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日本全国鐵輪巡礼 ~駅夫と羅針の珍道中~  作者: 劉白雨
第拾壱話 刈和野駅 (秋田県)
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拾壱之拾壱


 生野いの夫妻を見送った旅寝駅夫と星路羅針、それに平櫻佳音の三人は、平櫻の動画撮影に付き合っていた。


「今回の目的地、刈和野駅に到着しました。

 いかがですかこの景色。ぐるっと山に囲まれた、自然豊かな場所で、子供の頃から噴煙を吐く桜島を見て育った私にとっては、穏やかなこの緑の山々は凄く新鮮で、落ち着きます。素敵ですよね。

 この刈和野駅は奥羽本線の駅で、秋田市に隣接する大仙市に位置します。

 大仙市は、なんと7万人の人口を擁し、秋田県内第三位を誇るそうです。あの花火で有名な大曲もこの大仙市にあるんですよ。

 それと、小京都と呼ばれる角館とか、日本一の水深を持つ田沢湖なんかがある仙北市は、この大仙市の北側に隣接してるんです。

 ちなみに、皆さんは大曲の花火ってご覧になったことはありますか?私は一度だけ拝見しました。あの迫力は言葉では言い尽くせないですよね。

 ただ、今回はHさんとTさんのルーレット旅に同行しているので、残念ながら、これらの有名な観光地には行かないんですよ。ね、Hさん。」

「はい。私たちの決めたルールでは、目的駅が所在する市区町村を観光するというのが大前提なので、基本的にはその町で観光することにしています。」と平櫻の合図に合わせて、羅針が画面外から予め用意した答えを言った。

「ありがとうございます。ということですので、これらの有名な観光地に、今回は行きません。大曲の花火や、角館と田沢湖を紹介した、過去動画のリンクを貼っておきますので、そちらも良かったらご覧ください。

 という訳で、今日はたっぷりとここ大仙市の一角にある刈和野の町を散策したいと思います。

 さて、この刈和野の町ですが、人口三千人余りの小さな町で、日本海に注ぎ込む一級河川の雄物川に面し、国道13号線と奥羽本線が町を横切っています。

 秋田空港までは車で約30分、秋田駅までは列車で約40分、大曲までは10分強で行くことができ、秋田新幹線の通り道にもなっていて、とても便利な場所です。

 また、ご存知の方も多いと思いますが、この町は、一世を風靡したパフォーマンスグループで人気を博し、その後刑事ドラマでは朴訥ながらも熱いものを内に秘めた人物に扮し、作中では秋田弁も披露され、今や俳優としても名を馳せているタレントさんの出身地でもあります。皆さんの中にもファンの方が大勢いらっしゃるんかも知れませんね。今回の旅でゆかりのものに出会えると良いですね。

 そして、刈和野と言えば、この町一番の目玉行事である、国指定重要無形民族文化財の大綱引きという、巨大な綱を引き合うお祭りがあります。あそこにチラリと見えているのが、その祭で使用される大綱の一部だそうです。どんなお祭りなのかは、後程詳しくご紹介いたしますので、お楽しみに。

 それでは、早速散策を始めたいと思います。Hさん、Tさん、よろしくお願いします。」

 動画を撮り終えた平櫻は、「すみません。お時間を頂いて。」と言って、拍手をしている二人に頭を下げた。


「凄いね、プロのアナウンサー顔負けのしゃべりだよ。流石だ。」

 駅夫は感心頻りだ。

「良いんですよ、時間は気にしないでください。今日はこの町を散策するだけで、夕飯までに宿に戻れれば良いので、のんびりと行きましょう。」

 羅針はそう言って微笑んだ。

「そうそう、のんびりが一番。せせこましいのは詰まらないし。」

 駅夫がそう言って頷いている。

「あのぉ、せせこましいってどういう意味ですか。慌ただしいとかって意味ですか。」

 平櫻が尋ねる。

「そうだね。そんな感じの意味だよ。あれ、これ標準語だよな、それとも死語か、羅針?」

 駅夫が平櫻に返事をするも、自信がないのか羅針に確認する。

「せせこましいは、狭苦しいとか、慌ただしいって意味で使う言葉だそうです。一応、標準語にはなってるみたいですよ。元々は京都の方で使用されていたらしいけど、今は全国で使用されているようですね。特に関西圏ではよく使われるそうですが、死語でも方言でもないみたいですね。」

 羅針は、平櫻に向かって、スマホで確認した事を伝える。

「すみません。わざわざ調べて貰って。ありがとうございます。」

 平櫻は恐縮したように礼を言って頭を下げる。

「良いんですよ。駅夫からはいつも質問攻めなので、手間じゃないですから。」

 羅針が笑いながら言う。

「なんだそれ。まあ、質問攻めしてるから文句は言えないけどさ。」

 駅夫が文句を言おうとするが、藪蛇になると思い諦める。


 ホームから景色を撮影し満足した平櫻を連れ、跨線橋に上がってくると、壁に掲げられた大綱引きのポスターの前で、昨日、駅夫にした大綱引きの講釈を、羅針は同じように平櫻に垂れ、刈和野鉄道唱歌に目を留めた平櫻が写真に収めると、ステンレスの扉を抜けて、雑居ビルのような駅舎の階段を降りていった。


 駅舎内を写真や動画に収めて、外に出てきた三人は、駅舎の前でも記念撮影をした。

「公民館みたいですね。」

 〔円形ベイウィンドウ〕や〔バウウィンドウ〕と呼ばれるような出っ張り窓がある、この和洋折衷の建物を見て、平櫻がぼそりと呟く。

「だよね。俺も昨日そう思ったんだよ。なあ、羅針。」

 駅夫が仲間を得たというように、嬉しそうに言う。

「ああ。確かに公民館にありそうな建物だよなとは、私も思いましたよ。駅舎らしくないですよね。」

 羅針が平櫻に向かって応えた。


 三人は駅舎の隣にある、大綱が展示されている建物の前に移動する。

 平櫻に、駅夫が昨日羅針から仕入れたばかりの情報を、得意げに教えている。平櫻は初めて見る巨大な綱に驚き、感心し、駅夫の話に耳を傾けながら、動画の撮影をしていた。

 ガラス越しの大綱をバックに記念撮影をしたら、いよいよ刈和野の町を散策である。


 刈和野の町は車が時々走っては来るが、人通りはほぼない静かな町で、三人は歩きながら、思い思いに写真を撮ったり、動画撮影したりしていた。平櫻はレポートをしているのか、時折カメラに向かって何かを喋っていた。

 三人は住宅街を抜けていく。昔ながらの家屋が並ぶ中に、最近建てたと思われる新しい様式の建物も散見され、新旧織り混ざった町並みが、どこかリアルな郷愁を感じさせる。


 そんな住宅街のなかにいきなり大きな銀色の建物が現れた。大綱交流館である。

 壁面には、法被を羽織った男たちが睨み合いをしている巨大な絵に、刈和野の大綱引きという赤い文字が描かれていた。


「ここは?」

 駅夫が羅針に聞く。

「大綱引きに関する歴史とかが学べる場所かな。」

 羅針が答える。

「やはり、大綱引きについて学ばないと、刈和野に来た意味がないですからね。」

 平櫻もそう言って、壁面の絵を写真に収め、動画を撮影し始めた。


 建物の前で、記念撮影をした三人は、早速中へと入る。

 ここは、資料館と言うよりも完全に公民館で、会議室やホールなども貸し出され、様々な催し物もおこなわれているようだ。また、隣に建つ大綱の里伝承館では、大綱の制作がおよそ一月掛けておこなわれるという。


 平櫻は予め撮影の許可を取っていたのか、事務室で許可の確認をしていた。

 館内には特に展示物がある訳ではなく、ホールの壁面に説明書きと写真パネルが有るだけだったが、三人はその説明書きを端から丁寧に読んでいった。


 刈和野の大綱引きは、室町時代から伝わる行事で、その由来は、平将門たいらのまさかどの一族である長山氏ながやましが刈和野に土着し、その氏神である市場の神〔市神いちがみ〕を祀る祭事として始められたといわれている。

 現在では上町と下町に別れて綱を引き、上町が勝てば米の値段が上がり、下町が勝てば豊作になるとし、その年の〔お告げ〕を占う行事として、町を挙げておこなわれている。

 大綱は、その先端が〔ケン〕と呼ばれる男性の象徴である雄綱と、〔サバグチ〕と呼ばれる女性の象徴である雌綱に分かれ、長さは雄綱が42ひろ(約64m)、雌綱は33尋(約50m)で、直径は80㎝、重さは雄綱雌綱を合わせて約20トンにも及ぶ。この雄綱と雌綱を繋ぎ合わせて綱引きに供するのだ。この雄綱と雌綱を繋ぎ合わせることは、子孫繁栄、五穀豊穣を祈念する意味合いもあるようだ。毎年2月10日に数千人規模でこの大綱を引き合うという。

 パネルは大綱の準備から、当日の神事、そして本番の綱引きに至るまでが時系列で展示されていた。写真には祭の様子が写し出され、人々の熱気と情熱、そして伝統を大切に守っているという気概が伝わってくるようだった。


「このジョウヤサノーってどういう意味なんだろうな。」

 駅夫がパネルに載っていた、綱を引く時に掛ける掛け声について羅針に聞いた。

「さあな。俺も調べたけど、どこにも出てこなかった。多分〔セーノ〕とか、〔一斉のぉせ〕みたいな意味じゃないのかな。」

 羅針はお手上げのポーズで答える。

 駅夫は、平櫻の方を見るが、平櫻も首を横に振って「分からない」と言った。


 説明書きの下には、実物大に描かれた大綱から引き綱がぶら下がっていて、引っ張っている雰囲気を味わえるようになっていたので、三人は、代わる代わる引っ張って、写真を撮り合った。

「ジョウヤサノー」

 駅夫が、掛け声を真似して綱を引いてポーズを取り、羅針が一眼にそれを収める。その後平櫻がカメラを動かしながら、あたかも引いているような演出を加えた動画を撮った。

 羅針が撮った写真も、平櫻が撮った動画も、なかなか迫力のある映像にはなったが、いかんせん絵に描いた大綱の前である、引き綱は本物であっても茶番感は否めない。

「流石二人とも撮影のプロだな。」

 駅夫がそれでも満足そうにしていた。

「役者がダイコンだからな。違和感は否めない。」

 羅針がからかうように言う。

「そんなことないですよ。熱演で、良い感じでしたよ。」

 平櫻がフォローする。

「平櫻さん、そう言われると、余計心に響くから、やめて。」

 駅夫が、情けない声で懇願すると、堪えきれなくなって笑い出した。

 平櫻も、羅針もそれにつられて笑いだした。


 三人は、階段を上がり2階に上がると、階段の上にはガラス窓に仕切られた展示室に大綱が展示され、満月と雪景色が、祭が終わった後の静けさを演出しているのか、それともこれから始まる祭の前の静寂を演出しているのかは分からないが、そこに鎮座する大綱はなにか神々しい神具、もしくは神宝のようにも思えた。


「展示はこれだけなんだ。」

 駅夫はどこか期待外れのような声を発する。

「まあ、ここはメインが公民館だからな。しょうがないよ。」

 羅針も思ったより、展示物のなさにがっかりしたが、見せて貰っただけでも感謝するべきというスタンスで、駅夫に言う。

「ちょっと物足りなかったですが、これだけでも充分学べたと思います。無形民俗文化財ですからね。ここまで資料を揃えるのも大変だったんじゃないでしょうか。」

 平櫻が、この資料を作った人たちを労うように言う。

「こういう小さい展示があるお陰で、文化が絶えず、継承されていくんだから、感謝しなきゃ。」羅針がそう言うと、

「確かにそうだな。何事にも感謝、だったな。」

 駅夫がそう言って。展示されている大綱に向かって手を合わせた。

 その様子を見た羅針と平櫻は、微笑ましそうな眼差しで笑顔になった。


「すみません。あのジョウヤサノーってどういう意味があるのか教えて貰えますか。」

 平櫻が、事務所に撮影が終わったことを伝えに行った時、ついでに尋ねた。

「ジョウヤサノーってしゃべるのは、特さ意味はねんだべ。昔がら使われでら掛げ声で、敢えでしゃべるだば気合いどご入れる言葉だがなァ。」

 そう、事務員の方が教えてくれた。

 三人はお礼を言って、建物を後にした。


「本当に掛け声なんだな。」

 駅夫がそう言って、自分の中で消化しようとしていた。

「ああ、気合いを入れる時に使うって言ってたな。」

 羅針が応える。

「大綱引きの時だけ使われる、特別な言葉なのかも知れませんね。」と平櫻が言う。

「そうかも知れませんね。」と羅針。

「実際に見に来たくなりました。こんな静かな町に、数千人が一堂に会して綱を引くなんて、その熱気と活気を想像しただけでワクワクしませんか。」と平櫻。

「私たちも、昨日来たいなって話にはなったんですよ。」と羅針。

「でも、極寒の二月に秋田に来るのは大変だぞって話になって、躊躇してるんだよ。」と駅夫が口を挟む。

「そうなんですね。確かに極寒の秋田はちょっと大変ですね。でも、見てみたいと思いませんか。」と平櫻が、目を輝かせて言う。


 羅針は平櫻の言葉を聞いて、彼女の願いを叶えてやりたいとは思った。だが、駅夫が言ったとおり、極寒の秋田に来るのが辛いということもある。しかし、それ以上に、羅針にとっては人混みが苦手だという問題があるのだ。

 極寒を理由にしたら駅夫は躊躇してくれたので、好都合だったのだが、平櫻にはその手は効かなそうで、彼女は何を差し置いても来るだろう。それなら、別に彼女に同行する義理も義務もないのだから、彼女に一人で来ればと言ってしまえばそれで良いのだが、なぜか羅針の心にはそれを躊躇う気持があった。


「平櫻さんが来たいって言うなら、俺たちも来ようぜ。やっぱりこの目で見たいじゃん。出来ることなら実際に綱を引いてみたいし。あんな、子供だましみたいな〔絵の大綱〕じゃない、本物をさ。」

 駅夫が、完全に平櫻寄りに傾いてしまっていた。

 こうなっては、もうどうしようもない。羅針は外堀が完全に埋められた気持になった。

「分かったよ。じゃ、三人で再訪することにするか。平櫻さん、それで良いですか。」

 羅針は、渋々同意した。

「はい。私一人で来ても良かったのに、なんか無理強いしたみたいで、すみません。」

 そう言って平櫻は頭を下げる。

「良いんですよ。駅夫も来たがってるみたいだし、自分だけ渋る理由はありませんから。当日は三人で楽しみましょう。」

 羅針は、本心を隠して、引きつった笑顔でそう言った。


「この次はどこへ行くんだ。」

 駅夫が聞く。

「次は浮嶋うきしま神社だな。大綱引きが終わった後に、大綱を奉納する神社だそうだ。」

 羅針が答える。

「へぇ。じゃ、参拝しておかないとな。」

 駅夫が納得したように、羅針の後を付いてくる。平櫻はその後ろから動画を撮影しながら付いてきていた。


 大綱交流館の駐車場を出ると視線の先にはこんもりと盛り上がった森林が見えた。まるで陸に浮かぶ島のようで、浮嶋とはよく言ったものである。

 近づくと、周囲はコンクリートの土留めがされ、〔浮嶋神社〕と彫られた石碑が石造の鳥居の前に、狛犬と共に鎮座していた。

 その閑静な森林に登っていく石段を上がると、一気に空気が変わった。涼しくなったのはもちろんのこと、神聖な空気に包まれたような、澄んだ空気を感じた。


 三人は脱帽一礼して鳥居を潜り、階段を上がって、境内を拝殿まで進む。

 正面に鎮座する拝殿は、千鳥破風付きの入母屋造りで、赤い屋根が目を引く。

 三人は、拝殿前で二礼二拍手一礼の参拝をおこなった。平櫻は旅の安全を願い、駅夫と羅針の二人は、いつもどおり旅の無事と、美味い飯を願った。


 浮嶋神社の御祭神は、大名持神おおなもちのかみ少彦名神すくなひこなのかみ天照大御神あまてらすおおみかみ事代主神ことしろぬしのかみ大山祇神おおやまつみのかみ加具土神かぐつちのかみ菅原神すがわらのかみ天之御中主神あめのみなかぬしのかみで、八柱の神が祀られている。


 口伝に依れば、養老年間(717年~724年)に、土買川つちかいがわのほとりにある小丘に創建されたといわれ、洪水時には丘が浮き上がり、減水すると元に戻ることから、浮嶋神社と名が付けられたと伝わる。

 この浮嶋神社の使い神である竜神は、気性が荒く、度々洪水を起こすため、それを鎮めために人身御供をおこなっていたが、天正10年(1582年)に、大綱引きを替わりにおこなうこととし、現在も神事として継承されている。


「なあ、羅針、1582年って室町時代じゃなくて、安土桃山時代だよな。それに、大綱引きを始めたのは、長山氏の氏神を祀るためとか言ってなかったっけ。」

 駅夫が、羅針の説明を聞いて、疑問に思って尋ねた。

「ああ、そう言ったね。多分諸説あるということだろうな。それに、安土桃山時代って言っても、実際30年程の短期間だし、政治の中心であった京都や滋賀は距離があるんだし、室町時代って言っても大差ない感覚なんじゃないかな。」

 羅針が、そう推測する。

「そうか。確かに厳密に言えば室町時代と安土桃山時代は違うけど、庶民にはそんな違い関係ないもんな。」

 駅夫も何となく納得する。

「もしかして、民間でやられていた大綱引きが、天正10年に神事となったってことはないですかね。それなら、大綱引きの発祥は氏神様を祀るためで、浮嶋の神事となったのは洪水を鎮めるためって、整合性がとれる気がするのですが。」

 二人の話を聞いていて思いついた平櫻が、推測を述べた。

「それは、考えられますね。それなら、それぞれの由来が別々に伝承されて、諸説あるみたいになってしまった可能性は大いにありますね。」

 羅針も、平櫻の案に乗った。

「真実は神のみぞ知るってか。いずれにしたって、人々の願いが込められた祭であることに代わりはないってことだろ。」

 駅夫が、強引に纏める。

「そういうことだな。俺たちがとやかくここで議論を捏ね回していても、結論は出ないからな。」

 羅針はそう言って同意し、平櫻も頷いていた。


 拝殿で参拝を住ませた三人は、拝殿の裏手に回り、弊殿と本殿も拝見する。神明造の本殿は町の鎮守としては立派な造りで、信仰の厚さが窺い知れる。

 閑静な森林の中で、心を洗われるような思いをした三人は、境内の散策を終えて、浮島神社を後にした。一の鳥居を潜り、振り返って脱帽一礼をした三人は、改めて木々に囲まれた浮嶋神社を眺め、奈良時代から残るこの神社に畏敬の念を抱いた。


 三人は、一礼をすると、次の場所へと歩き始めた。

「次は、どこに行くんだ。」

 駅夫が聞く。

「次は、大綱引きの会場となっている通りに行くよ。」

 羅針はそう答えた。

 平櫻は、その後ろから、二人の遣り取りを微笑ましそうに見ながら付いていった。



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