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日本全国鐵輪巡礼 ~駅夫と羅針の珍道中~  作者: 劉白雨
第拾話 諫早駅 (長崎県)
78/180

拾之捌


 諫早神社で参拝し、散策を済ませた旅寝駅夫と星路羅針の二人は、社務所で御朱印を拝受した。余りに沢山あったので迷ったが、結局頂けるだけ頂いた。


 諫早神社を後にし、目の前に流れる本明川に向かう。川に降りる階段の手前に〔多良海道たらかいどう(旧諫早街道)〕の説明板が掲示されていた。

 説明書きによると、江戸時代に佐賀藩主が長崎警備のために往来していた街道で、有明海沿岸を通る、約48㎞のルートを指すらしい。

 目の前にある本明川を渡る飛び石があるが、これも多良海道に該当するらしい。

 二人は、川原に降り、足元に注意しながら、飛び石を渡った。途中川面ギリギリにカメラを降ろして撮影したり、二人で記念撮影したりして、渡河を楽しんだ。


「川沿いを行くより、この多良海道っていうのを歩こうぜ。」

 羅針がスマホで撮影した、先程の説明板の地図を表示しながら、提案する。

「良いよ。その地図どおり歩きたいんだろ。」

 駅夫が、羅針らしいと思いながら頷く。

「そう。旧道を歩くって楽しいだろ。」

 羅針が嬉しそうに応える。


 二人は川沿いの通りを避け、路地に入って多良海道を辿り、次の目的地である諫早公園を目指し、曲がりくねった道を地図に従って歩いていく。

 特に目立った旧家や史跡があるわけではないが、二人はその静けさと風情を楽しんだ。かつてこの道を武士たちが警備のために往来していたと思うと、何か感慨深いものがある。


 静かな住宅街をひたすら進んでいくと、〔旧諫早街道 蓮光寺れんこうじ下〕の石碑が目に入った。

 始めて目にとまった案内標識である。二人は思わず写真に収めた。

 そばの長い石段の上には、蓮光寺の本堂が少しだけ見えているが、二人はその場で手を合わせて遥拝し、先へとあゆみを進めた。


 更に進むと、左手に立派な石垣が現れ、その下に〔慶巌寺けいがんじ駐車場〕の標識があり、上にあるのはお寺であることが分かる。

「このお寺、箏曲〔六段の調べ〕の発祥地でもあもらしいよ。」

 羅針がいつものように、この慶巌寺のことをスマホで検索していた。

「へぇ、って、何それ。」

 駅夫がピンときていないようで、首を傾げている。

「有名な曲だよ。学校で習っただろ、お琴の曲だよ。」

 そう言って、羅針が六段の調べを動画で再生する。

「聞いたことあるようなないような。」

 やはり、駅夫はピンときていないようだ。

「お前、音楽の時間寝てただろ。結構、BGMとかでも使われてたりするんだぞ。」

「そうなのか。全然覚えてないな。」

 そう言って駅夫はお手上げのポーズをした


 目の前に聳え建つ、まるで要塞のような佇まいの慶巌寺の迫力に圧倒されながらも、二人はまたしても遥拝で済ませた。


 多良海道を辿る旅はここまでで、あっという間に終わってしまった。

 すでに目的地の諫早公園は通り過ぎてしまったので、少し戻るようにして本明川沿いを歩き、公園橋のところで川を渡る。

 橋の向こうには、陽光に照らされて緑の葉がキラキラと輝く豊かな森林が広がっていた。木々の間からは心地よい風が吹き抜けてきて、橋の名前が示す通り、ここが公園であることが一目で分かった。


 橋を渡りきったT字路を左に曲がると、〔重要文化財 眼鏡橋〕と彫られた巨大な石碑が建っていて、そこには有名な眼鏡橋が堂々と鎮座していた。

 アーチを描くその丸みを帯びた穴が連なる石橋は、池の水面に反射し、まるで向こうから誰かが覗き込んでいるかのような、文字通り眼鏡の形をしていた。石の表面は風雨に晒され、苔生し、傷みは見えるものの、時を経てきた重みという風格を湛えたその佇まいは、まさに威風堂々としていた。


 二人は、少し離れた位置からこの橋を眺めていた。

「美しいな。」

 駅夫は、思わず息を呑み、その壮麗な姿に心を奪われたかのように、しばらく言葉を失った後、静かに感嘆の声を漏らした。

「確かにな。長崎で見た眼鏡橋よりも大きくて立派だな。流石日本一の長さを誇っているだけあるよ。」

 駅夫につられ、羅針もその美しさに感心したように言う。

 説明書きには長さ50m、高さ6m、幅5.5mで、現存する江戸時代に造られた石橋としては日本一の長さだとあった。また、本明川に架かっていた時は、中央の基礎石の下に有明海の潟が入っていて、地震の揺れを吸収したとされ、免震構造まで備えた当時の技術の高さが窺えるという。


 ところが、昭和32年の大水害の際は、この強固さが裏目に出てしまった。流木などが大量にこの橋で堰き止められたことで、川の流れを変えてしまい、被害を拡大させてしまったのだ。

 このことを受け、川の拡幅工事をすると共に、この橋を爆破解体する計画が持ち上がった。しかし、住民たちから反対の声が上がり、当時の市長を始め、多くの人が尽力したお陰で、この場所に移設したのだという


「丈夫な橋も考えもんなんだな。」

 羅針が読み上げた説明書きの話を聞いて、駅夫は呟いた。

「ああ。橋が流されたら後の生活が困るし、丈夫だと水害の被害が広がる。さっきも思ったけど、自然と共存するって大変なことなんだよな。」

 羅針は、改めてこの諫早の地に暮らしてきた人々の苦労に思いを馳せた。

 二人は遠くから全景を撮り、近づいて細部を撮り、橋の上からも写真を撮り、もちろん記念撮影もした。


 この眼鏡橋がある諫早公園は、元々室町時代の15世紀後半である文明ぶんめい年間(1469年~1487年)に、西郷尚善さいごうひさよしによって築城された諫早城である。高城たかしろ亀城かめしろなどとも呼ばれていたこの城は、江戸時代の一国一城令を以て廃城となったが、現在その城跡を諫早市が公園に整備した。


 眼鏡橋を渡ると、緑豊かな公園のどこからか、特徴あるツグミの鳴き声が聞こえてきた。

 二人は、正面にある階段を、何かに導かれるように上へと登り始めた。

 この元諫早城は山城であり、現在は石段が整備されているため、脚は然程辛くないが、二人はすぐに息が上がってしまった。二人は互いに運動不足をからかった。


 途中、東の丸の説明書きがある、少し広くなった場所に、立派な銅像が立っていた。この人物は木下吉之丞きのしたきちのじょう氏で、島原鉄道の初代専務取り締まりである。その後衆議院議員に当選し、県立農事試験場、長崎刑務所、長崎製糸場、県立旧制中学校、県立農学校などを誘致したらしい。

「当時の衆議院議員は、公園にこうやって銅像が立つんだな。」

 駅夫が感心したように言う。

「だな。今や衆議院議員に限らず政治家なんて、ネットでボロクソ書かれて、ケチョンケチョンなのに、雲泥の差だな。」

 羅針はそう言って笑う。

「お前みたいなヤツが、ネットでボロクソ書き込むんだよな。」

 駅夫が肩を竦めながら微笑む。

「俺は書かねぇよ。口ではボロクソ言うけど。」

「ボロクソ言ってりゃ、口だけだって同じことだよ。言いたくなる気持ちは分かるけど。」

 駅夫がそう言うと、二人して笑った。


 更に階段を登ると、途中に伊東静雄いとうしずお氏の詩碑があった。

 伊東静雄とは、1906年に諫早市で生まれた、浪漫派の詩人である。詩集〔わがひとに与ふる哀歌〕や〔夏花なつばな〕などを上梓し、1953年逝去した。

 石碑には〔そんなに凝視みつめるな〕の一節が刻まれている。友への言葉が綴られたこの詩は、伊東静雄の詩観を良く表す名作と言われている。


「なあ、これって詩の一節なんだろ。」

 駅夫が羅針に尋ねる。

「ああ。〔そんなに凝視めるな〕の一節だな。ほらこれ。」

 羅針がさっと検索し、スマホで全文を駅夫に見せる。


「なんか、古い言葉で難しいけど、要は固執こしゅうするなってことだろ。自然をありのまま受け入れて、感じるままに生きることこそ真理だって言ってるように見えるけど。」

 駅夫は、思ったままを口にした。

「確かにそういう側面はあるだろうな。でも、俺は、ちょっと違うかな。固執するなっていうのは理解出来る。でも、自然は一見バランス良く存在しているけど、自然を享受することは痛みを伴うことでもあるから、自然の表面だけを見つめるのではなくて、本質を見抜けって警告しているようにも感じるんだよな。」

 羅針は、そう言って考えるような表情をした。

「なるほどね。そこまで深く考えるのは、流石羅針だな。でも、なんで、この一節を石碑にしたんだろうな。」

 駅夫が羅針に感心しつつも、単純に疑問を抱く。

「この一節は、人生の中で出会う一瞬の美しさを受け入れ、その価値を見出せってことを言ってるような気がするんだよな。だから、さっき言ったように、只ひたすら見てるだけじゃなくて、しっかり本質を見極めなきゃいけないんだって話に繋がるんだと、俺は思うんだよ。」

 羅針が、持論を展開する。

「なるほどね。この一節にこの詩のメッセージが込められてるってことか。」

「多分ね。俺が言ってることが的を射てるかどうかは分からないけど、俺はそう思うな。」

「お前がいつも言ってるじゃん、合ってる間違ってるなんて関係ないって。その人の解釈が正解なんだって。」

 駅夫が、羅針のいつもの口癖を引き合いに出す。

「まあな。でも、伊東静雄本人はどんなつもりでこれを書いたんだろうなって、それは知りたいところだな。」

「確かにな。合ってる合ってないは関係ないけど、答え合わせはしたくなるよな。」

「だな。」

 二人はそう言って微笑んだ。


 更に、階段を登り、一番上まで来ると、そこには鳥居があった。

 なぜここに鳥居があるのか不思議だったが、おそらく神域として神様を祀っていた名残なのだろう。

 鳥居を潜ると、まず目に入るのは、立派なクスノキである。根元近くから大きく何本も枝分かれした太い幹が、天に向かって伸びている様は、まさに圧感である。説明書きによると、樹高は約30m、幹回りが約12mあり、樹齢は600年から800年といわれ、このクスノキを含め、諫早公園であるこの丘陵地帯の植生全体が、国の天然記念物に指定されている。


 その奥には高矢倉たかやぐらの跡地があり、見張り台の役割を果たしていたそうだ。今は藤棚とその下にベンチが並べられ、展望台の役割を果たしていた。

 二人は、手摺りの所まで進み、眺望を楽しんだ。

 眼下には諫早の市街地が広がり、その奥には勇壮な雲仙岳や、陽光に煌めく有明海を望むことが出来た。

 この美しい景色が、何度も水害に見舞われ、雲仙の噴火にも襲われてきたのかと思うと、少しやりきれない気もするが、その脅威と紙一重で存在するこの美しい景色を、暫く二人は言葉もなく眺めていた。


 ふと、人の気配がしたので、後ろを振り返ると、そこには一人の女性が、鷹の前の雀のように、身動みじろぎせず立ち尽くしていた。

「平櫻さんですよね。こんにちは。」

 駅夫がいち早く口火を切った。

「こ、こんにちは。」

 平櫻佳音ひらざくらかのんは、漸く我に返り返事をした。

「こんにちは。」

 羅針も穏やかに挨拶をする。

「昨日は、本当に済みませんでした。」

 再び、平櫻は深々と頭を下げた。

「良いんですよ。もう、保険会社の人と話が進んでいますから。気になさらないでください。ところで、こちらへは散歩ですか?」

 羅針は、彼女に嫌な思いをさせるとかわいそうだと思い、努めて穏やかに話題を変えた。

「はい。自宅が近所なので、時々ここに来ては、有明海や雲仙を見に来るんです。」

 平櫻の、驚愕し、恐怖していた表情に、少し照れたような表情が加わった。

「そうなんですね。ここは美しい景色ですよね。」

「はい。とても大好きな景色なんです。この景色を見ると、本当に癒やされるんです。」

 平櫻は照れくさそうにする反面、地元の自慢であるこの景色を誇らしげに見ていた。

「こんな景色をいつでも見られるなんて、羨ましいよな。」

 駅夫が口を挟む。

「確かにな。」

 羅針も頷く。


「お二人は、ご旅行なんですか。」

 平櫻が、少し緊張しながらも興味深そうに尋ねた。彼女は足を少しだけ前に踏み出し、二人との距離を無意識に詰めた。

「はい。行き当たりばったりの旅行をしているんですよ。」

 羅針は穏やかな笑顔を見せながら答えた。

「そう、ルーレット旅って題して、ルーレットを回して出た駅を目指して旅行するってのをやってるんだよ。」

 駅夫は自慢げに、スマホの画面にいつも使っているルーレットを表示し、平櫻に見せた。

「ルーレット旅ですか。楽しそうですね。」

 平櫻はその言葉に目を輝かせ、興味を示し、軽く前屈みになって駅夫のスマホを覗き込んだ。

「そう、めっちゃ楽しいんだよ。行き当たりばったりだから、ミステリーツアーみたいでね。」

 駅夫がニコニコしながら、スマホで平櫻にルーレットを回して見せていた。

「ミステリーツアーになってるのはお前だけだろ。こっちは綿密な計画を立ててるんだから。」

 羅針は少し眉をしかめ、駅夫を横目で見て詰るように言った。

「そうだったな。悪い、悪い。」

 駅夫は苦笑いを浮かべながら、子供のように、羅針に向かって片手を顔の前に立てて、謝る仕草をする。

「お二人は、本当に仲が良いんですね。」平櫻はその様子を見て笑顔を浮かべると、少し羨ましそうに言った。「私も実は、旅行を仕事にしてまして、よろしければ、そのルーレット旅について、教えて頂けませんでしょうか。」

 先程までのおどおどしていた様子が消え、二人に対する恐怖心を克服したのか、それとも仕事のスイッチが入ったのか、ルーレット旅について、平櫻は色々と熱心に質問してきた。


 質問の過程で、少し彼女の身の上も知ることが出来た。

 彼女は、旅行系のフリライターで、著書もいくつか出しているようだ。〔鉄カノン〕という名で、動画サイトにもチャンネルを持っていて、鉄道の乗車体験を中心に動画を配信している。その視聴者数は6桁代中半に達しようとしていた。彼女は取材と称して、日本全国を一人で飛び回る日々を送っており、知る人ぞ知る有名人と言ったところのようだ。


「貴重な時間を割いて頂いて、本当にありがとうございます。」

 もう何度見ただろう、平櫻が再び深々と頭を下げた。

「いや、袖すり合うも多生の縁って言いますよね。こちらこそ楽しい時間をありがとうございます。」

 良く頭を下げるこの女性をどこか不憫に思いながら、羅針も優しくお礼を言った。

「そうだよ、男二人のむさい旅に、華が添えられたんだから、むしろ大歓迎だよ。」

 駅夫は、そんなことも気に留めていないのか、おちゃらけて言う。

 駅夫の言葉に、どこか硬い表情だった平櫻の顔に、だいぶ笑顔が広がった。


「もし、良かったら、今度同行取材とかさせて貰えませんか。」

 平櫻は何を思ったか、一緒に旅をしたいと言う。

「それは別に構いませんが、男の二人旅に女性のあなたが、平気なんですか。」

 羅針は、もしいたら自分の娘ぐらいの年齢になるこの女性が、そんなことを言い出す危うさを危惧し、言葉を濁す。

「別に、俺たちを取材してくれるのは一向に構わないし、俺たちを信頼してくれるのはうれしいけど、やはり女の子が同行するって言うのはちょっと頂けないな。」

 駅夫も流石にこれはまずいと感じたか、羅針の援護に回ってはっきりと言った。

「別に、私たちが何か君にしようとかいう訳ではもちろんないし、あなたも純粋に私たちの旅行に興味を持って取材したい、ということなのは良く分かるけど、やはり人の目もあるし、ましてや親御さんがどう思うか考えた方が良いと思うんですよ。

 それでも、もしどうしても取材したい、同行したいというなら、きちんと契約書を交わさなければちょっと無理ですね。お互いの身を守るためにも。」

 羅針も、更に懇々と諭すように言う。

「分かりました。」平櫻は仕方ないという表情で、頷いた。しかし、それでも諦めきれないのか、「では、全行程を同行しなくても良いので、移動とか、観光とかだけでも同行させてください。」と懇願した。


「羅針どうする。」

 駅夫が羅針の表情を窺いながら聞く。

「そこまで言うのなら、一部の同行を許可しましょう。但し、後程契約書を作成しますので、それに同意してください。同意して貰う内容は、同行中断は自由だけど、事前報告すること、同行中は私たちの行動予定が最優先とすること、同行中の費用は自己負担とすること、と言ったところでしょうか。その他の詳細は、あとで詰めましょう。それでも良いですか?」

 羅針が、ビジネスライクに話を進めながらも、彼女の気持ちに配慮した物言いをした。

「はい。それで構いません。許可して頂いてありがとうございます。」

 また、深々と平櫻は頭を下げた。

「駅夫も、それで良いな。」

 羅針が駅夫に確認する。

「ああ。お前がそれで良いなら、俺に否やはないよ。」そう言って駅夫は頷く。そして、「平櫻さん、俺たちはこんな感じのおじさんだ。君を害するつもりもないし、困らせるつもりなんてないから。

 只、きちんとしておきたいだけなんだ。そこは分かって欲しいな。それを分かってくれたなら、後は楽しくやろう。折角の旅仲間になるんだ。旅行は楽しまなきゃ。でしょ。」 そう駅夫は笑顔で平櫻に向かって言った。

「ありがとうございます。」

 お礼を言って、平櫻はまた深々と頭を下げた。


「この後、お二人のご予定は。」

 平櫻が尋ねる。

「この後は、どこか文房具屋によって、夕飯をどこかで食べて、ホテルに戻る予定です。」

 羅針が答える。

「行くお店とかはお決まりですか。」

 平櫻が聞く。

「いや。これから検索して決めようかなと思っています。」

 羅針が答える。

「それなら、私がご案内しますけど、いかがでしょうか。同行の予行演習ということで。」

 平櫻が二人の顔色を伺うように提案する。

「どうする、駅夫。」

 羅針は駅夫の顔を見て聞く。

「俺は構わないけど、平櫻さんは時間大丈夫なの?」

 駅夫は、二つ返事で答えたが、その表情は少し心配そうだ。

「私は全然問題ありません。今日は休息日なので。」

 平櫻はそう言って、にこりと笑う。

「そうですか。平櫻さんがよろしければ、是非お願いします。この諫早公園を見終わってからってことになりますけど。」

 羅針が穏やかな声でそう言う。

「では、この諫早公園もご案内しますね。本丸の方はご覧になりましたか。」

 平櫻はそう言うと、首を横に振ってまだ見ていないと答えた二人を連れて、本丸跡の方へと歩き出した。


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