて、魅了を跳ね返すくらいになったら考えますわ」
カナリアはふふふと笑った。
俺はあいつの傍で、まだまだあいつを鍛えなきゃな。
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