拾壱之漆
旅寝駅夫と星路羅針の二人は、秋田新幹線と奥羽本線を乗り継いで、漸く今回の目的地である刈和野駅に到着し、駅名標と記念撮影をしたり、周囲の景色を撮影したり、今は使われていない、なぜか存在する短い3番線ホームを撮影したりして、刈和野駅構内を堪能した。
撮影を堪能した二人が跨線橋に上がって来て、まず目に入ったのは大綱引きの広告である。
「刈和野は大綱引きが有名なのか。さっき線路の向こうに飾られてたのはこの綱か。」
駅夫が広告を見て、羅針に尋ねる。
「みたいだな。室町時代からずっとおこなわれている祭事で、上町と下町に別れて綱引きをして、その年が豊作か米価高騰かの〔お告げ〕を占うらしいよ。引っ張る綱は日本最大級で、直径約80㎝、長さ約100m、重さは約20tあるそうだ。」
羅針は予め調べておいた知識を披露する。
「20t?マジで?人が引く重さじゃないだろ。」
駅夫が目を丸くして驚いている。
「ほら、ここにある蜷局を巻いてる綱が2本あるだろ、これが1本あたり10tあって、これを繋いで綱引きをやるらしいんだ。だから20tの綱引きという訳だ。」
広告に描かれていた大縄の写真を指して羅針が説明する。
「マジかよ。そりゃすげぇな。なんで、そんなすげぇ祭が全国的に知られてないんだよ。」
駅夫は驚きつつも率直な疑問を浮かべる。
「何でだろうな。やっぱり極寒の時期にやるから、なかなか他所の人が来ないって言うのもあるのかもな。」
羅針はそう推測してみるが、その表情に確信の色はない。
「いつやるんだ、……って、ここに書いてあるか、〔毎年2月10日〕か。確かに滅茶苦茶極寒の時期じゃねぇか。」
「ああ。秋田の2月なんていったら、おそらく降雪も積雪もピークの時期だろうから、祭をするなんて大変だと思うけど、神事だし、伝統だから致し方ないのかもな。」
「なるほどね。でも2月かぁ、来てみたいけど、流石に極寒の秋田は厳しいな。」
二人ともこの祭に興味を持つが、流石に極寒の二月に秋田まで来る勇気は湧いてこなかった。
その大綱引きの広告の反対の壁には、刈和野鉄道唱歌が掲げられていた。〔汽笛一声新橋を〕で始まる鉄道唱歌の替え歌だろう、出だしは〔汽笛一声刈和野を〕とあり、10番までの歌詞が書かれていた。内容は刈和野駅から出発して、沿線を歌い上げ、秋田までの道程が歌詞になっていた。
二人はその出来映えに感心して、後で歌詞が読めるよう写真に収めた。
雪国仕様なのか、なぜかステンレス製の扉がある跨線橋の入り口を抜け、雑居ビルのようなPタイル張りの階段を降りると、街病院の受付兼待合室のようなロビーがあり、簡易委託で嘱託された職員が一人窓口の中で作業をしていた。
窓口は、木製の縁取りが施され、柔らかな茶色の色合いが、どこか温かみを感じさせる。窓口を仕切るガラス窓には時刻表やポスターが貼られていた。
あちこち写真を撮りながら降りてきた二人は、このロビーの様な待合室を抜けて、駅舎から外に出た。振り返って駅舎を見ると、そこには、どこかの公民館のような佇まいの駅舎が鎮座していた。和洋折衷の様なこの建物は、中央に出っ張った窓ガラスが〔円形ベイウィンドウ〕あるいは〔バウウィンドウ〕と呼ばれるような様式で、この窓ガラスが公民館感を色濃く醸し出している気がした。
良く見ると、右側には大仙市商工会議所の入り口があり、建物の上には〔地元消費で街に灯を〕とある。その標語も手伝って、益々ローカル駅という印象は薄くなった。
二人ともこの駅舎らしくない駅舎の前で記念撮影をしたり、駅舎自体を撮影したりした。
駅舎の並びには、先程ホームから見た大綱を展示してある細長い平屋の建物があった。建物の側面には〔国指定重要無形民俗文化財 刈和野の大綱引き〕とある。この施設の見学にはどうやら事前予約が必要なようであったが、窓の外から覗き込むだけでも、充分その大綱の迫力を実感することは出来た。
「すげぇな。このでっかいのを引き合うのか。こんなの見たら運動会の綱引きなんて保育園の綱引き並に見えるだろうな。」
駅夫が窓に顔を押し付けるように中を覗き込みながら、感心したように言う。
「確かにな。こんなものどうやって引くんだろうな。持ち手とか付けるのかな。……って、駅夫、これ見てみろ、これは凄いぞ。」
羅針が、よほど気になったのか、大綱引きの動画をネットで検索して、再生した。
動画は、降りしきる大雪の中、足元にはかなりの積雪がある状態で、大綱から引き綱を出して、それを頭に大量の雪を被った人々が大人数で、なんと言っているか分からないが、掛け声を掛けながら引いていた。字幕の説明には40分位引いているとあった。
「これマジかよ。大雪の中、一体何人で引いてるんだよ。」
羅針のスマホを覗き込んだ駅夫が目を丸くして驚いている。
「おそらく町総出だろうな。パッと見た感じ千人は下らないだろうな。町内の綱引き祭の規模じゃねぇよ、これ。」
羅針も動画を見ながら推測し、驚きを隠せないでいる。
「引き綱が一箇所から両側に2本出てて、1本あたり20人ぐらいで引いてるのか。およそ100mの大綱に1m間隔で引き綱が出てるとして、ざっと計算すると四千人の人数で引いてることになる。って、マジか。」
こういうのを計算するのが好きな駅夫が、自分で計算した結果があまりの大人数を導き出したことに驚き、何度も計算し直している。
「凄いな。確かにその人数なら町総出になるだろうな。」
「羅針、確かに町総出だよ。ほら、2015年の統計資料だけど刈和野地区の総人口が3622人だから。」
駅夫が自分のスマホで検索してみた町の人口に驚いて、羅針にも見せた。
「ホントだ。まさに町総出かよ。マジですげぇ祭じゃん。」
羅針はその数字を見て驚いた。
羅針のスマホには、大雪が降りしきる中で、頭を雪で真っ白にして、掛け声を掛けながら、人々が綱を引く姿が流れていたが、その様子は、小さなスマホの画面を通してもまさに圧感だった。
やがて勝敗がつき、撮影していた側が勝利したようで、画面の中の人々は諸手を挙げて喜び、万歳する人、抱き合う人、ハイタッチする人、そして中には男泣きして大綱に顔を埋め、頽れる男性の姿もあった。
「そりゃ、泣きたくもなるよな。これだけの大綱を皆して力を合わせて、大雪の中を引っ張って勝利したんだから、その嬉しさたるや格別だろう。」
羅針が、動画を見終わって貰い泣きしたのか、目元を潤ませながら言う。
「確かに、感動は一入だろうな。負けた側もこれは悔しくて泣いてるぞきっと。」
この動画には映っていなかったが、こちらが勝ったということは、当然反対側が負けたということになるのだ。駅夫はそのことに思い至り、自分の中に巻き起こる悲喜交々《ひきこもごも》の感動に心が揺れ動き、そのドラマチックな筋書きのない勝負に対し、何かを納得するように何度も、何度も頷いていた。
「そうだよな。勝った方もすげぇけど、負けた方もすげぇよな。」
駅夫の言葉に羅針もそう言って頷いた。
二人とも、この素晴らしい感動をくれた大綱引きに参加した人々に対し、賛辞の拍手を心の中で送った。
「そろそろ、駅に戻ろうか。」
感動も覚めやらなかったが、スマホの時計を見て羅針が駅夫に声を掛ける。
「えっ、このまま宿に行くんじゃねぇのか。まだどっか行くのか。」
駅夫が怪訝な顔をして聞く。
「ん?ああ、宿に行くよ。このまま行きたいなら歩いて行っても良いけど、10㎞はあるから2時間以上は歩くことになるぞ。俺は、隣の峰吉川駅から宿の車に送迎して貰うけど。」
羅針がそう言って駅夫をからかう。
「何だよ、送迎車が来てくれるのかよ。それならそうと早く言えよ。俺も乗るからな。」
駅夫はそう言って羅針の背中を押して、駅舎の方に向かう。
「分かった、分かった。そんなに押すなって。」
そう言って羅針は笑う。
時刻は、次の列車が来る15時34分に迫っていた。
二人は、レトロな雰囲気のある窓口で切符を購入し、雑居ビルの様な階段を上がって、扉がある跨線橋を通り、再びホームに降りてきた。
時間になり、2両編成の701系が入線して来ると、二人は乗り込んだ。
列車が静かに走り始めると、車窓はすぐに住宅街から田園風景に変わり、青々とした稲穂が揺れる田圃が目の前に広がった。そして遠くに目をやると、緑に映える山々が横たわっていた。
列車は三線軌条と標準軌の併走が続く線路をひたすら走り、鉄の車輪が刻む線路のリズムに合わせ、風景がゆったりと流れていく。
やがて峰吉川駅に到着しようとしていたその時、三線軌条だった線路から標準軌だけが渡り線でもう一方の標準軌に吸収され、狭軌と標準軌が完全に分離した。
そして、列車は右へ大きく曲がるカーブでゆっくりと減速し、峰吉川駅に停車した。線路の傾斜に合わせて傾いた車体から降り立つと、そこにはひっそりとしたローカル駅の風景が広がっていた。小さな待合室と屋根付きの苔むしたホーム、背後には静かな森林が迫り、しんとした空気が漂っていた。
ここでも二人は駅名標と記念撮影をし、周囲の風景を写真に収めた。
タイミングが合えば、秋田新幹線のこまちが通過する絶好の撮影スポットとなりそうな良いカーブだったが、どうやらこまちが来る様子はなかった。
二人は跨線橋を渡って駅舎へ向かう。少し不便だが、この跨線橋もまた旅の風情を感じ、ここから見下ろす駅構内を写真に収めた。
駅舎に降りると、簡易委託の職員が秋田弁訛りで「よぐきたなぁ」と迎えてくれた。小さな窓口のある待合室は昔の面影を残し、当時の賑わいが少し感じられた。
壁には〔峰吉川駅賛歌〕と書かれた扁額が飾られており、駅周辺の美しい景色を詠んだ短歌が並んでいる。訪れる人々に、この地の歴史と風土を伝えているように二人は感じた。
レトロな感じの駅舎を出ると、宿の送迎車が待っており、運転手がにこやかに「秋田さよぐきたなぁ。」と秋田弁で挨拶をしてくれた。二人は少し時間を貰い、駅舎前での記念撮影を急いで済ませた。
張り出し部屋を持つ切妻屋根の建物は、良く見る形の典型的なローカル線の駅舎だが、薄曇りの空に、青い屋根とレトロな看板が映え、シャッター音が旅の思い出として刻まれた。
運転手さんが気を利かせて、「写真ば撮るなら、お手伝いしべか?おらが撮るんで、二人で並んでけれ。」と言って、二人一緒の写真も撮ってくれた。
まだまだあちこち色々撮りたいと名残惜しさを胸に抱きつつも、これ以上待たせるのも悪いと思い、二人は運転手にお礼を言って送迎車に乗り込み、漸く宿へと向かった。
道中、分かりやすいようにと、一生懸命標準語を話そうとしているのだろうが、隠しきれない秋田弁訛りのあるイントネーションの運転手と、楽しく世間話をしながら、雄物川沿いの道を走り、およそ10分程で宿に到着した。
築100年以上経つ、豪農の住居を改装したというその建物は、社寺建築を思わせる千鳥破風と入母屋造りの建物に、玄関は唐破風が用いられた赤い屋根が印象的な日本家屋が出迎えてくれた。
二人は、思わずこの建物を前に記念撮影をしたり、建物自体を撮影したりした。
運転手が車を車庫に入れて戻ってくると、「建物の前で撮影だが?うぢの自慢なんだべ。オラが撮りっぺか?……お二人一緒さ……はいチーズ!」そう言って、ここでも建物をバックに二人一緒の写真を撮ってくれた。
撮影が終わると、運転手が開けてくれた昔ながらの重そうな引き戸を潜り、中に一歩足を踏み入れる。そこにはよく手入れされた木造住宅の細長い玄関土間が広がっていた。
靴を脱いで上がり框を上がると、一枚板の大きなテーブルが置かれたロビーの奥には、お土産物のコーナーがあり、先に着いていた平櫻佳音の姿がそこにあった。
「こんにちは。」
二人に気付いた平櫻が挨拶をしてきた。
「こんにちは。もう着いていたんですね。」
羅針も頭を下げて挨拶をする。
「こんにちは。早いね。」
駅夫は片手を挙げて、挨拶をした。
「先程着いたばかりです。私の方が先だったんですね。」
平櫻が二人の方に歩み寄って来た。
「お三方はお知り合いだズんだが。」
そこへ宿帳を持った先程の運転手がやってきた。どうやらこの人は運転手ではなく若旦那だったようだ。
「こちらで、お名前とご住所の記帳ばたのむすぅ。」
二人は促されるままにテーブルに着いた。平櫻もつられて一緒に席に着いた。
「はい、そうなんです。旅行中に知り合いまして、こちらで一緒に旅をすることになったんです。」
羅針が席に着きながら、簡単に三人の関係を説明する。
「んだすかぁ。旅の仲間が増えるっでぇ、おもしぇだべなァ。……あっ、わりがたス、こごに記帳どごたのむすぅ。」
若旦那は、慌てて宿帳を差し出し、二人に記帳を促し、投宿手続きをしてくれた。
「んだば、お食事のお席はご一緒になさるスか。」
若旦那が気を利かせて提案してくれた。
「平櫻さんどうしますか。」
羅針が平櫻に確認する。
「是非、お願いします。」
折角同行するのに、一人別の場所で食事するのは余りに寂しいとばかりに、平櫻は即答する。
「お手数をおかけしますが、それでお願いします。」
羅針も口添えをする。
「んだば、そっちゃとおりにさせて貰うス。」
若旦那は記帳が終わった宿帳を片付け、二人に部屋の場所を案内するため立ち上がった。
「へば、部屋はこぢの方になります。」
二人は平櫻に「後程」と言って、若旦那の後についていった。部屋までの途中、宿を使用するにあたっての注意事項や心得などを教えてくれた。
建物は登録有形文化財であるため、調度品はもちろんのこと、壁や柱、延いては床で物を引き摺って傷を付けないよう注意して欲しいことを言われた。更に古い日本家屋をほぼそのまま使用しているため、防音処置がされていないため、大声での会話や、音を出すなどの迷惑行為は控えて欲しい旨も言い渡された。
「鼾や寝言はお互い様なんで、そこは笑って許してやってけれ。」
若旦那は冗談交じりにそんなことを言い、二人は笑った。
部屋は6畳一間で、テレビや冷蔵庫はなく、落ち着いた雰囲気の和室だった。トイレや浴室は共同であるため、その場所も若旦那は教えてくれた。それと宿泊者限定の露天風呂があるそうだが、それは貸し切りになるため、その予約時間も決めた。
すべての説明が終わると、「んだば、どうぞごゆっくりお過ごしけれ。なんがあったやスら受付までお声がけけれ」と言って、若旦那は「へばな。」と退室していった。二人はお礼を述べた。
二人は、部屋を一通り探索した後、ロビーへと向かった。
ロビーにはまだ平櫻が居て、例の自分の動画チャンネル用なのか、お土産物を片手に何かを話しながら動画撮影をしていたが、二人の姿を認めると、撮影を取り止め二人に声を掛けてきた。
「お部屋いかがでしたか。」
「素敵なお部屋でした。」
羅針が応える。
「調度品も最高だったよ。」
駅夫も応える。
「ここのお宿ホント素敵ですよね。前から一度泊まってみたかったんですよ。日本文化遺産を守る会とか、日本秘湯を守る会とかの会員で、日本のホテル・旅館100選にも選ばれてるんですよ。でも、なかなか来る機会がなくて、漸く念願叶ったって感じです。」
平櫻が嬉しそうに語る。
「へぇ、そんな有名な宿だったんだ。お前知ってた?って、知ってて予約したんだよな。」
駅夫が平櫻の言葉に感心しながら聞いていたが、羅針がニコニコしながら聞いているのを見て、知らなかったのは自分だけかと悟った。
「もちろん知ってたよ。殆ど空きがなかったけど、たまたま連泊取れたから、ラッキーだったね。」
羅針は駅夫にそう言って、平櫻に「ですよね。」と同意を促す。
「はい。本当に幸運でした。」
平櫻も頷く。
「平櫻さん。タブレットの件ですが、お陰で新しいのを購入出来ましたので、ご報告しておきます。保険会社の方とも話がつきましたので、あとは振り込みを待つだけです。ですから、ご安心下さい。」
羅針が少し躊躇いながらも、平櫻に報告した。
「そうなんですね。それは良かったです。本当にご迷惑とお手数をおかけしました。本当なら私が全部手配しなければいけないのに、何から何までして頂いて、本当にありがとうございました。」
平櫻がそう言って深々と頭を下げる。
「平櫻さん、良いんだよ、そんなこと気にしなくても。こいつ、保険会社の人の裏を掻いて、煙に巻いて、コロッと騙して、めっちや最新の良いヤツを手に入れて嬉しそうにしてたんだから。」
駅夫が脇から口を挟み、羅針の感情をバラす。
「人聞きの悪いこと言うなよ。まぁ、確かに嬉しかったけど、そんな悪の権化みたいに言わなくても良いじゃねぇかよ。ちゃんと先方にも許可取って購入したんだから。何も悪いことはしていないぞ。それに修理するより安かったんだから。」
羅針が、バツが悪そうで、照れ臭そうにしながら、ブツブツと駅夫に文句を言う。
「そんなこと、全然気にしないで下さい。星路さんが満足して頂けたら、それで良いんですから。悪いのは全部私なんですし。保険会社の人も納得したんですよね。」
そう言って平櫻がフォローする。
「平櫻さんは優しいなぁ。」
駅夫が、企みどおりいかなかったことに、少し残念そうに言う。
「お前の悪巧みは成就しないんだよ。」
羅針はそう言って、駅夫を詰った。
「くそっ、今度こそ陥れるチャンスだったのに。」
そう言って悔しがる駅夫の顔は笑っていた。
平櫻は二人の様子を見て、茶番だと漸く理解し、二人の三文芝居で、申し訳なかった気持ちが少し和らいだ気がした。
「宿の中を見て廻りませんか。」
平櫻が茶番を終えた二人に提案する。
「おっ、良いね。歴史ある建物なんだろ。見学しようぜ。」
駅夫が、平櫻の提案に乗る。
「ああ、良いですね。」
羅針もそう言って同意した。
三人は、連れだって旅館の中を見学しようと歩き出した。